今やひとつのブームとして定着した「立ち食い」「立ち飲み」の店舗ですが、その中には椅子が備え付けられているのに「立ち」を強調しているお店も少なくありません。一体なぜ!?今回の無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』では著者で繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさんが、その謎解きを試みています。
椅子のあるお店なのに、「立ち食い」の看板を掲げているのはなぜか?
そば・うどん店や酒屋の角打ちのような、「立ち食い」「立ち飲み」の歴史は結構古いのです。日本における“立ち”の起源は、江戸の屋台だと言われています。そば、酒、寿司、天ぷらが、“立ち”の屋台で供されていました。その文化が見直され、いまやブームのようになっています。フレンチ・イタリアンの立ち食いが話題となり、ステーキ店や焼肉屋が大盛況です。新規で開店する居酒屋や寿司屋にも“立ち”の形式が増えています。
“立ち”にすることで店舗面積が少なくて済み、経費が節約できるのです。しかも、ひとりのお客さまが占めるスペースが小さく、たくさんのお客さまを入れることができます。また、お客さまの滞在時間が短くなるので、回転率も高くなります。経費が掛からない分、料理やお酒を安く提供できるので、アピール力も高くなります。お客さまからすれば、“立ち”の看板があることで、かなり敷居が低くなるのです。つまり、気軽に“立ち寄る”ことができるのです。
さて、話は変わりますが、こうしたお店に行って、気になることがあります。“立ち”のはずなのに、なぜか椅子があるお店。結構たくさん存在します。大多数の人は気にしないでしょうが、考えてみると不可解ではないでしょうか。
以前、どこかのお店で聞いた記憶があります。
「お客さんに椅子が欲しいと言われた」。
あまりにも単純。あまりにも素直。お客さまの要望にあっさりと応えてしまった結果なのです。しかし、他のお店も同じ理由かというと、そうでもありません。私が経験上知っている理由を挙げてみます。
1.女性や高齢のお客さまを気遣い、一部に椅子を置いたら、他のお客さまもその席ばかりに座るようになったので、すべてを椅子席にした。
2.立ち食いにすれば、お客さまがたくさん入り、回転率も上がると考えたが、思ったほどではなかったので、サービスを向上する意味で、椅子を置いた。
3.最初から椅子はあるが、一部を取り払い、“立ち食いブーム”に乗っかった。
4.椅子はあるが、小さなお店なので、安くて気軽な雰囲気をアピールするために、“立ち飲み”という看板を出してみた。
5.古くからの常連さんが高齢化したので、座れるようにした。
このように理由はさまざまで、決まった答えはないようです。いずれにしても、椅子があるのに堂々と「立ち食い」の看板を出しているのは、非常に興味深いことです。
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