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探偵が特定した、しつこい勧誘電話で「NTT」を名乗る業者の正体

以前掲載の「探偵が突き止めた、時折ポストに入れられている『NTT』チラシの正体」で、高齢者や情報弱者を食い物にする業者の正体を暴いた、現役探偵の阿部泰尚(あべ・ひろたか)さん。今回阿部さんは自身のメルマガ『伝説の探偵』で、NTTを名乗り勧誘電話をかけてくる業者がなぜ顧客情報を有しているのかを探るとともに、しつこい電話を止める方法をレクチャーしています。

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NTTを名乗る業者の怪

「NTTです。基本料金が変わったので、担当者の方をお願いします」
「NTTです。来年オリンピックが開催されることに伴って、サイバー攻撃が増加すると言われています。つきましては、光回線のセキュリティを確認したいのですが」

NTTと名乗る営業電話は、個人宅であっても中小企業であっても、年中掛かってくる。中には、強引なものもあって、FAXで申込書を送りつけてきたり、地域を巡回点検しているといって、訪問してくるものもある。

NTTは個人情報などは代理店には渡していないという。しかし…。

個人情報は漏れるもの

残念ながら、個人情報などは漏れるものだと考えておいたほうがいい。

例えば、神奈川県庁は個人情報などを含む行政文書が入ったハードディスクが処理業者に在籍する男に転売されるという事件が起きたばかりだ。この業者は、防衛省や裁判所も顧客だという。

神奈川県庁のHDD転売で行政文書が大量流出に「他人事じゃない」

他にも、NHKの受信契約や集金を請け負っていた会社の社長が特殊詐欺の実行役と内通していたとして愛知県警に逮捕されている。

企業においても顧客情報が漏れるというニュースは毎週のように報道されており、個人情報は漏れてしまうものだと考えておいたほうが、リスク回避になるだろう。

NTTグループ問題

私は、営業の電話で「NTTですと名乗る業者を特定した。この業者は、「NTT東日本ビジネスソリューションです」と確かに名乗るのだ。電話の内容は、下記の通りであった。

「営業の電話ではない」
「NTTというのは確かです」
「オリンピックでサイバー攻撃が増えるので、セキュリティのチェックのために訪問しています」
「訪問は20分程度です」
「別会社(電話をかけている業者)の者が伺います」

実際に訪問してくると、UTMという高額なセキュリティ機器を勧める営業であった。

この営業手法についてNTTに確認すると、当初はそのような業者は一切認めていないというが、この業者の会社名を伝えると態度が一変した。

なんと、この営業電話は、NTTの代理店ではなく委託業者であるというのだ。そのため、「NTTを名乗っても問題はない」のだそうだ。

調べてみると、確かにNTTグループに入っている会社であったのだ。

情報は共有されている

「ということはNTTの情報に基づいて電話してきているのか?」

NTTの担当者にそう質問すると、

NTT 「そういうことになります」=“情報を渡しています”。

そもそもの約款では、そういうことになっているとのことであった。

しかし、NTTグループに属していようが、実際の社名は全く別であり、そこが、「NTT」を名乗って電話をかけてくること自体、多くのユーザーが違和感を覚えるだろうし、まさか、自分の情報が業者間で共有されているとは思わないであろう。

しかも、セキュリティのための確認作業のはずが、パソコンもモデムも特にチェックすることなく、UTM装置のパンフレットと申込書だけを持っての営業をしてきたら、NTTを騙った詐欺業者だと思ったとしても不思議はない。

いや、業者はNTTと電話で名乗りつつ、自社名を訪問業者として伝えていた。となれば、NTTがこうした装置を付けるように勧めているのだと勘違いして、契約してしまう個人や会社もあることだろう。

これでは、NTTが小会社にNTTと名乗ることを許し、ユーザーに動機の錯誤を与えるような営業行為を推奨しているとはいえないだろうか。

NTT代理店問題

ネットで「NTT 代理店」と調べると、「営業 しつこい」とか「上手な断り方」というキーワードが出てくる。つまりは、NTTの代理店からの営業電話が酷いのだ。

私は探偵として相続問題に関わることが多いが、高齢の方がほとんど使わないネットやそれに伴うセキュリティ機器が多重についているという場面にもよく出くわす。ほとんどは、「NTTからのお知らせ」だと勘違いして、余計な契約をさせられたり、余計なオプションをつけられてしまったというものだ。

