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2003万。高齢者平均資産額のカラクリと選挙期間中に発表した意図

2014年実施の全国消費実態調査で「高齢世帯金融資産平均が2,003万円」であることが、参院選挙期間中の7月14日に公表されました。これを受け、マンション管理士の廣田信子さんは自身の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』で、先に金融庁が公表した「老後2,000万円問題」の衝撃を払拭させる為の統計上のトリックにすぎない可能性を暴き、公表された時期についても疑問を投げかけています。

高齢世帯の金融資産の平均は2,003万円?

こんにちは!廣田信子です。

日経新聞7月14日の記事「高齢世帯の金融資産額平均2,003万円」が気になっています。参議院議員選挙のまっただ中で、「老後資金2,000万円不足」問題が、選挙の争点にもなっている最中に、高齢世帯は2,000万円預金持っているから問題ないととられかねない…と。

この数字は、2014年の全国消費実態調査」の会計収支に関する結果から、日本経済新聞が、みずほ総合研究所の協力を得て推計したものだといいます。正確に言うと、世帯主が無職で65歳以上の2人以上の世帯における金融資産の平均値が2,003万円だったということです。金融資産には、銀行預金(ゆうちょ銀行含む)、株式、投資信託などが含まれます。不動産資産は含まれていません。

もっとも多いのは東京で2,689万円。これに、奈良県(2,527万円)、愛知県(2,519万円)と続き、もっとも少なかったのは沖縄県で660万円。東京都は、年収が比較的高い会社員が退職金を含めて資産形成しているが表れている。奈良県は、富裕層や大手企業に勤務していた団塊世代が移住していることが影響している。沖縄県は、第三次産業(サービス業)、非正規雇用が多いため、低水準だと。

確かに、団塊の世代以上の大手企業に勤めていた人たちが資産を持っていることは、実感としてわかります。この世代は、退職金にプラスして年金にも恵まれています。さらに、資産価値が高い自宅も持っています。しかし、生活保護を申請する人の過半数は高齢者というのに、ほんとうに、この2,003万円という数字が、それを反映しているか、どうしても疑いの目で見てしまいます。

総務省のホームページによると、「全国消費実態調査」は、全国すべての市、東京23区及び212の町村を対象として、それぞれの調査市区町村を約100世帯ごとの地域に区切り調査地域を選定し、調査地域から一定の統計上の抽出方法によって約56,400世帯を選定し、調査票を配布している…と。ただ、調査票を配布する対象も調査票を返してくれるのも生活が安定していて余裕がある人に偏りがちなのが、アンケート調査ですから。

この数字を見て感じたことは、人によって本当に様々だったと思います。生活保護受給や退職金などなく、国民年金だけで暮らす自営業だった高齢の方は…住宅ローンと子供の教育費で、貯金どころじゃなく、退職金でようやくローンを返せるという働き盛りの人たちは…非正規雇用で、どんなに働いても、ぎりぎりの生活になってしまうワーキングプアーと呼ばれる人たちは…自分たちには無縁のことだと感じたでしょう。

一方、日本の富裕層は増える傾向にあり50人に一人は1億円以上の資産を持っているといわれます。野村総合研究所が2018年に作成した「2017年の純金融資産保有額別世帯数と資産規模についての推計」によると、純金融資産保有額が1億円以上5億円未満の富裕層が118.3万世帯5億円以上の超富裕層が8.4万世帯もあるのです。

富裕層の金融資産額の大きさが、平均を押し上げているのは明らかですし、世帯主が無職で65歳以上が対象の集計ですから、蓄えが無いから、65歳を過ぎてもがんばって仕事をしている人は含まれていないのです。

改めて考えると、高齢者の中でも金融資産の格差は非常に大きく、これから老後の設計をしなければならない若年層とすでにいい条件の中にいる高齢者との間の格差も考えると、この2,003万円という数字はあまり意味が無い…と。

このあまり意味が無いけど、インパクトがある数字を、参議院選の最中に記事にしたことに、なんかひっかかります。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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