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マンション管理組合の総会に出ると税金が安くなるのは本当か?

マンションの適切な管理を促すため、2022年までに「管理認定制度」というものを作ると国土交通省が発表したことが話題になっています。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、そのことが掲載された記事がまわりまわって間違った見解にすり替わっているという現状と、管理認定制度の内容について疑問をなげかけています。

総会に出席すると税金が安くなる?

こんにちは!廣田信子です。

「総会に出席すると税金が安くなる」って聞いたけどほんとうのこと?といきなり聞かれました。何のこと?と皆さん思われるでしょうが、私は、ピンときました。2月9日日本経済新聞の記事が、まわりまわってそういう話になったのでは?…と。

記事の内容は…「国土交通省は、マンションの適切な管理を促す仕組みとして、2022年までに『管理認定制度』を創設する」というものです。有識者による「第2期住宅団地の再生のあり方に関する検討会マンションワーキンググループ(WG)」の提言の一つを踏まえたものです。

20年後には築40年を超えるマンションが現在の4.5倍の約370万戸に膨らむことを見据えて、修繕積立金が不足していないか、総会の出席率が低くないかなどをチェックして評価するというものです。管理不全マンションを増やさないように、地方自治体が修繕計画や修繕積立金の積立て状況や、管理組合の運営状況を評価し、管理が適正に行われていると認定されたマンションには、税制上の優遇措置を行うことを検討していくというのです。

この管理認定制度は、今通常国会に提出される予定の「マンション管理適正化法の改正案」に盛り込まれ、改正法は2022年までに施行される見込みです。改正法が成立したら、優遇策の具体的な検討がされます。今のところ、修繕積立金等の負担を軽減するための税優遇や、共用部分の改修に使う融資の金利優遇を求める声が上がっているといいます。施策の推進のためには、インセンティブは、管理組合、区分所有者双方へ必要になると思われます。

その他にも、購入に当たっての住宅ローン(住宅金融支援機構の「フラット35」など)で、「認定」物件購入に対する金利優遇などが検討されるでしょう。また「認定」物件は資産価値が落ちにくいとして、他の中古マンションよりも、融資可能額が増えることも考えられます。

国土交通省が期待しているのは、「認定」物件が中古マンション選びの基準になることで、中古マンション全体の維持・管理を底上げすることです。中古マンション購入者は、将来の資産価値などを考え、「認定」物件を優先的に選ぼうとするので、「認定」物件となった中古マンションの価格は上昇する。「認定」物件とならなかった中古マンションは資産価値が落ちてしまうので、維持・管理に努め、「認定」物件となる努力をする。

がんばっている管理組合にも、がんばっていない管理組合にもインセンティブが働くというのですが…本当にそうなるかどうかは、「認定」がしっかり現状を反映しているかどうかに、掛っていると思われます。

「総会に出席すると税金が安くなる」というのは…「管理組合の運営状況」のところで、「総会の出席率」という項目が入ると思われ、多くの人が総会に出席していれば高い評価になる。そうなると、総合的な点数も高くなり、「認定」マンションになることができ、税金の優遇というインセンティブを受けることができる。だから、多くの人が総会にすればみんなの税金が安くなる、と言う話が、総会に出席した人の税金が安くなる…かのように、話が伝わったのではないかと…。まるで、「風が吹けば桶屋が儲かる」みたいな話ですが。

どんな優遇策がとられるかは、まだ決まっていませんし、そもそも、「総会の出席率」の数字だけを取り上げて、管理組合運営の良し悪しの評価につなげていいのか…と私の中で抵抗があります。

総会に掛ける前に、検討状況をその都度広報し、組合員の意見を十分に聞き、丁寧な合意形成を進めてきて、最後、それを議案書にしっかり書いていれば、総会に出なくても、「委任状」や「議決権行使書」で十分意思表示できるので、総会の実出席率は高くはないのです。

逆に、総会以外に意見を言う場がないと、総会に反対派の人がたくさん出席し、総会が揉め、強引に決議をするというような運営の方が、出席率だけだと評価が上になってしまう…というようなことが起こってしまいます。それぞれの管理組合運営の工夫は多様で、なかなか画一的な評価では収まらないのです。

「総会に出席すると税金が安くなる」というような理解で、この認定制度がうまく機能するのか…と、手放しでこの施策を歓迎できないでいますが、今後をしっかり見て…ですよね。私は、今後も、点数化できない管理組合運営の工夫を、たいせつにしていきたいと思いました。

image by: Shutterstock,com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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