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潰えた改憲の夢。2020年に安倍政権が倒れてもおかしくない理由

先日掲載の記事「見えぬ景気回復の兆し。アベノミクスが6年9カ月間で使った無駄金」で、安倍政権の経済政策を「全くの無駄に終わった」と厳しく切り捨てた、ジャーナリストの高野孟さん。高野さんは今回、メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、そんな安倍首相周辺で囁かれる「解散総選挙」の可能性について検証するとともに、さまざまな要因を分析しつつ2020年の安倍政権の命運を占っています。

※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2019年12月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

安倍政権がいつ頓死してもおかしくない2020年──景気回復なし、早期解散なし、改憲発議なし……

2020年の政治は、安倍政権の頓死がいつあってもおかしくない、慢性的な危機状態に入る。頓死の原因となりうる最大のものは経済で、前号「見えぬ景気回復の兆し。アベノミクスが6年9カ月間で使った無駄金」でも述べたように、アベノミクスの終焉がいよいよ誰の目にも明らかになる中で、それでも失敗を認めたくない安倍晋三首相が「異次元金融緩和」の是非結末を総括もしないまま、今度は「異次元財政緩和」に飛び移ろうとするサーカスを演じようとして地上に落下する、というようなことである。

1月解散はない

それでも安倍首相周辺では、来年1月早々に通常国会召集、大型補正予算を成立させて衆院を解散し、2月総選挙で勢いを取り戻すという構想が繰り返し検討された。それは、政局テクニック的にはあり得なくはない話だが、何よりもまず、政権の蘇生という自分勝手な都合以外に何の大義名分もなく、国民にとっては只の大迷惑でしかないので誰も喜んで投票に行くはずがない。そういう無意味な解散はそもそもやるべきではないし、その根拠を天皇の国事行為を定めた憲法第7条第3項に求めるのは間違っている

しかも「お花見疑惑」とそれを早々に幕引きしようとする安倍首相の卑劣な態度が国民の間に強い反発を引き起こし、来年になっても到底鎮まる気配がないので、その中で無謀な選挙を打てば大幅議席減もあり得る

そこでこのような強行突破策は取り下げられ、わざと1月中旬に首相の中東訪問を設定し、それを理由に「通常国会を1月20日に招集する」方針を固めた(19日付毎日)。会期は150日間なので6月17日まで。翌18日からは東京都知事選が始まり、その後は東京五輪モードに入るので、会期延長の可能性は低い。おまけに会期中の4月には習近平中国主席の国賓来日があり、終わるとすぐに5月大連休。会期末直前の6月10~12日はトランプ米大統領がホストを務める主要国サミットがキャンプデービッドで開かれるので首相は不在で、実質的な審議時間はかなり少なくなる

五輪後解散も難しい

このため、1月早々のタイミングを逃すと、五輪後まで解散をテコに政権を再浮上させる機会はほぼ絶無で、やるとすれば五輪後しかない。「五輪後であれば、世の中がワンチームみたいな雰囲気になって、なかなか自民党批判にならない」ので解散がやりやすいのではという自民党閣僚経験者の意見もあるが(上述毎日記事)、それは甘い見通しである。そこに至る来年前半で、

──等々、心配事は山ほどあって、どれ1つをとっても政権が躓く原因となりかねない。それらを全てピョンピョンとクリアして五輪後を迎えることが出来たとしても、さあどうだろうか、そこで世の中が「ワンチーム」となって改めてこの政権を支え抜こうという雰囲気で盛り上がっているなどということがあり得るのだろうか。話はむしろ逆さまで、その時には「もう安倍首相はウンザリ」という世の中の雰囲気が濃くなっている可能性の方が大きい。

となると退陣か?

さて、五輪後まで安倍政権が続いていたとして、そこで彼が直面するのは、

という選択だろう。私の見るところ、その時点で彼には、もう一度奮い立って強行突破を図るだけの体力・精神力は残っておらず、また自民党全体に対しても公明党に対しても、強烈な求心力を発揮して両党を解散・総選挙という試練に引きずり込むことが出来そうにない。従って前者の可能性はほぼ絶無で、後者に傾く

その時に、それでもまだ少々とも余力を残していれば、無難な岸田文雄あたりを後継指名してキングメーカーとしての地位を得ようとするのだろうが、その力も残っていなければ、第1次政権の末尾と同じように、だらしなく投げ出す格好となり、岸田と石破茂を軸とする繰り上げ総裁選に自民党の行方が委ねられることになるのだろう。

いずれにせよ、このような展開では、安倍首相の夢である改憲は政治日程に上らず、挫折する。これは鶏と卵の関係で、来年前半の政局を通じて安倍首相が改憲発議への道を少しでも前進させられるのであれば、それをテコとして政権の延命を図ることも出来るかもしれない。しかし相変わらず改憲の具体的な道筋を示せないまま、口先だけで譫言(うわごと)のようにそれを唱えているだけでは、逆に政権を終わらせる導引となるのである。

野党共闘の行方は

来年半ばには訪れるかもしれない安倍政権の頓死が、野党による政権交代の機会となるのかどうか。現状ではその可能性は極めて少ないが、いつでもそれに対応できるよう備えるのが野党の務めだろう。

このところ、立憲民主と国民民主の両党の合流」という話が盛り上がっていて、それはそれで結構なことだとは思うけれども、やはり中心問題は理念と基本政策における対自民のオルタナティブをどう明示出来るかである。それを抜きにしての一緒になるとかならないとかの話が切羽詰まっているのは、政党助成金の半分が1月1日を基準とした政党の議員数によって配分されるという事情によって煽られているだけのことで、国民とは何の関係もない(なおもう半分は直近の選挙での得票率で配分される)。

私は、何はともあれ数を増やして巨大な野党を作って2大政党制の原理に従って政権交代を実現するという観念には、今は不賛成で、与野党ともがその時々の直近の課題を軸に連立政権構想を掲げて政権交代を目指すのが現実的ではないかと思う。

従って、現状での立憲民主と国民民主の「合流」は、単なる数合わせに終わるしかないことが見えているが故に賛成でなく、改めてリベラル・サイドの理念と基本政策を打ち立てた上でそれに賛同する個々人の再結集が必要だと思っている。

それが、安倍政権がいつ頓死してもおかしくない2020年政局に間に合うのかどうか、はなはだ心配ではあるけれども、政治はいつも意外性の連続。そうなったらなったで何とかなっていくものだと思い切るしかないのかもしれない。

【資料】2020年の主な予定

image by: 首相官邸

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早稲田大学文学部卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。現在は半農半ジャーナリストとしてとして活動中。メルマガを読めば日本の置かれている立場が一目瞭然、今なすべきことが見えてくる。

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