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韓国の絶望。トランプの年明け北朝鮮攻撃で瀕する国家滅亡の危機

先日掲載の「沈没寸前の韓国と北。国際交渉人が憂う朝鮮半島の終わりの始まり」で、文在寅大統領と金正恩委員が直面する「恐ろしいシナリオ」の内容を克明に記した、元国連紛争調停官で国際交渉人、さらに地政学リスクアドバイザーの顔を持つ島田久仁彦さん。島田さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』で、ホワイトハウスやペンダゴンの情報筋から得た情報をもとに、「米国による北朝鮮への年明け早々の攻撃」の可能性を示唆するとともに、韓国が自ら招いた「国家存亡の危機」についても詳述しています。

瀬戸際の朝鮮半島情勢~北朝鮮が国際社会に向けて示す“クリスマスプレゼント”と2020年の行方

今週、中国・成都で第8回日中韓首脳会議が開催されました。リーマンショックに一致団結して対応するために2008年に始まった取り組みですが、その後、日中間のいざこざ(例:尖閣諸島問題や靖国神社参拝問題など)の影響や、日韓関係の悪化(例:従軍慰安婦問題、徴用工問題など)の影響を受けて、20年で8回のみの開催になっています。

米中貿易戦争の激化や先の読めない国際情勢、そして北朝鮮問題・朝鮮半島情勢が緊張を高める中、3か国首脳はより密接な協調の必要性を確認し、来年はすでに韓国での開催を決めています。

実質的な中身があるか否かは別として、半ば運命共同体ともいえる日中韓の首脳が定期的に集うのは、仮にセレモニー的な性格であったとしても望ましいと考えます。

日中韓の3か国間では、諸々、非常に込み入った問題が山積しており、必ずしも友好的な雰囲気が満ち溢れているとは言えない中、3か国の首脳が一堂に会し、そして成都での首脳会談に先立って北京では、中国の最高権力者に上り詰めた習近平国家主席と日韓首脳が会談しました。

それを可能にしたのは、とても皮肉なことに、緊張が続く北朝鮮をめぐる朝鮮半島情勢です。ここには、もちろんプレイヤーとしてトランプ大統領のアメリカが存在しますが、予測不可能なアメリカの出方と、“クリスマスプレゼント”に例えられた北朝鮮からの反応の予測は、この3か国を久々に集わせるきっかけとなりました。

今年に入ってから、米朝間の実務者協議が実質的に頓挫し、何一つ目立った成果が得られないことに業を煮やした北朝鮮は、一方的に米国に対して、【年末までにアメリカとしてどうするのか回答せよ!】との要求を突きつけています。ただ、既知のように、北朝鮮からの要求は荒唐無稽な内容であり、とても来年大統領選挙を控え、国内では弾劾に面しているトランプ政権が受け入れられる内容でないことは明らかです。

これまで、トランプ大統領のred lineを見極めるべく、国連安保理決議にギリギリ違反とならないだろう短距離弾道ミサイルや潜水艦からの弾道ミサイルの発射実験を繰り返して挑発を繰り返していますが、トランプ大統領は、【自分と金正恩氏との間には信頼関係があるので、北朝鮮はばかげたことはしないだろう】と表面的には意に介さないフリをしています。

しかし、実際には、ホワイトハウスやペンダゴンの情報筋によると、大統領は堪忍袋の緒が切れる寸前の心理状態になっており、もし、“クリスマスプレゼント”の内容がICBM(長距離弾道ミサイル)に関係するような実験や発射である場合、金正恩氏と北朝鮮を見限り、ずっとアメリカが思いとどまってきた北朝鮮への攻撃が年明け早々実施される可能性が高くなります。

余談ですが、ブッシュ(子)政権時にもそうであったように、支持率が落ち込んだり、何かしら不都合があったりする場合、率の起爆剤となるのは、悲しいことに大義名分を作りあげてでも実施される攻撃です。

今回のケースでは、いくつかの要因が絡み、これまでにはないほど北朝鮮への攻撃機運が高まっています。

一つは、【すでに米国上下院ともに、北朝鮮の核とICBMを国家安全保障上の脅威とみなし、武力行使を含む厳格な対処を大統領に委ねている】点です。

2017年から2018年にかけて、北朝鮮が度重なる核実験と、衛星の打ち上げと称したミサイル実験を繰り返し、2018年には北極星15号と名付けられた、アメリカ全土を射程距離に収めるとするICBMが完成したとの見解が強まりました。それを受けて、世論も日に日に【北朝鮮攻撃やむなし】との風潮に流れ、それに後押しされる形で、議会も北朝鮮をアメリカの国家安全保障に対する脅威と認定して、ヒットリストに入れました。

つまり、トランプ大統領とすれば、現在、impeachmentに関わるいざこざはあるにせよ、議会からのお墨付きをベースに、攻撃に踏み出す障壁はすでに取り除かれているといえます。

二つ目は、【米韓関係の悪化がもたらす、アメリカによる韓国切り】です。

このメルマガでも再三お話ししていますが、米朝首脳会談のきっかけづくりに文政権は貢献しましたが、その後も【米朝間の仲介役】を自任して、アメリカと協議することなく、勝手に世界中を飛び回り、“景気のいい”ことばかりを吹聴して回ったことにトランプ大統領が激怒し、それ以降、アメリカは安全保障面でも経済面でも韓国を全く信用していません。そこに止めを刺したのが、昨今の韓国による日韓のGSOMIAの一方的な破棄通告でした。駐韓米大使(ハリス大使)や国務省の高官、そして元国家安全保障問題担当補佐官であったボルトン氏、そしてポンペオ国務長官などからの要請に耳を課さずに通告に踏み切ったことは、アメリカに異例の対応を取らせることになってしまいました。経緯と結果はすでにご存じの通りですが、これでアメリカとしては、【北朝鮮への軍事攻撃に出た際に生じる同盟国韓国への被害の可能性を考慮しなくても済むようになり、比較的楽に攻撃命令を下すことができる状況になっているといえます。

