MAG2 NEWS MENU

親が亡くなった子が貰える遺族年金。数人いたら配分はどうなる?

遺族年金といえば、主に「配偶者が貰う」というイメージがあるのではないでしょうか。しかし、両親を亡くしてしまった場合には、その子どもが受給することになります。では、数人の子がいた場合にはどのような配分になるのでしょうか? 今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、3人の18歳未満の子がいる親が亡くなった場合を想定して、その事例をもとに詳細に解説しています。

親が死亡して未成年の子だけが残された場合の遺族年金

遺族年金というと主に配偶者が貰う事が多いですが、それは受給する順位としては原則として一番上だからです。とはいえ年金貰う順番としては、今回の記事のように未成年の18歳年度末未満の子も配偶者と同じ順位であり、同等の立場です。
つまり、配偶者と子は遺族年金を貰う立場としては同じ第一順位者となる。

ただし受給する際は配偶者優先となり、配偶者が貰ってる間は子への遺族年金が停止(年金貰う事はできるけど停止されてるだけ)されている状態です。子へは支給されてないから、子には年金は関係ないというのはちょっと違う。

というわけで、今回は配偶者から子への遺族年金の流れなどをザッと見てみましょう。

1.昭和47(1972)年7月12日生まれの女性(今は47歳)

何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!(参考記事)

20歳になる平成4(1992)年7月から国民年金に強制加入となり、平成7年3月までの33ヶ月間は国民年金保険料を親が納めてくれていた。平成7年4月から非正規雇用で働くようになり、平成15年9月までの102ヶ月間は未納。

平成15年10月にサラリーマン男性と婚姻し、この月から夫死亡(平成27年8月26日)の前月である平成27年7月までの142ヶ月間国民年金第三号被保険者となる。その後は国民年金第一号被保険者として国民年金保険料を未納したとします。

厚生年金加入中である平成27年8月26日に夫が死亡した時点で、生計維持されてる遺族は配偶者であるこの女性と、子3人(死亡当時12歳、10歳、9歳の子)、そして夫の父母(3人の子から見て祖父母)だった。

厚生年金加入中の死亡なので遺族厚生年金が支給されるが、支給される権利があるのは第一順位者である配偶者と3人の子。死亡した夫の父母は第2順位者なので遺族年金の権利はそもそも発生しない。なお、未成年の子が居るので、国民年金からは定額給付の遺族基礎年金がすべての子が18歳年度末を迎えるまで支給。

配偶者に支給される遺族厚生年金は50万円とし、遺族基礎年金は定額の780,100円+子の加算金(224,500円×2人+3人目以降74,800円)で、遺族年金合計が1,803,900円(月額150,325円)だった。

次に、令和元年9月2日にこの妻が病気で死亡した。この時の遺族は3人の子(夫の父母は入らない)。妻が国民年金加入中に死亡したので、妻の遺族基礎年金が発生するが、3人の子は両親のうちの一方の遺族年金を選択となる。夫の遺族年金は遺族厚生年金があり、こちらが有利なので夫の遺族厚生年金と遺族基礎年金を選んだ。

夫の遺族年金を受給していた妻が死亡した事により、子の遺族年金は停止解除となって令和元年10月分から子の銀行口座に振り込まれる(令和元年12月13日振込開始)。

なお、妻の死亡で受け取れなかった夫の遺族年金(8月分と9月分の150,325円×2ヶ月分=300,650円)は未支給年金として第一順位者の子の名義で請求する。未支給年金は300,650円ですが、祖父母付き添いのもと第一子(16歳)が請求した。子は3人いますが、1人がした請求は全員のためにその全額を支給されたものとされる。

回りくどい言い方ですがつまり、1人が請求して指定口座に全額受給したら、その全額は3人全員にやったものとされるわけです^^;わざわざ3人に分割して、それぞれの口座に振り込まない。一時金である未支給年金の分け前はご自由にって事です。

 

さて、令和元年10月からは夫(子の父)死亡による遺族厚生年金と遺族基礎年金が、今度は3人の子に支給されますがどのように支給されるのか。年金の場合はさっきの未支給年金のように、分け前はご自由にってわけにはいかない。まず遺族厚生年金は50万円で、遺族基礎年金は780,100円+2人目224,500円+3人目74,800円=1,079,400円になる。

※注意

子の加算の数え方には注意。配偶者が貰える場合は遺族基礎年金780,100円が付いた後、3人の子の分の加算として224,500円×2人+3人目以降74,800円で合計が1,303,900円になる。

子3人のみで貰う場合は、子が1人目に対し780,100円+2人目224,500円+3人目74,800円=1,079,400円となる。なお、第一子が780,100円を貰うわけではなく下記のようになっていく。

さらに、令和元年10月からは遺族基礎年金受給者に対し遺族年金生活者支援給付金も始まったので、年額6万円(月額5,000円)の支給も開始。

ただし、子が3人なので1,579,400円を3人で割って、それぞれの名義の銀行口座に526,466円(月額43,872円)ずつの支給となる。子が幼いからって本人名義以外に年金すべてを振り込んで欲しいという事は不可。遺族年金生活者支援給付金は年額6,000円を3人で割って支給するから、1人当たり年額20,000円(月額1,666円)。

なので3人の子それぞれが受給する遺族年金は、526,466円+遺族年金生活者支援給付金20,000円=546,466円(月額45,538円)となる。

その後、第一子が18歳年度末を迎えると第一子の遺族年金が失権となり、第二子と末っ子の二人で受給する。この時の2人が受給する遺族年金は、

となる。最後の一人になると、

※追記

この3人の子は両親死亡後も祖父母(夫の父母)が面倒を見る事になった。子に支給されてる遺族年金に影響があるかというと、もし祖父母と養子縁組をしてしまうと親と子の関係になるので、親と同居中(生計同一)は遺族基礎年金が全額停止になってしまう。養子縁組をしたいなら子がすべて18歳年度末を迎えてからにしたほうがよいでしょう。

なお、祖父母との養子縁組は直系血族との養子縁組になるので、遺族年金は消滅しない。直系血族または直系姻族以外の者との養子縁組をしてしまうと遺族年金は失権する。たとえば内縁関係の配偶者と自分の子を養子縁組させると、内縁関係の配偶者は法律上の配偶者ではないので直系姻族以外の人との養子縁組になってしまい、子の遺族年金は消滅する。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座 』

【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け