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環境問題を考えて見えてきた高齢者が構築すべき「消費スタイル」

今月行われた、世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」には、高校生活動家グレタ・トゥーンベリさんやトランプ大統領が出席し注目を集めました。持続可能な社会の構築のために多くの問題が議論されていますが、個人は何を基準にどんな行動を取っていけばいいのでしょうか?メルマガ『j-fashion journal』の著者で、ファッションビジネスコンサルタントの坂口昌章さんは、消費行動は企業を評価することだと認識し、スケールダウンも意識すべきと主張。そうした生活こそが高齢者には向いていて個人の幸福にも繋がると、持論を展開しています。

環境問題と個人の生活

1.企業の利益と個人の幸せ

日本で就職すると、個人より会社を優先するように周囲から求められる。個人より会社は上位にあり、上位の利益を優先せよ、ということだ。ところが、企業の利益を守るために、社員が情報の隠蔽や偽証をすると、企業より上位の国が損害を受けることもある。そして、個人が国から処罰を受ける。企業の利益を守るために、個人を犠牲にしたにも関わらず、更に上位の国が個人を罰するのだ。

もし、個人の利益を優先するなら、国の法律を犯すのはリスキーだ。しかし、社員が国のために企業に損害を与えることも許されない。社員である以上、所属する企業と敵対すれば昇進も昇給も望めない。というより、企業から追い出されるに違いない。

この問題を解決するには、2つの方法がある。第1は、企業が国を裏切らないこと。犯罪を犯さないこと。第2は、個人が企業に依存しないこと。退職しても、すぐに、次の会社に就職できて、法律を遵守したことがプラスに評価されれば問題はない。あるいは、会社に所属せずに個人で仕事ができれば問題ない。

更に、個人と企業と国の利益に合致していても、地球全体で考えるとマイナスになる場合もある。例えば、環境破壊だ。国は企業が海外進出先で環境破壊しても問題にしない。進出先の新興国も経済成長を優先し、環境基準も甘い。そして、地球は汚染される。これをすべて解決する方法はあるのか。

2.無限の成長を望むのは罪か

企業の理想は無限の成長だ。無限に成長するためには、競合他社を潰し、そのビジネスを吸収していく必要がある。競争原理で動いていくと、最終的には数社しか生き残れない。しかし、独占が進むと、独占企業だけが利益を搾取し、市民の利益を圧迫してしまう。そこで独占禁止法が登場する。

競争を禁止すると、今度は個人も企業も社会も停滞する。ルーチンワークだけに終始し、イノベーションも生まれない。地球が許容する一定の枠組みの中で競争することが必要だ。もし、一部の国や企業だけが成長を続ければ、その他の国や企業は利益を得ることができなくなり、貧困や飢餓を生み出すだろう。

そもそも、人口が無限に増え続ければ、どこかで限界が来る。ここでも、地球規模に合わせた制限が必要になる。これらの制限を強権的に発動すれば、人々は人権侵害を訴えるだろう。しかし、成長だけを追求すれば、人間の生存が危うくなる。

同様のことは、個人の生活にも共通する。食欲に負ければ肥満し、最終的には命を縮めてしまう。そして、ダイエットを行う。ダイエットを成功させるには、自己管理が必要である。しかし、自己管理を強制することはできないのだ。これは個人、企業、国にも共通している。

3.成長段階と環境保護

人類の歴史は、貧しい時代からスタートして、次第に産業が発展し、人々の生活も向上してきた。人口が少なかった頃は、自然が持つ浄化機能で十分だった。環境問題は存在しなかったのだ。

世界は同時に発展したわけではない。最初に発展した先進国で環境問題が発生し、次第に新興工業国にも拡大していく。やがて、環境問題は地域的な問題から地球規模の問題に変化していった。

どの地域も、最初に経済発展を目指し、経済発展の結果、環境問題が起きる。そして、環境問題への取り組みも、経済発展の段階によって異なる。従って、先進国と新興国を同じ基準で環境保護を強制するのは難しい。しかし、既に環境問題は地球規模に達しており、猶予はできない。

我々は今、ここにいる。問題は分かっている。しかし、解決策は難しい。経済成長も捨てることはできない。しかし、このまま突き進めば、人類全体の生存が危うい。そして、経済格差が進み、貧困が増える中で、我々個人は自分の生活を守らなければならない。その時に環境問題を考える余裕はあるだろうか。

4.我々が目指すべき生き方

個人の生活で環境を考える場合、なるべく資源やエネルギーを使わず、格差が広がらないような生活を心がけることだろう。例えば、大量生産大量販売システムから外れる。大量生産大量販売が可能なのは、資本力のある大企業である。この仕組みに飲み込まれると、大企業だけが繁栄し、中小企業や零細企業は淘汰される。そして格差が拡大する。

大手スーパーよりも、地元の商店を選ぶ。大手スーパーでも、産直の商品を選ぶ。気を付けたいのは、品質が良くて安い商品という理由で、商品を選ばないことだ。むしろ、外見よりも中身を重視する。大きさや形が不揃いだったり、色づきが悪くても、味や栄養が同じならば、それらを食べるようにしたい。廃棄されるリスクを考えるならば、賞味期限に近いものを選ぶことも重要だ。必要以上に新しいものを選ぶことは、結果的に廃棄物を増やすことになる。

社会活動、ボランティア活動、社会的な企業に参加する。あるいは、環境や人権を守る企業を支持すること。買い物というのは、所有するための手段だけでなく、企業を評価する行動であることを認識したい。

身の丈に合った生活スタイルを確立する。なるべく資源を使わずにスケールダウンした生活を心がける。余分なモノは買わないし、買ったものは長く使う。最近流行している断捨離の精神も重要だ。プライスレスなモノやコトを大切にする。貨幣経済に依存した楽しみではなく、内面を豊かにすることを考える。

こうした生活スタイルは、若者よりも高齢者に向いているだろう。今後の時代は、高齢者が新たな消費スタイルを構築していくべきである。効率より真の豊かさと個人の幸福を優先したい。

■編集後記「締めの都々逸」

「良くて安いは どこかが無理よ 良けりゃ 高くも買っとくれ」

「お客様は神様」という教えは、サスティナブルではありません。お客様が暴君になれば、販売員たちは滅びてしまいます。お客は神様ではありません。お金を払うのは、それに見合うだけの商品を受け取るためです。商品を受け取らずにお金を払えば神様と認定しても良いのですが。

売る方と買う方は対等だと思います。どちらかが威張るというのがおかしい。偉そうな寿司屋も嫌いですが、変に通ぶってうるさい客も嫌いです。互いに謙虚にいきましょうよ。それが世界に平和を招きます。(坂口昌章)

image by: Shutterstock

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