例えば、マンションなどの集合住宅に住んでいると、「集中工事のお知らせ」などのチラシがポストに投函されていて、訪問予定日まで書いてあるものもある。こうしたチラシを点検の折のお知らせだと勘違いしてしまうケースもある。

営業熱心なのは仕方ないことかもしれないが、客が勘違いするような説明をしたり、重要な説明を省くことはルール違反と言えよう。

この状態をNTTが放置しているとは言わないが、少なからず積極的ではないし、無法状態になっているといえる状態だ。

営業電話を止める方法

電話の契約やインターネット回線の営業など、しつこい営業電話や詐欺的な電話は止めることができる

NTT東日本でも西日本でも、「勧誘停止登録」というものがある。これに登録するだけで、委託業者や代理店に通知が行われ、営業などの電話は原則禁止ということになるのだ。

ただ、NTTの担当者曰く、

「それでも代理店ではない業者などや他社の電話勧誘は止めることができません」

この対応から、NTT自体がこうした営業は止める気がないのだろうと思うのだ。

例えば、そもそもこうした営業電話をNTTが止めたければ、契約時の初期状態が勧誘停止であればいいのだ。そうすれば、勧誘などを承諾したユーザーにだけ、営業の電話がかかってくることになる。

また業者をよく監督するのであれば、最近契約内容が変わった個人や法人にどのような業者からどのような営業行為を受けて契約が変更になったのかNTTが調べればいいのだ。

そこで、もしも、欺罔行為や動機の錯誤と言えるような営業方法などがあれば、厳しく対応をすればいい。ところが、こうしたことがほとんど行われていない

結果、NTTは業務効率という名の下、ある種、何でもありな代理店や委託業者に営業の電話を行わせ、責任逃れをしているとも言える。

通信インフラの担い手として、NTTの責任は重大 だ。

編集後記

年末年始は実家で過ごすという方も多いと思います。

こうした社会信用力の高い企業名を使って、権威的な営業を行う手法は、多くの場合、「信用することが美である年代の高齢者が狙われます

以前にマンションやアパート全体が工事をするように見せかけてチラシを投函する営業方法を取り上げた後、不要なオプションや工事費用などを請求されていた高齢夫婦がいたことも確認しています。

探偵が突き止めた、時折ポストに入れられている「NTT」チラシの正体

これも、帰省した家族が、私の記事を読んでいて、念のために確認したら発覚しました。

私はその報告を受けた時、もう1つ気をつけることがあるとお話しさせてもらいました。それは、騙されたという出来事があった後、高齢者の方が自信を失って、気持ちがとてもネガティブになってしまうということです。ですから、よく心のケアをして、よく連絡を取るようにしてあげてくださいと話しました。

詐欺は他にも多くありますが、詐欺師を観察していると、持てる者から取ればいいという感覚が強く、騙される方が悪いとか、ゲーム感覚であったりします。

高齢者の場合、リタイアのために貯めた資産は、ある意味で生命に近いところがあります。これを奪うのは、ある意味生命を奪うのと変わりはありません。

大手企業や信頼性の高い企業、公の事業とも言えるインフラを担う企業は、事業責任は重大です。ですから、NTTにしても、勧誘営業を登録しなければ止められないのではなく(推奨するのではなく)、そもそも禁止にしてもらいたいと思います。

また、こうした営業行為も特殊詐欺なども多くは電話が利用されますから、効果が高い通話録音ができる電話機を普及させる対策を関連する行政機関には進めてもらいたいと思います。

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image by: Shutterstock.com

阿部泰尚この著者の記事一覧

社会問題を探偵調査を活用して実態解明し、解決する活動を毎月報告。社会問題についての基本的知識やあまり公開されていないデータも公開する。2015まぐまぐ大賞受賞「ギリギリ探偵白書」を発行するT.I.U.総合探偵社代表の阿部泰尚が、いじめ、虐待、非行、違法ビジネス、詐欺、パワハラなどの隠蔽を暴き、実態をレポートする。また、実際に行った解決法やここだけの話をコッソリ公開。
まぐまぐよりメルマガ(有料)を発行するにあたり、その1部を本誌でレポートする社会貢献活動に利用する社会貢献型メルマガ。

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