「値引きをしなければ売れない」「売り上げ増のため品数を充実」「改装すれば売上増」…。あなたのお店は、そんな凝り固まった考えにとらわれてはいませんか?今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者で経営コンサルタントの梅本泰則さんが、具体的事例を取り上げつつ、原点を見つめなおし現状を打破する店舗経営を提唱しています。
コンサル奮闘記 第二弾
あなたのお店も売場改装をすることがあるでしょう。実はその時、お店にとって経営を見直すいいチャンスとなります。一つ目はそんなコンサルティングを行なった事例です。
【事例1:改装をしたい】
スポーツ店が店舗を改装することは、滅多にありません。もちろん、店内の什器の一部を新しくしたり、看板を書き換えたりすることはよくあります。しかし、全面改装ともなると、10年~20年に1回ということになるでしょう。
そんな中、あるお店が全面改装をしたいというご相談に来られました。10年振りの改装と言うことです。50坪の売場のあるお店ですから、それなりに改装費用がかかります。改装後の売上を増やしたいのは当然です。
改装に当たって、閉店セールや新装オープンのイベントを考えるだけではもったいないですね。そこで、この機会にあらためてお店の方向を考えていただくことにしました。
まず、「なぜこの商売を始められたのか?」、そして、「なぜこの商売を続けているのか?」ということから入っていきます。今まで、そんなことを真剣に考えたことはありません。店主は一生懸命にその答えを考え、見つけました。
次に「将来はどんな店になりたいのか?」というテーマです。将来についても、漠然としか考えていませんでした。今回これも何とかひねり出すことが出来ました。いわば、この二つは、「経営理念」です。
そして、その次に、「この店が売りたいお客様は、どんな人か」ということを明確にしていただきました。それも具体的にです。実は、長年商売をしていると、お店が相手にしているお客様が絞り切れなくなっていきます。すると、あれもこれもと商品をそろえてしまうことになります。お客様が絞り込めたら、販売する商品は、自然と決まってきます。
問題は、どんな方法で販売をしてお客様に喜んでいただけるか、ということです。会員サービスや、店頭イベントなど、あれやこれやと知恵を出していきます。これも明確に方針を決めて、ご相談から3ヶ月後に見事オープンです。
このお店にとって、今回の改装は足元を見直す良い機会になりました。自分のお店の方向が明確になり、今まで以上に意欲的に商売に取り組んでおられる様子です。そして、改装から1年後、売上は順調に伸びているというご報告をいただきました。嬉しい限りです。
2年で売上が5倍に
次はネット販売のご相談事例です。思った以上の成果につながりました。どんな方法をとったのでしょう。
【事例2:ネットの売上を上げたい】
創業60年のお店から、ネット販売を強化したい、というご相談がありました。そのお店はすでに楽天に出店をしていて、年間2,200万円の販売実績です。これを1年後に4,000万円にしたいという希望です。ほぼ倍増計画です。
そこで、私が最初に提案をしたのは、ネットショップへの出品数を減らすことでした。先方は「?」という表情です。私は尋ねました。
「1年間で最も売れた商品は何ですか?」
すると、「○○だと思う」との返事。しっかりとした販売データは掴んでいません。早速データを作成してもらいます。案の定、意外な商品が売れていました。そして、2,000点の出品のうち、実際に売れたのは800点のみ。こうしたことは、よくあります。
すぐにサイトの作り直しにかかり、1年間1個も売れなかった1,200点の商品をサイトからはずします。実際に売れている商品に絞り込んで、紹介をしていきます。そして、サイトにお客様の姿が見えるようにしました。「お客様の声」や「お役立ち情報」のページを追加していったのです。
徐々に効果が出始めて、売上も伸びていきます。そして、月別の販売計画表を作って、毎月販売実績との照合を行います。販売目標が昨年の倍の数値ですから、達成するのは簡単ではありません。目標に達成しない月には「前年の数字よりは伸びているから良いでしょう」と同意を求められます。なるほど、今までそうして売上や利益を管理してきたのですね。
そこで私は、販売計画表の中から昨年実績の数字を消すようにお願いをしました。あくまで、目標値に対する達成度を考えてもらいます。先方には、少しつらい方法だったかもしれません。しかし、そのおかげで、何と1年後には6,000万円の売上が出来てしまったのです。利益も計画以上に出ました。それはもう、お店もビックリです。昨年対比ではなく、目標比で考える習慣が身に付いたからでしょう。
もちろん、サイトの修正や、お客様とのコミュニケーションなど、必要と思われることは数多く実行しました。そして2年後、そのお店は年商1億円を達成したのです。コツをつかんだのでしょう。
値引き体質からの脱却
3つ目は、安売りをやめたら業績が上がったお店の事例を紹介します。私はどんなアドバイスをしたのでしょう。
【事例3:値引きは当たり前】
スポーツ店は、値引きをして売るのが当たり前になっています。「他の店が安く売っているから」という理由のようです。小売業は、価格で勝負をするのが一番簡単な方法です。しかし、そのために店の利益が出なくては元も子もありません。
地域では名の通ったお店から相談がありました。話を聞いてみると、どうも粗利率が低いようです。そのお店の売上が昨年より10%ダウンしてしまいました。そうなると、赤字転落が見えています。何とかしなくてはなりません。
私は即座に「値引き販売の中止」を提案しました。お店はビックリです。「値上げをしたらお客様が来なくなってしまう!」。大丈夫です。実際にはそんなことにはなりません。もちろん、価格が安いから買いに来るお客様もいらっしゃいます。しかし、お店の魅力は価格だけではありません。
実は、値上げに一番反対するのは、販売スタッフです。今まで「他より安いですよ!」と言って販売してきました。そのセールストークが使えなくなってしまいます。お客様にどう勧めていいのか分かりません。そこで、全店の商品を値上げするのはもう少し後からにして、一部の商品を定価で販売することにします。販売スタッフに慣れてもらうためです。
そうしたら、その商品は今までと同じように売れていくではありませんか。スタッフの驚きは相当なものでした。
自分たちの常識が覆った瞬間です。「値引きをしなくても売れるのだ」という体験が出来ました。そして、商品そのものの良さを伝えるセールストークが身について行きました。その一方で、商品の見せ方や陳列方法にも工夫をし始めました。
その後、少しずつ定価で売る商品を増やしていきます。それでも販売をしていると、どうしても「他店の方が安い」という、一部のお客様の声が、まるで全員の声のように聞こえてきてしまいます。我慢です。すると、そのお客様のつぶやきも、徐々に減っていきました。その結果、このお店の業績はどうなったでしょうか?1年後、粗利率が5%上がり、売上も回復しました。良かったですね。
過去のやり方だけにしがみついていては、未来はありません。
■今日のツボ■
- 改めて店舗の方向性を考えることで、業績は良くなる
- 昨年対比で考えるのではなく、目標比で考えると計画が達成しやすい
- 値上げをしても、それ以上にお店の魅力を伝えられればお客様は離れない
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