日本中に衝撃を与えた、神戸市立小学校の教師による同僚いじめ問題。次々と明らかになる事実は、この問題がもはや「傷害事件」であることを示しているようにも思えますが、今のところ加害者らに厳罰を与える動きは見られず、専門家らも「免職は厳しい」と口を揃えています。一体なぜなのでしょうか。今回のメルマガ『伝説の探偵』で、数々のいじめ事件を解決に導いてきた現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さんが、その「驚愕の理由」を記しています。
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神戸市教育委員会の不祥事が止まらない
神戸市教育委員会における問題が連続して飛び出てきている。まずは、すでに報道されている教職員間の犯罪行為だ。私は、これを敢えて「いじめ」とは言わない。理由は2つある。
1つは、いじめ防止対策推進法では、「いじめの定義」があり、ここには、児童生徒間であると明記されているからだ。2つ目は、本件で行われている行為は、ほとんどが犯罪行為であり、学校が治外法権でない以上、これをいじめとするのは腑に落ちないからである。報道された内容を言い換えてみれば、下記のようになろう。
「激辛カレーを無理やり食べさせる」は「強要罪」
「わいせつメッセージを送るように強要」も「強要罪」
「送迎を強要」も「強要罪」
「所有者を蹴る、屋根に乗る」は「器物損壊罪」
「コピー用紙の芯でお尻が張れるほど殴る」は少なからず「暴行罪」
「足を踏みつける、肘で打つ」は「暴行罪」
「激辛カレーを目に入れる、体につける」も「暴行罪」
他にも次から次へと行為が出てくるが、その多くは何らかの罪に該当する行為である。よって、これは校内で行われた犯罪であり、加害者は刑法犯であるのだ。
10月8日になって、下記のような内容が報道された。
これは、神戸市教育委員会がメディア用にプレスリリースした内容である。つまりは、現在調査中であり、処分は検討するというものだ。
一方で、4人の教諭は、自宅待機という処分がないという方便で、「有給休暇をとって自宅待機」をしている。何とも悠長な話だが、多くの教員出身などの教育評論家が、口を揃えるように、免職などの処分は期待できない。
また、この件は前の校長が事実を把握していたのにかかわらず、「被害者本人が大丈夫です」と言ったから、「もう問題は解消しました」と教育委員会に報告していることが明らかになっている。さらに、神戸市教育委員会は、7月に事態を把握しつつも、実際には9月に入ってから被害者の家族から相談を受けて動き始めている。
twitterを使いこの事件が起きた神戸市立東須磨小学校の保護者と名乗る人物に取材をしたところ、ネット上に書き込まれた教諭は確かに10月に入ってから学校に来ておらず、また、保護者会で校長は、ちょっとしたイタズラのようなもので心配をかけてすみませんという内容の説明をしたとのことだった。加害行為をした男性教諭が、子供達に面白い出来事としてこの犯罪行為の内容を話したというのも事実だということだ。
さらに 今後マスコミなどが取材を申し込んできたりすると思うが、応じないようにと話したということであった。
教職員はほとんどが許される
私の元には教員の処分などの情報が多く流れてくるが、わいせつ行為や買春などで逮捕される場合などは免職となるが、それ以外ではせいぜい「戒告」処分なのだ。
戒告とは、主には口頭注意。給与が少し減ったり、記録として残るから出世できないと言われているが、給与が減るのは大した金額ではない減らないこともあるだろうし、記録が残っても、実は今の教員の数の問題からして大したデメリットにはならない。
教員世界を知っている教育評論家が「免職は無理だろう」というのはこういうことを知っているからなのだ。
例えば、神戸市の場合、市立高校の教諭が印鑑を作成するキットや保管の印鑑を使って勝手に書類を作成したという件があった。これで、「停職1カ月」である。
