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何かを射止めたいなら目標はライフルのように近遠2つ必要なワケ

目先の目標やノルマに追われて、大きな目標、思い描いていた将来の姿などをつい忘れてしまってはいませんか?反対に、大きな目標だけを見て、目先の課題は何もクリアできていないなんてことになってはいませんか?メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは今回、人生の目標について考察。遠くの標的に狙いを定めると、自ずと近くにもう1つ照準が合うというライフル射撃の話に示唆を求めています。

目標のこと

誰にだって目標はある。たぶん。問題はそれをどう設定するかである。よく、どう実現するかが問題である、といった物言いがなされるがそれも適切な設定あってこその話である。偏差値40台の者がいきなり東大理3は誰が聞いても無茶な話である。

そもそも目標とは完全に個人の内より出て来る、言ってみればわがまま勝手なものである。対してその実現にはさまざまなやり方(メソッド)が存在する。予備校や進学塾の類が調法がられるのもこれ故である。ただ受験のように、ある意味高次に定型化してしまっているメソッドは時に個人のわがまま領域にまで踏み込んできたりすることもある。例えば、先の話で言えば「どうしても東大なら、一年の浪人を計算に入れて文3くらいにしたらどうか」というような現実的に実現可能なところを理詰めで説かれたりなどするのである。

結局、無茶な目標もがっかりなアドバイスも、ともに残念であることには変わりない。これを是正するには無茶を下方修正し、がっかりを上方修正する他ないが、40台と理3の妥協点が存在するとはおよそ思えない。それを無理矢理に求めるなら面的に恐ろしく広い妥協領域となってしまい、目標とするにはあまりに漠とし過ぎている。妥協的統合は不可能なのである。という訳で、どうあっても目標は2ついるのである。

全く話は変わってしまうが、ライフルなどで狙撃する際に起こるちょっと面白い現象を紹介したいと思う。狙撃の時、射手は照準器を通し眼で、つまりは光学的に目標物(ターゲット)に狙いをつける。地上では原則的に光は直進するからこれは当然と言えば当然である。ただ放たれた弾丸はそうはいかない。地球の重力の影響で放物線を描いて飛翔することになるからである。この直線と放物線が交わらなければ弾丸はターゲットには命中しない。そのため調整作業が必要となる。これをゼロイング(zeroing)と言う。

例えば「I zeroed in my rifle at 100 yards」と言われれば、100ヤードに照準を合わせているということである。しかしよくよく考えてみれば、一方が直線でもう一方が放物線なのだから照準は近遠で2度合う筈なのである。実際、丁寧な人は「このライフルは遠くでは300m、近くでは40mに照準が合わせてある」と説明してくれる。もっともライフルは長距離狙撃に使用するのが本来だから提示された距離が一つならそれは当然ながら遠くの方を意味することになる。

実際、海外で行われた銃器のデモンストレーションか何かの映像で、ライフルから放たれた弾丸が近くの紙のターゲットのど真ん中を射抜いた直後、射手からは見えない筈の遠くのターゲットのこれまたど真ん中に命中するのを見たことがある。

目標は近遠に2つ作れるのである。そう言えば、大学の論文指導の先生も「目下の研究が将来の自分にとってどんな意味を持つのか常にperspective(=遠近感)をもって臨まなければだめだ」とよく言っていた。ついでに思い出したのだが、その先生は遠くの目標のことをよく「野心」と呼んでいた。私はこの言い回しが大好きであった。

社会の中で生きている以上、どうしても我々は近くの目標で手一杯になりがちである。忙殺されるのである。しかしどのような状況下においてもその先にある遠くの目標に狙いをつけることを決して忘れてはいけない。さもなければ同じところをグルグル回るだけの人生になってしまう。逆にどんな時でも野心というものが視野に入っていれば、グルグル回っているようでも弁証法的に高みに近づいていける筈だ。

何だか、片手に望遠鏡、片手にハズキルーペ、といった感じでちょっと滑稽な気もするが、遠くも近くもしっかり狙いをつけるためにはこの程度のカッコ悪さは何でもない。いつか見たライフル弾のように、近縁の目標を見事に撃ち抜くことができればこれほどカッコ良いことはないのだから。

image by: shutterstock

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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