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決裂の米国。死神ボルトンの電撃解任は日本にとって吉か凶か

9月11日、米国の対北朝鮮やイラン政策で強硬派、死神の異名を持つボルトン大統領補佐官が解任されたことが報じられました。これを受け、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは、自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、北朝鮮やイランへの強気な姿勢を貫いていたトランプ外交が和解路線へ転じる可能性に触れた上で、同盟国日本へ与える影響についても詳しく解説しています。

ネオコンの大物ボルトン解任で何が変わる???

トランプさんは9月10日、大統領補佐官のボルトンさんを解任しました。

米大統領、ボルトン補佐官解任=対北朝鮮やイラン政策で対立

時事 9/11(水)1:14配信

 

【ワシントン時事】トランプ米大統領は10日、ツイッターで、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)を解任したと明らかにした。

今回は、これについて考えてみましょう?ボルトン解任は、「いいニュース」?それとも、「わるいニュース」?

ボルトンさんとは?

一言でいうと、「ネオコンの大物」です。少し経歴を見てみましょう。

1948年生まれ。1989~1993年、ブッシュパパ政権で、国務次官補。1997年、ネオコンシンクタンク、「アメリカ新世紀プロジェクト」に参加。2001年、ブッシュ(子)政権で国務次官。北朝鮮、イランなどを担当。ボルトンさんは、イラク戦争を積極的に推進しました。2005年、国連大使に就任。2018年4月トランプ政権で安全保障問題担当大統領補佐官に就任。2019年9月、解任。

彼が政権を去ることで、何が変わるのでしょうか?

トランプは、イランとの和解に動く?

ボルトンさんは、イラン問題で「最強硬派」です。イランへの空爆を主張していた。そうなると、日本は厳しい立場に立たされます。アメリカは、日本の同盟国。イランは、日本の友好国。ボルトンさんが解任されたことで、アメリカとイランは和解の方向にむかうかもしれません

そもそもイラン問題がこじれたのは完全にトランプさんの責任です。イラン核合意は、すばらしい。イランは、IAEAの監視下に置かれ、核兵器を製造するこができない。一方で、制裁は解除され、原油輸出が可能になり、イラン経済は復活してきていた。まさにWIN-WINのディールだった。

ところが、2018年5月アメリカは一方的にイラン核合意から離脱した。しかし、「すばらしい合意」であること、皆が知っている。それで、他の参加国、イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国、イランは、「核合意維持」を支持しているのです。トランプさんの愚かな行為で、英仏独と、敵である中ロが一体化するという、マヌケな事態に…。

そして、トランプは、「米中覇権戦争」の真っ最中に、イランとケンカしている。まことに「戦略的でない」動きといえるでしょう。ボルトンさんが解任されてトランプがイランと和解することを心から願います

トランプが北朝鮮と妥協する可能性

ボルトンさんは、対北朝鮮でも最強硬派」です。北朝鮮に限っていえば、ボルトンさんは、日本の強い味方でした。なぜ?ボルトンさんは、「完全非核化がなるまで制裁を解除してはならないと主張している。長い間北朝鮮に関わってきた彼は、北朝鮮の狡猾さを知り尽くしている。

一方、金正恩は、中国、ロシア、韓国の支持をうけて「段階的非核化を主張しています。これは、何でしょうか?北朝鮮が少し非核化する。国際社会は、少し制裁を解除する。また北朝鮮が少し非核化する。国際社会は、また少し制裁を解除する。このプロセスを繰り返し、完全非核化までつづけるというのです。どこが問題なのでしょうか?

中国ロシア韓国は北朝鮮を支援したくてウズウズしています。制裁が緩和されれば、お金が洪水のように流れ込み、北朝鮮経済は、急成長しはじめるでしょう。金正恩が最終的な完全非核化を約束している唯一の理由は、金(かね)です。制裁が緩和されて大金が入ってくれば、なぜ非核化する必要があるのでしょうか?

金正恩は、「お父さんがアメリカをだましたやり方で、僕もだますことができたよ。ヤンキーは、ホントバカだよね!」と金正日に報告することでしょう。トランプさんが、「しまっただまされた!」と後悔しても、時すでに遅しです。再び制裁を強化しようとしても、今度は中国、ロシアが反対する。「北朝鮮は、ICBM実験も核兵器実験もしていないだろう」と。

というわけで、北朝鮮についてはボルトンさんが正しい。彼が首にされた今、「トランプは、金に妥協するつもりなのではないか」と疑念がわいてきます。

まとめます。ネオコンの大物ボルトンさんは、イランに対しても、北朝鮮に対しても「最強硬派」。彼が去ったことで、アメリカは、イラン、北朝鮮と和解にむかう可能性がある。アメリカとイランの和解は日本にとっていいことである。アメリカと北朝鮮の和解は、北が核を保有したまま制裁緩和にむかう可能性があり、日本にとってとても悪い。というわけで、ボルトンさん解任は、日本にとって、「いいニュース」であり、「悪いニュース」でもあるのです。

image by: Gints Ivuskans / Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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