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日本よお前もか。トランプがキレて日本が米中覇権戦争で負ける訳

米国が呼びかけるタンカー防衛有志連合には参加せず、独自でイエメン沖に自衛隊を派遣する検討に入った日本政府。この対応について、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、「トランプには日本が米とイランを天秤にかけたように映る」とした上で、確実に日米同盟にヒビを作ることになると日本政府に対して警鐘を鳴らしています。

日本、イエメン沖に自衛隊を派遣は何がまずいのか?

皆さん、日本のタンカーが6月13日ホルムズ海峡付近で攻撃された事件、覚えておられますか?あの事件の後、アメリカは、「タンカー防衛有志連合をつくろう!と提案しました(7月9日)。7月19日、アメリカは60か国の代表を招いて、この提案を説明した。ところが、参加を表明する国は、まったく現れない。7月29日、ポンペオ国務長官は、「有志連合結成には時間がかかる」と発言。難航していることを認めました。

7月31日、ドイツが有志連合「不参加」を決定。8月5日、イギリスが「参加」を表明。8月21日、オーストラリアが「参加」を表明。結局、現時点で有志連合参加を表明した国イギリスオーストラリアバーレーンだけ。覇権国家アメリカが笛を吹いても、ほとんど誰も踊らない。アメリカのパワーも衰えたものです。

ちなみに私は、ずっと前から、「日本はタンカー防衛有志連合に参加するべきだ」と書きつづけてきました。理由は、

  1. 日本のタンカーを日本が防衛するのは、当然だから
  2. 日米同盟はとても大事だから(中国が尖閣に侵攻したら、日本一国では絶対勝てない。中国の軍事費は日本の5倍以上で、核大国である)
  3. 日本は、米軍への協力を増やすことで、軍事的自立にむかうことができる(日本がいきなり軍事的自立を宣言したら、米中を敵にまわしてしまう。アメリカは、中国の尖閣侵攻を容認し、次に沖縄もうばわれるだろう)

日本は、7月、8月、9月、10月と考えつづけ、どんな結論を下したのでしょうか?共同10月19日。

政府は中東のアラビア半島南部イエメン沖への自衛隊派遣に向け、本格的な検討に入った。複数の政府、与党関係者が18日、明らかにした。

政府は、イエメン沖への自衛隊派遣に向け、本格的検討に入ったそうです。ただし…。

イラン沖のホルムズ海峡の安全確保を目指す米国主導の有志連合構想には参加せず、独自に派遣する方向だ。
(同上)

米国主導の有志連合構想には参加せず」だそうです。なぜ、日本政府は、こんなややこしいことをするのでしょうか?日本政府は、友好国イランとの関係を悪化させたくないのでしょう。日本政府は、同盟国アメリカ友好国イランを天秤にかけて、「両方にいい顔をしよう」と考えたのでしょう。しかし、その目論見どおりにはならないでしょう。

アメリカが「タンカー防衛有志連合をつくろう!」と呼びかけた。ところが60か国に呼びかけて、応じたのはイギリス、オーストラリア、バーレーンのたった3か国だった。結果、アメリカの影響力低下が世界に知られてしまいました。ここで日本が参加を表明すればアメリカから感謝されたでしょう。

AIIB事件の時、アメリカの同盟国は、ほとんど全部裏切って中国主導「AIIB」への参加を決めた。ところが日本だけは入らなかった。それで、日米関係は、劇的に改善されました。

ところが、今回日本は、「イエメン沖に自衛隊を派遣するけれどアメリカ主導の有志連合には入らない」。少なくとも現時点ではそういうことみたいです。これ、アメリカから見ると、「全然ありがたくない」ですね。日本は、アメリカとイランを天秤にかけた。そして、アメリカからは、「我が国よりイランをとったのだな」と見えるでしょう。まったく愚かです。

中国が尖閣に侵攻した。その時、日米関係が悪化していればアメリカは日本をたすけないでしょう。そうなれば、尖閣は確実に奪われます。なんといっても、中国の軍事費は日本の5倍以上。むこうには、日本を破壊しつくせるだけの核兵器がある。そう、アメリカとの関係は、日本にとって「死活的に重要なのです。

イランは、確かに日本の友好国。しかし、イランとの良好な関係が、「尖閣有事の際何か役にたつのでしょうか?日本は、米中覇権戦争がはじまった2018年、日中関係を大いに改善し、アメリカをイラつかせています。トランプは、再び「日米同盟破棄」に言及するようになった。そして今回、日本政府は、アメリカとイランを天秤にかけて「イランを選ぶ」という愚かな決断を下しました。この行動は、「決定的」ではないにしろ、確実に日米同盟にヒビを作ります

日本はかつて、ナチスドイツの同盟国になるという愚かな決定を下して完敗しました。今の政府も、1930年代、40年代初めと同様迷走しています。日本の政治家の皆さんは、是非『米中覇権戦争の行方』、『中国に勝つ日本の大戦略』の2冊を熟読して、日本の大戦略を思い出してほしいと思います。このままだと、「知らないうちにまた敗戦」になってしまいます。

image by: 防衛省 海上自衛隊 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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