他にも生徒のお尻を蹴り上げて体罰をした教諭は「戒告」、激しく平手打ちをして体罰となった男性教諭も「戒告」処分で済んでいる。
また、これは教員ではないが、須磨区役所の事務職員が、上司や同僚に大声で怒鳴って威圧したり、暴言を吐き、これを受けた別の職員が体調不良を訴えるまでに至ったという問題については、「減給処分(10分の1、3ヶ月)」となっている。
いじめ防止対策推進法の改正案でも問題になった教職員の処分であるが、多くの学校関係者は教員が萎縮して業務が差し支えることを理由に反対していた。さらに、彼らは、地公法(地方公務員法)などで処分ができるのだから、それ良いではないかと代案まで出していた。
こう言われてしまうと、この処分の甘さや複雑さを知らない市民は、「なるほど、いじめ法で定めなくても、地方公務員法で処分などの規定があるなら、二重になるし、別にいいんじゃないか」となってしまう。
ところがだ。
そもそも私立の教員は、公務員ではない。
また、地方公務員法の内容を見れば、懲戒までいくには相当なハードルがあることがわかる。
(懲戒)
第二十九条
1 職員が左の各号の一に該当する場合においては、これに対し懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる。
一 この法律若しくは第五十七条に規定する特例を定めた法律又はこれに基く条例、地方公共団体の規則若しくは地方公共団体の機関の定める規程に違反した場合
二 職務上の義務に違反し、又は職務を怠つた場合
三 全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合
2 職員の懲戒の手続及び効果は、法律に特別の定がある場合を除く外、条例で定めなければならない。
本件でもすでに報道されたように、自宅謹慎などの処分の規定がないので、有給休暇を取らせていると神戸市教育委員会はまるで「処分をしていますよ」という姿勢で発表しているのだ。
通例、自宅謹慎の場合と単なる有給休暇の場合はその意味も違うのだ。単純に職場に来ていないという状態が同じなだけだ。これを、「事実上の謹慎処分だ」と言えてしまう教育委員会という組織の社会性の無さには、開いた口が塞がらないと言えよう。
この件、市教育委員会でも県教育委員会でも処分は期待できない。世間的な批判が集中し、教育長が失職するほどになれば、処分ということもあろうが、彼ら独自の考えや常識では、世間一般での当然の処分はできないであろう。
だが、被害者側がもう一歩踏み出せば、事態は変わる。
被害届もしくは刑事告訴をすべき
一部報道によれば、被害側は刑事告訴も視野に入れているという。学校で起こるいじめ問題でもそうだが、その行為自体が犯罪行為となるのであれば、私は容赦無く警察に被害届を出すべきだと考えている。この件は、冒頭の通り、いじめではなく、犯罪行為のオンパレードそのものなのだから、警察に被害届もしくは、刑事告訴をすべきなのだ。
犯罪事実が明確であり、被害がはっきりしているのであるから、罪に問われるであろう。
学校も教師も公務員も治外法権ではない。罪に問われるようになれば、当然に加害教諭らは失職を免れない。
第一、このような犯罪者が児童らに触れることは許されないであろうし、加害教諭らが失職しなければ、いずれ狭い教員世界、被害教諭は彼らの同じ職場になってしまうことも考えられる。
校長らもこの問題を隠蔽しようしたほどなのだから、上司もあてにならないだろう。
だからこそ、司法に委ねるべき犯罪の問題なのだ。
神戸市教育委員会、組体操問題
神戸市の久元市長が8月に組体操の見合わせを市教育委員会に要請した。それは、あまりに事故が多く、生徒らの安全に問題があると判断したからであった。
それでも神戸市教育委員会は「一体感や達成感が得られる演目」だからやめないと反発していた。政治家に教育のなんたるかはわからないだろうというのが本音である。
どうにもならず、久元市長はツイッターで「止める勇気をもってください」と学校関係者に呼びかけるという異例のトランプ作戦に出たのだ。
それでも、この10月まで神戸市教育委員会は中止を要請することはなかった。
