今や2,000億円の売上を誇るパソナグループですが、わずか数坪のオフィスからのスタートだったことをご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『ビジネス真実践』では著者で人気コンサルタントの中久保浩平さんが、そんなパソナの起業秘話を紹介するとともに、同社をここまでの大企業に育てたある「考え方」を記しています。
就職をあきらめ起業
1976年。当時の男子大学生の就職率は98%。大学に入り卒業さえすれば簡単に仕事に就けた時代。にも関わらず、100社を超える企業訪問をしても内定ゼロ。大学4年生だった彼は、就職活動が全く上手く行かずに焦っていました。
ある日の晩、彼の父親が言いました。
「就職活動はどないや?」
「全然アカン」
「そうかぁ。就職活動がいくらダメでもなんか感じるところはあるやろ?」
この言葉で彼は上手く行かない就職活動そのものに感ずることを思い巡らしました。
確かに男子学生は98%の就職率。だけど、女学生の就職率はわずか14%。自分よりも就職活動に苦労している人、女性が沢山いる。それに就職できたとしてもまだまだ男社会。結婚して子供を作れば、職には戻れない。
就職活動や職場環境、自分よりもっと大変な女性がたくさんいる…。そんな思いから、就職をするのではなく、ボランティアでもして「女性達に安心して働ける環境作りが出来ないものか?」と考えるように…。
そのことを父親に伝えると、
「それはアカン。ボランティアをするんじゃなく会社を自分で興せ。その利益からボランティアをしたらええ」
商売人であった父親は、息子に起業を奨めました。彼は、きっぱり就職活動に見切りをつけ会社を立ち上げることにしたのです。
それから数ヶ月。会社の立ち上げ方も分からず、ただただ過ごす日々。そんな姿を見て父親がまたあることを言いました。
「萩へ行け。萩へ行って、吉田松陰の墓参りに行ってこい」
彼は父親の意図が分からぬまま、その正月、萩は、松陰神社へお参りに行きました。そして、神社内にある松下村塾の家屋にあった掛け軸を見て、父親の真意を知り、はじめて目が覚めたのです。
至誠にして動かざる者いまだにあらざるなり
自分は起業を決意したのにも関わらず、起業の仕方が分からない、お金が無い、と言い訳ばかりをしていた。まだ何も動いていない。動こうともしていない。
彼は、帰阪後、親戚・友人・アルバイト先でお世話になった人など、会社への投資をお願いしてしてもらうために歩き周りました。やがて大阪でわずか8坪という小さな事務所で、人材派遣会社「テンポラリーセンター」を設立。
後のパソナが誕生したのです。
~株式会社パソナ 代表取締役グループ代表兼社長 南部靖之 2012年 2月20日 兵庫県公館 講演会より~
パソナグループは、年間2,000億円を売上げるまでの大企業です。しかし、南部社長は特に大企業にしたい、ということを目差したことはなかったそうです。結果、そうなったんだ、と。
その背景には、やはり父親の言葉、教えがあったようです。
会社が成長していくに連れて、利益しか見えなくなるようになるとダメになる。その為に「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よし、これだけは決して忘れるな、と。
この三方よしを守り続けていたからこそ今のパソナがあり、自分があると仰っていました。これが会社がベストセラーよりロングセラーになる秘訣だと。
起業したいという志を持った人や、会社を大きくしたい、人を増やして売上を伸ばしたい、事業拡大をしたい、などという経営者と時々出くわすことがありますが、結局、空想的な話で終わる人が多いです。
夢やビジョンを描くこと自体は悪くないでしょうが、それをするためにいついつまでにこれをやっておく。その次には、これをいついつまでにやっておく。こうした具体性が無いと何も始まりません。
また、三方よしではなく“売り手よし”だけで終わっている経営者も結構いてそういう経営者は、成長につれてだんだんと視野が狭くなっていることにも気がつきません。つまり、ここでも三方よしはなく、売り手よし、買い手よし、までなのです。
何事も全ての準備を完璧に!ということが重要である必要はありませんが、行動と成長に連れての視野が伴わなければリスクである、ということに気がついていないのです。
自らの行動と成長に伴い視野が拡がっていなければパソナ社長、南部さんのように大成はしません。
■今日のまとめ
「行動により成長し成長により視界が変わる」
- 仕事における目標を書き出す
- 書き出した目標の為に取り組むべきこと列挙する
- 列挙したことに三方よしは含まれているか?何度も確認し計画を再考する
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