秋の消費増税を控えて、消費不況からの脱却など到底見込めない中、その影響は販売規模の小さな地域のスポーツ店も直撃しているようです。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、中小のメーカーをも巻き込んだ、地域店舗の新しい商品戦略について論じています。
新しい商品戦略を考える
近ごろ、地域のスポーツ店さんから、メーカー・問屋さんに対するご意見を、よくお聞きします。販売政策に関すること、生産体制に関すること、小売店に対するサポートに関すること、さまざまです。そんな中で、「急に販売方針を変えないで欲しい」というご意見があります。
実は、いくつかの大手メーカー・問屋さんが取引小売店さんの選別を始めているようです。メーカー・問屋さんからお店に対し、「○○ブランドの取り扱いを来シーズンから中止したい」といった申し出が来ます。小売店さんにとっては一大事です。取り扱いができなければ、その分、当てにしていた売上が無くなってしまいます。
このメーカー・問屋さんの戦略は、一定額以上の取引のある小売店に商売を絞り込んでいこうということでしょう。もともとそんなに年商の大きくない地域の小売店さんは、それぞれのメーカー・問屋さんとの取引高がたいして多くはありません。メーカー・問屋さんにとっては、主力の取引先とは言えません。地域一番店や大手チェーンなど、取引額の多い小売店さんに絞って、販売効率を上げていこうというわけです。
一方、小売店さんにとっては、たとえ取引額が少なくても大手ブランドの商品は、売上の大きな助けになっています。ですから、メーカー・問屋さんには取引を続けて欲しいと望むのはもっともです。とはいえ、メーカー・問屋さんにしてみれば、致し方のない苦渋の選択なのではないでしょうか。
地域小売店の取る戦略
メーカー・問屋さんも厳しい競争環境にいます。決して経営が楽なわけでもありません。地域の小売店さんをすべてカバーできるほどの余力がなくなっています。経営戦略から見れば、取引額の多い小売店さんに販売資源を集中させるというのは正しい方針だと言えるでしょう。
もちろん、メーカ─・問屋さんにしてみれば、長年自社の商品を販売していただいた小売店さんとの取引をやめるのは辛いことです。しかし、そうとばかりは言っておられないのが実情なのでしょう。
では、そうしたメーカー・問屋さんの方針に対して、地域の小売店さんはどうしたらいいのでしょうか。問題はここです。
私は、こう考えます。まずは、地域小売店さんは、大手メーカー・問屋さんの方針を受け入れることです。そして、「今まで努力をして売ってきてあげた」という考えを捨てましょう。
そればかりか、今まで売らせていただいたことに感謝をすることです。それが出来れば、地域小売店さんの新しい商品戦略を始めることができます。そう、新しい商品戦略です。いったい、どんな戦略でしょう。
まず、メーカー・問屋さんの方針によって取り扱いが出来なくなる商品やブランド以外のものを見てみます。その中で、販売額の多い順に並べましょう。その結果、上位に来た商品やブランドを、これからのお店の主力商品とするのです。そして、それらの売上をどうしたら伸ばしていけるかを一生懸命考えましょう。
その次にすることは、新しい商品やブランドをお店に取り入れることです。例えば、現在取引をしているメーカー・問屋さんは、主力のブランド以外にいくつかのブランドを持っています。その中で、新たに販売できる商品はありませんか。探してみてください。きっと何か見つかります。
中小メーカーとの協力
また、地域小売店さんにとって、現在取引をしていないメーカー・問屋さんは、まだ多くあることでしょう。きっとその中には、きらりと光る商品を扱っているところがあります。ぜひ、そんな商品を見つけて、新しい商品戦略を組み立てましょう。
とはいえ、スポーツ用品業界では、メーカー・問屋さんの展示会が地方で行われなくなってしまいました。東京に集中してしまっています。しかも、ブランド単独の展示会ばかりです。これでは、新しいメーカー・問屋さんを探すのには骨が折れます。
その一方で、中小のメーカーさんも、小売店さんに商品を紹介する機会が減ってしまい大変です。この状態が続けば、中小メーカーさんの経営も苦しくなっていきます。そんな状況を受けてでしょうか、最近では中小メーカーさんが集まって小規模な展示会が開催されるようにもなってきました。
地域の小売店さんも中小メーカーさんも、新しい商売チャンスを探していかなければなりません。お互いに、そうした機運を活用されてはいかがでしょう。例えば、地域の小売店さんが協力して、中小メーカーさんに展示会開催を要請してみるのです。多少の費用は掛かるかもしれませんが、展示会のたびに東京へ何度も足を運ぶことを考えれば、その時間も経費も助かるのではないでしょうか。そのためには、地元の問屋さんに協力してもらうのも良いかもしれません。
いずれにしても、どうしたら今までとは違った商品でお店の魅力を出せるかを考えることが、これからの戦略に必要なことだと思っています。それに、商品のプロモーションは、今までと違ってずいぶんと楽になっている時代です。メーカーさんに頼らなくても、自店のSNSで十分にできます。
いかがでしょうか。このように新しい商品戦略を考えることで、お店の力も上がっていくのは間違いありません。とはいえ、新しい戦略を成功させるのは、楽なことではないでしょう。しかし、楽しい仕事です。新しい商品を扱って、新しい道を探っていきましょう。
■今日のツボ■
- 大手メーカー・問屋さんは取引を選別し始めている
- 地域のスポーツショップは、新しい商品戦略を考える
- 中小メーカーさんの商品にも焦点を当ててみる
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