米韓関係の悪化は2015年の米大使館(ソウル)への暴徒侵入事件と大使殺人未遂事件に端を発していますが、その後、トランプ政権の下、大使館員の家族をアメリカに帰還させる手続きを取ったり、韓国に進出しているアメリカ企業に対して“安全保障上の勧告”を出したりして、American interests and livesの引き揚げを進めています。

そして、在韓米軍の撤退が近日中に現実になることで、アメリカは韓国を安全保障上切るという選択肢を取ることになりそうです。表向きは、在韓米軍への経済的な貢献(支出)を大幅増にする要求を投げかけて、それを拒否させることで、駐留することはできないとの結論を得て、撤退に舵を切ることになるようです。

三つ目は、【対立しているはずの中国とロシアが、北朝鮮をめぐる軍事行動には参加しない】という見通しです。

米中は貿易戦争をはじめ、南シナ海での軍事的な緊張、アフリカ大陸・中東地域での経済的な権益の争いなどで対立関係にありますが、中国にとっては国境を接し、安全保障上の脅威を感じるはずの北朝鮮における有事には、今回は軍事的には非介入のようです。

ロシアも同じような感じです。これまでに北朝鮮エリートはロシアで教育を受け、軍事技術もロシア(旧ソ連)から提供されていましたが、今はその流れも止まり、ロシアは北朝鮮からの大量の難民を警戒して国境線をすでに閉鎖しています。

表立っては米中、そして米ロは多方面でぶつかっていますが、どうも北朝鮮問題では、外交上の駆け引きはあるものの、北朝鮮有事の際の中ロ不介入と、戦後の復興プランへの中ロのコミットメントという点ですでにアメリカも合意しており、
仮にアメリカが攻撃を行った場合には、外交的な非難はしても、軍事的に北朝鮮の後ろ盾にはならない、というのが方針のようです。

軍事的な衝突に発展することを避ける狙いと、対米外交でのポジション取りという観点から、北朝鮮の非核化をめぐる国連安保理決議の緩和を訴える立場を取りますが、どこまで本気でそれを押し通すのかは不透明です。

ゆえに、総合的に見れば、アメリカが北朝鮮を攻撃するか否かは、あとはトランプ大統領次第ということになるのではないかと見ています。

では、その場合、朝鮮半島はどうなるのでしょうか。

もし、軍事的な攻撃が北朝鮮に対して加えられるのであれば、韓国は間違いなく、北朝鮮からの大砲やロケット弾による集中攻撃を浴び、首都ソウルは火の海になると思われます。もちろん、アメリカが核兵器を使用するような極限の対応をした場合は違った結果がもたらされることになりますが、韓国は無傷ではいられないでしょう。ただし、この場合、もし生き残れば、韓国はまだ国として存続できるかもしれません。

ありえないシナリオだとは思いますが、仮にトランプ大統領側が大きな譲歩をして、北朝鮮の核開発を、ICBMを破棄すればという条件の下、見逃すようなことになれば、北朝鮮のバックにいる中ロのサポートを得て、北朝鮮による朝鮮半島南北統一が実現してしまうかもしれません。

その場合、以前にもお話ししましたが、現在の軍事境界線(DMZ)である北緯38度線は、対馬海峡辺りまで南下し、北東アジア情勢とパワーバランスは大きく変わることとなるでしょう。

韓国にとって、もしかしたら逃げ道があるとしたら、対北朝鮮、対日米方針の大転換が急に進むことぐらいでしょうか。しかし、文政権下では考えづらいですし、来年4月に総選挙を控える政治日程的にも非現実的でしょう。

懸念事項があるとすれば、韓国内そして韓国軍内ですすむ反文政権の動きです。行き着くところまで行けばクーデターにまで発展しかねない緊張状態になっているそうですが、このハンドリングを間違えたら、政権どころか、国家としての存亡も危ぶまれる状態となるかもしれません。

そして、1997年来久々で、かつ最悪と言われる経済・財政危機が韓国経済を襲っていることも大きな懸念です。欧米における韓国企業の締め出しと韓国内での欧米資本の引き揚げ、国内の若年層失業率の悪化、日本やアメリカ、欧州との貿易上のいざこざなど、安全保障面以外の側面でも大きな爆弾を抱えているのが、今の韓国の状況と言えます。

どの起爆装置がトリガーとなるかは分かりませんが、朝鮮半島にある韓国も北朝鮮も、それぞれが置かれている状況はこれまで以上に緊迫しているといえるでしょう。

その半島のすぐ近くに位置する日本。今は韓国との関係は最悪の状態と言わざるを得ませんが、朝鮮半島有事の際には、日本も恐らく無傷では済まないでしょう。徴用工問題を始めとして、2020年2月ぐらいに一気に火を噴きそうな案件が座礁している中、どのように日本国の国家安全保障を確保できるのかについて、本気で準備をしておく必要があると考えます。

2020年は、我々が住まう北東アジア地域はもちろんのことながら、米朝の緊張がどのような帰結を迎えるのかによっては、東京オリンピック・パラリンピックどころではない“現実”を我々に与えることになってしまうかもしれません。

各国には節度ある態度を望みたいと思います。

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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