最低賃金の時給額引き上げにより、中小企業が悲鳴をあげています。アルバイトやパートであっても、それ以上の賃金を労働者に支払わなければならない決まりになっていますが、果たしてこのルールは守られているのでしょうか。今回の無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』では著者で現役社労士の飯田弘和さんが、労働者の賃金が最低賃金を下回ってはいないかを調べる計算方法や除外する手当などについて解説しています。
御社では、最低賃金額以上の賃金を支払っていますか?
10月といえば、最低賃金の改定の月です。私の住む東京都では、10月1日より、最低賃金が1,013円に改定されています。改定日については都道府県ごとに異なりますが、数日中には、すべての都道府県で新しい最低賃金に改定されることになっています。
最低賃金については、支払われている1時間当たりの賃金が、都道府県ごとに定められた最低賃金額以上でなければなりません。たとえ、アルバイトやパートであっても、最低賃金額を下回る時給で働かせることはできません。
時給の場合、その時給額が最低賃金額以上でなければなりません。
日給の場合、「その日給額を1日の所定労働時間数で割った金額」が最低賃金額以上でなければなりません。日ごとに所定労働時間が異なるが、日給額は1日〇〇円と定まっている場合には、「1週間でみたときの1日の平均所定労働時間数で日給額を割った金額」が最低賃金額以上でなければなりません。
月給の場合、「月給額を1ヶ月の平均所定労働時間で割った金額」が最低賃金額以上でなければなりません。1ヶ月の平均所定労働時間とは、1年間の所定労働時間を12で割った時間です。
また、たとえば、基本給は時給であり、○○手当が月給で支払われている場合には、「時給額」と「○○手当の金額を1ヶ月の平均所定労働時間で割った金額」を足した金額が最低賃金額以上でなければなりません。
基本給は月給で、それにプラスして歩合給が支給される場合には、少し計算が複雑です。基本給については、1ヶ月の平均所定労働時間で割って、時間当たりの単価を出します。歩合給については、その歩合額を、当該賃金算定期間(前回の歩合賃金の締め日から今回の歩合賃金締め日まで)の総労働時間数で割って、時間当たりの単価を出します。そして、基本給の時間当たり単価と歩合給の時間当たり単価を足した金額が、最低賃金額以上でなければなりません。
ところで、最低賃金の計算において、諸手当のうち、精皆勤手当・通勤手当・家族手当は除外します。また、次にあげる賃金も除外して計算します。
- 臨時に支払われる賃金(結婚手当等)
- 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス等)
- 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(残業代等)
- 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金等)
- 深夜労働(22:00~5:00)に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金額を超える部分(深夜割増賃金等)
みなさんの会社でも、各労働者の賃金が最低賃金を下回っていないか、しっかり確認してください。
以上を踏まえて、改めてお聞きします。
「御社では、最低賃金額以上の賃金を支払っていますか?」
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