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トランプ大統領が「おもてなし」されていた4日間の息苦しさの訳

国賓として来日したトランプ大統領夫妻を国家を挙げて大歓迎した4日間、「得体の知れない息苦しさ」を感じたと語るのは、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんです。引地さんは自身のその感覚がどこからくるものなのか考え、面談している精神疾患者や障がい者がときに抱えている「親との不健全な関係」との符号に気づき、今回の「おもてなし外交」が日本のトラウマになることを危惧しています。

不健全な関係の息苦しい外交を国民に押し付けることの罪

米国のトランプ大統領が来日し、日本で過ごしている間、得体のしれない「息苦しさ」を感じてしまうのは何だろうか、と考えている。
米国は日本国憲法の制定に深くかかわり、戦後日本の生みの親でもあるし、育ててくれた側面もある。この事実に居心地悪さを感じる人がいて、憲法が「米国からの押し付け」との主張とともに自主憲法を制定しようとする動きがある。この先頭に立つのが安倍晋三首相だ。米国からの従属から抜け出したい願いと、今回の「おべっか外交」と揶揄される過剰な接待行動という理解不能な2つのメンタリティへの戸惑いもある。

何よりも、私が感じる息苦しさは、公正ではない関係性を仲良く取り繕うとする卑屈な精神性が見えてしまうからである。

米紙ワシントン・ポストは「安倍首相ほどトランプ大統領を喜ばすのに腐心した国家首脳は、他にはいなかったのではないか」との書き出しで報じたが、結果的にそれは接待ショーに過ぎなかったのであろう。

ゴルフをやり、大相撲を見て、炉端焼きを食べるという両人の遊びに対するタフさには驚くが、その遊びは決して国どうしの間柄としては健康的ではないと思えてしまうのは、私だけではないはずだ。

信頼関係は接待なしでも築けるはずで、五輪前の時節を利用した「おもてなし」という麗句に身を包んだ接待は、米国に従属する日本という関係性を固定し、国民に強いていることはもはや罪に近い。首相自身が嫌っているはずの従属関係を脱却できるはずがないのは明白だ。

ゴルフ場でツーショットをして蜜月関係を演出してみても、相手にとっては関税交渉のボスと認識しているだけで、接待される、接待するの関係のビジネス接待でしかない。結果的に先方の言葉からは、個人的な情愛を示す発言も、親しみのある言葉も出てきていない。

大相撲のマス席にソファ席を設置してまで相撲観戦を実現した対価としては何があるのだろう。天皇陛下でさえ相撲観戦に力士への気遣いを忘れず、日本相撲協会も土俵は女人禁止などのしきたりを固守し続けてきたのにも関わらず、千秋楽の大事な時をビジネス接待の道具に使われることは果たしてよかったのだろうか。
先方の観戦時の態度を見る限り、相撲への尊敬も知識も何もなく、ただ連れてこられ、座らされた子供のような表情だったのは、押しつけの「おもてなし」だった印象を残した。

精神疾患者や障がい者の面談を重ねていると、この不健全な関係性のケースに類することを思い出す。厳しい父の顔色をうかがって生きてきたケースだ。時には暴力をふるう父の存在が大きなトラウマとなって、社会での対人関係の障がいになる状況に陥った方の悩みである。
この不自然で不健全な親子関係は、今回の日米関係に重なり、この日米関係はその後の私たち日本のトラウマにもなりかねない。

トランプ大統領をここまで接待してしまえば、継続するのが必須となる。接待レベルを落とせば、関係性の崩壊、につながってしまうから、今後を考えると迷惑な先例を作ってしまった。

私たちが生きるうえで常に求めているのは、自分の生存が保証される安心と社会における平等性、公正性だ。完全な平等がない中で平等性を志向する過程には公正さは絶対条件
この脈絡の中で、外交やおつきあいを考えると、ゴルフ場でのツーショットや相撲観戦の様子が、健全なものと映らず、息苦しさでしかないのは、当然なのであろう。

image by: J. Henning Buchholz / Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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