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まるで生き地獄。消費税が上がるとサラリーマンの給料が減る理由

これまでも「元国税が暴露。『消費税は社会保障のため不可欠』が大ウソな理由」等で、消費税がいかに欠陥に満ちたものかを白日の下に晒し続けてきた、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。そんな「天下の悪税」が10月1日にアップされたわけですが、今後私たち庶民の生活はさらに苦しくなるのでしょうか。大村さんは今回、自身のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、消費増税とサラリーマンの給料の関係についての「衝撃の事実」を記しています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年10月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

消費税が上がるとサラリーマンの給料が減る理由

このメルマガでは、消費税の欠陥についていろいろ説明してきましたが、まだまだ消費税の欠陥はあります。それは、「消費税は企業の人件費を減らす圧力がある」ということです。これは曖昧な根拠で言っているのではありません。数式的に見て明確に、消費税には人件費を減らす圧力があり、実際のデータ的にも消費税導入後に人件費はさげられているのです。

これから税金に関して少々専門的な話になりますが、少し我慢して読みすすめてください。消費税は、その計算式の上で、「人件費が大きい企業ほど納税額が大きくなる」という仕組みがあるのです。企業は、消費税を納付する時、客から預かった消費税をそのまま納付するのではありません。企業は、仕入や様々な経費を支払ったときに、消費税を払っています。だから、企業は客から預かっ「預かり消費税から経費で支払った消費税を差し引いてその残額を税務署に納付するのです。だから単純に言えば、消費税の納付額というのは、次のような算出で表されます。

これを見ると、法人税などの計算とあまり変わらないように見えます。しかし、法人税と大きく違うところは、経費の中に人件費が入っていない事です。社員の給料には消費税はかかりません。そのため給料分の経費は「支払い消費税」の計算からはずさなくてはならないのです。となると、消費税の計算は、ざっくり言って次のような算式になります。

この算式を見れば、人件費が多いほど消費税の納付額が大きくなることがわかるはずです。実際、企業が何かの業務を行う時、人件費を払って社員を雇うよりも、業者などに発注した方が消費税の節税になるのです。

だから、企業は新しく人を雇ったり、社員に残業させて残業代を払うよりは、外注したほうがいいということになるのです。先ほども言いましたように、消費税導入後に、実際に、サラリーマンの給料は下がり非正規雇用が増えているのです。日本のサラリーマンの給料は、バブル崩壊以降、先進諸国に比べてあまりに下がりすぎたので、ここ数年こそ、少し上向きになっていますが、この30年で下がった分を取り戻すには遠く及ばないのです。

給料の減額や非正規社員の増加は、消費税の導入だけが理由ではないでしょうが、大きな要因の一つであることは間違いないのです。消費税推進論者の学者などは、「消費税増税で人件費が下がるようなことはない」と言っていますが、理屈の上でも実際のデータでもそうなっているのだから、それは詭弁なのです。

法人税を減税すればサラリーマンの給料が下がる

このメルマガでも何度もご紹介してきた通り、消費税というのは、社会保障費にはほとんど使われていません企業や高額所得者の減税の穴埋めに使われてきたのです。消費税が導入され、税率が上がるたびに、法人税や高額所得者の所得税が減税されてきました。消費税が導入されたとき、消費税が3%から5%に引き上げられたとき、5%から8%に引き上げられたとき、その直後に相次いで法人税、所得税などの減税が行われています。そして、今回も法人税の減税が検討されています。

所得税の税収は、1991年には26.7兆円以上ありましたが、2018年には19兆円にな
っています。法人税は1989年には19兆円ありましたが、2018年には12兆円になっています。つまり、所得税と法人税の税収は、この30年の間に、14.7兆円も減っているのです。一方、現在の消費税の税収は17.6兆円です。つまり、消費税の税収の大半は、所得税と法人税の減税分の穴埋めで使われているのです。

法人税が下げられれば、サラリーマンも得をするのではないか、と考える人もいるかもしれません。企業が得をすることは、企業の中にいる社員も恩恵をこうむることができるのではないか、と。しかし、それはまったくありません。会計の仕組み上、法人税が下げられればサラリーマンはむしろ損をすることになっているのです。

先ほど、消費税が企業の人件費を引き下げる圧力があると述べましたが、法人税は逆に企業の人件費を引き上げる圧力があるのです。だから、法人税が下げられれば必然的に人件費を引き下げる圧力になるのです。

どういうことか簡単にご説明しましょう。法人税が高い場合は、企業は必要以上に利益を出さないようにします。利益を出しても税金に持っていかれるからです。企業は儲かっている時や金に余裕があるときは、税金を払わないために積極的に経費を使おうとします。当然、社員の給料もたくさん出そうとします。これは、もちろん景気対策にもなります。企業がなるべく経費を使い、社員の給料を上げるようになれば、世間の消費は増えるからです。

ところが、法人税が減税されればどうなるでしょうか?企業はなるべく利益を多く残そうとします。となると経費は切り詰め、社員の給料には下げ圧力が加わります。会社が儲かったとき、その利益にはあまり税金がかからないから利益として残した方が得になるのです。実際のところ、バブル期までの法人税は今よりも50%以上高かったのですが、サラリーマンの給料はうなぎ上りでした。そして1999年の法人税大減税以来、サラリーマンの平均年収は下がりっぱなしなのです。法人税が下げられたから、企業としては何も考えずに利益を上げることだけに集中してしまうのです。その結果、会社の内部留保金が世界一レベルで積みあがっているのです。

消費税の負担は後から効いてくる

今回の消費税導入にともなって、政府は「今のところ景気への影響は出ていない」と発表しました。が、それは当たり前です。消費税の害は後からしか現れないからです。

消費税は国民に負担感を感じさせることなく広く浅く取ることができる税金

消費税の導入時、政府はこういう説明を繰り返し行いました。確かに、消費税というのは、直接税に比べれば払うときに負担感がないのです。今回も、増税されたのは2%だけなので、一回、一回の負担感はそれほどでもないでしょう。しかし、それは単に支払う回数の違いだけなのです。

直接税は、一回で払わなければならないので、負担感が大きいのです。しかし消費税は、買い物するごとに、何百回、何千回と払うものなので、一回の支払いでの負担感は小さくなります。それは、当たり前のことです。消費税というのは、一回、一回の支払いでは大した影響はありませんが、長期間をかかって確実に家計に影響を与えるものなのです。

ローンのことを考えてみればわかるはずです。ローンで買い物をすれば、一回、一回の支払額は小さいので、負担感が少ないものです。しかし、何度も何度も支払わなければならないので、そのうちに負担感が増してきます。というより、ローンで買い物をすれば、給料から強制的に差し引かれることに、必然的に、自分が日常的に使えるお金が減ります。

それは、消費税にも必ず言えることなのです。一回、一回の買い物ではそれほど負担感はなくても、トータル的に、自分の「使えるお金」や「買える商品(サービス)」は確実に減っているわけです。それは、通帳残高や手持ちの現金残高に必ず反映されます。その結果、消費は冷え込みます

実際、消費税が導入されてから、消費は落ち込んでいます。90年代、2010年代、日本の景気は一瞬、回復しかけましたが、消費税の導入と税率アップで、吹っ飛んでしまったことは、記憶にあるはずです。消費税は、確実に国民の懐を痛め経済力を衰退させるのです。その害は、弱いものから影響受けます。そしてボディーブローのように後から後から効いてくるのです。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より一部抜粋)

image by: Shutterstock.com

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2019年10月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

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