自殺や殺人事件があった物件については、重要事項説明書に「心理的瑕疵」と記載する告知義務があります。では、孤独死の場合はどのような扱いになるのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、日本賃貸住宅管理協会の調査結果を引きながら、どこからが心理的瑕疵に当たるかを考察しています。
「孤独死」は重要事項説明書に記載する「心理的瑕疵」?
こんにちは!廣田信子です。
宅建業法では、「取引中に知りえた物件の心理的瑕疵については重要事項説明書に記載し買主に告知しなければならない」とされています。「心理的瑕疵」とは何を言うかですが、一般的に、その物件で「自殺」や「殺人事件」があったことをいいます。いわゆる「いわく付物件」、「事故物件」とされるものです。
では、どこまでが「心理的瑕疵あり」で、どこからが「心理的瑕疵なし」と思われますか?「自殺」や「殺人事件」は分かりやすいですが、では「孤独死」はどうかです。「孤独死」そのものの定義がなく、しかも、「自然死」が発見さえるまでの期間がどのくらいだったら「孤独死」というかの定義もはっきりしません。
私は、一定期間以上発見されず、周辺が異臭等の異変に気づき、警察に立ち会ってもらって死亡を確認したというものは、「孤独死」として、きちんと「重要事項説明書」に記載すべきことだと思います。だからこそ、分譲マンションでも、資産価値の維持のためには孤独死を出さない、(死後3日以内には発見される)取り組みが必要だと言っているのですが、「孤独死」は、「心理的瑕疵」に当たらないから、重説に書く必要はないんだと主張される方もいます。
そういう方には、「ご自身が高いお金を出して購入したマンションが、後から、実はこの部屋では孤独死があって発見までに1か月以上たっていたので消毒が大変だった…と聞いても、発見が遅れただけで「自然死」なんだから問題ない…と納得しますか?」とお聞きしたいです。
分譲マンションの売買で、孤独死の発生をどう扱っているか調査したものがないのですが、昨年末、日本賃貸住宅管理協会が、「第22回賃貸住宅市場景況調査(19年4~9月)」の中で、初めて「心理的瑕疵物件」に関して調査した結果が公表されました。調査には協会会員の不動産管理会社1281社のうち169社が回答しています。
● 「第22回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』2019年4月~2019年9月報告書(報告書)
重要事項説明書に記載した「心理的瑕疵物件」に該当する「亡くなり方」について、
- 「室内で自殺」:74.6%
- 「室内で病死・損傷や異臭の発生あり」(孤独死はこれに当たる):69.4%
- 「室内で他殺」:64.9%
となっています。死後1週間以上たって発見されたケースで、そのきっかけは、
- 「家族からの連絡」:76.4%
と最も多く、
- 「職場からの連絡」:59.1%
- 「近隣住民及び他の入居者からの連絡」:57.5%
となっています。地域によって差があり、関西圏では地域住民の結びつきが強いため、
- 「近隣住民及び他の入居者からの連絡」:73.3%
となっています。
で、いつまで「重要事項説明書」に記載するかに関しては、
- 「入居者1回入れ替え(次の入居者まで)」:35.8%
- 「入居者2回入れ替え」:14.9%
- 「半永久的」:14.9%
- 「数年間」:11.2%
となっています。どこまでを対象とするかについては、
- 「当該住戸のみ」:65.7%
- 「一棟全て」:12.4%
- 「当該住戸+両隣り」:6.6%
でした。住み替えが簡単な賃貸でさえ、7割は、損傷や異臭があった孤独死を「心理的瑕疵物件」として、「重要事項説明書」に記載しているのです。そして、12.4%は、「当該住戸」だけでなく「一棟全て」の住戸の重説に記載しているのです。
一旦、売買契約が成立したら多額のお金が動き、簡単に住替えできない分譲マンションで、「孤独死」の「重要事項説明書」への記載は、もう常識と言えるのではないでしょうか。
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