骨折も学び、怪我も学び、最悪な自体が起きても残念でした、事故でしたというのがスタンスなのだろう。一般に予期できることをそのまま実行し、事態が悪化すれば、それは場合によっては罪になる。教育者にありがちな、自分たちは善良だという世間ズレした考えが根底にあるのかもしれない。
ところが、10月7日、今年8月末以降、運動会の組体操の練習中に、なんと市立の小中学校で、51人もが負傷し、うち6人が骨折したという事実が浮かび上がると、神戸市教育委員会は、主張を若干変えたのだ。
「来年度以降は中止を含めて検討したい」
つくづく反省がないのだ。
「検討したい」というのは、「やっと考え始めました」 ということだ。さらに、「中止も含めて」とは何か前進したようにも思えるが、結局は、中止以外も入っているわけだ。
負傷した51人は組体操が中止であれば、負傷しなかった。そのうち6人も、組体操をしなければ骨折することはなかったのだ。
組体操をすることと、児童や生徒が骨折したり負傷することを天秤に計っても、教育委員会たるものが組体操をすることを重視した結果ではないか。
よく教職員や教育委員会の事務局は、卑下して自分たちを「サービス業と同じです」と言ってくる。
敢えて言おう。
「サービス業の従業員なら間違いなくクビになる。これが企業なら、間違いなく倒産している。このような世間知らずで常識外れは、容赦無く淘汰される」
学校も教育委員会も公務員の福利厚生施設ではない
犯罪行為を犯し、それでものうのうと有給を取れる学校、有給休暇を自宅謹慎処分だと言ってしまえる教育委員会、児童生徒が毎年怪我をして命の危険があるのに、自分たちの理想像たる気持ち悪い一体感を押し付け、それこそが教育だと言い張って、組体操を市長までもがやめてほしいと言ってもやめない教育委員会。
この当事者は世間一般で言えば、懲戒免職相当、犯罪加害者に至っては刑務所送り相当のことをしている。
ところが、やはり、加害当事者らは、のうのうと市民の税金を蝕んで、ごく当たり前に職についているのだ(有給も同じだ)。
これでは、学校は治外法権であり、日本の法律が及ばない場であるとなってしまうだろう。
もはや、荒れる教職員にとっても、重大な判断ミスをしても処分もない無責任な公務員にとっても、学校や教育委員会は、まるで、福利厚生施設と化しているとしか言わざるを得ない。
多く市長には教育長の任命権がある。いっそ、クビにすべきではないか。議会には教職員などを処分するための規則を作る権限があろう。少なからず謹慎処分規定を作るべきではないか。
教員間の犯罪行為は警察は捜査しないのか。これで社会正義は果たされるのであろうか。
今こそ、厳しい対象が必要なときではないだろうか。
編集後記
前回は川口市教育委員会、今回は神戸市教育委員会。教育委員会の不祥事や問題は今後も増えていくことでしょう。
なぜなら、既に潜在的な問題をどの教育委員会も抱えているはずだからです。それがいつ表面化するだけの問題であり、時限爆弾のようになっているのです。こうなってくると、そもそも教育委員会などいるのか?となってきます。
ただ1つ言えることは、まともな人は中には数人いて、今の制度の中で、なんとか子どもたちが良い環境で過ごせるように考えたり、教職員間で多発するパワハラやセクハラ問題を解消しようと走り回っているのです。
彼らの努力は無駄になることが多いということもあります。なぜなら、校長のお気に入りでわがまま放題やる教員がいたり、そもそも校長が隠蔽を平気でやったり、児童や生徒に受けが良いようで、裏では犯罪行為をしている者がまだまだいるわけです。
そして、処分されない。ちょっと注意されて、リフレッシュ・パワーアップして復帰してしまう。まともな教員が心を病んでしまうし、その分働かされて疲弊するのです。
この業界はもはや末期症状だと私は思います。今後もその実態を明らかにしていきますが、ある意味ネタに尽きないのは複雑な思いです。
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