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新型肺炎で判明した「事実」と、日常で行える具体的な「対策」は

諸外国に比べ対応の遅さが目立つ、日本の新型肺炎感染防止に向けた動きですが、2月24日、ようやく厚生労働省がその基本方針の具体化に向けた見解を発表しました。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、その見解を読み解きつつ、現在までに判明している事実と、今後私たちが自ら取ることができる対策をピックアップし解説しています。

新型コロナウイルスのこれから

他の国から遅れる事3週間。ようやく日本政府が動き始めました。

2020年2月24日 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議

は、どんな意見を発表したのでしょうか?まず「緒言」から一部引用。

我々は、現在、感染の完全な防御が極めて難しいウイルスと闘っています。このウイルスの特徴上、一人一人の感染を完全に防止することは不可能です。

 

ただし、感染の拡大のスピードを抑制することは可能だと考えられます。そのためには、これから1~2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際となります。仮に感染の拡大が急速に進むと、患者数の爆発的な増加、医療従事者への感染リスクの増大、医療提供体制の破綻が起こりかねず、社会・経済活動の混乱なども深刻化する恐れがあります。

感染の拡大が急速に進むと、医療崩壊もあり得るそうです。大いにあり得ますね。

これからとるべき対策の最大の目標は、感染の拡大のスピードを抑制し、可能な限り重症者の発生と死亡数を減らすことです。

目標は、二つ。

  1. 感染拡大のスピードを抑制すること
  2. 重症者と死亡者数を減らすこと

次に、「日本国内の感染状況の評価 」これも、一部引用します。

2019年12月初旬には、中国の武漢で第1例目の感染者が公式に報告されていますが、武漢の封鎖は2020年1月23日でした。したがって、その間、武漢と日本の間では多数の人々の往来があり、そのなかにはこのウイルスに感染していた人がいたと考えられます。

 

既に、国内の複数の地域から、いつ、どこで、誰から感染したかわからない感染例が報告されてきており、国内の感染が急速に拡大しかねない状況にあります。したがって、中国の一部地域への渡航歴に関わらず、一層の警戒が必要な状況になってきました。

  1. 武漢は昨年12月初旬にはじめての感染者が出たが、今年1月23日まで封鎖されなかった
  2. この期間に、武漢から日本に来た人、日本から武漢に行った人がたくさんいる
  3. その中にウイルスに感染した人がいたのだろう
  4. 結果、すでに日本国内では、「感染経路が明らかでない感染者」がたくさん出てきている

専門家会議の見解は、正しいとは思います。しかし、他の多くの国が実施しているように、1月末から2月はじめ時点で、「中国全土からの渡航を禁止」「中国への渡航を禁止」していれば、現在のような事態にはならなかったでしょう。

しかも、現在のようなひどい状況になっても、まだ日本政府は、「中国全土からの渡航禁止」「中国への渡航禁止」をしません。与党からも野党からも、「そうしろ!」という意見がでないのは、驚くべきことです。中国の影響力はどれほど強いのか、驚きますね。しかも、自民党は、「習近平の国賓訪日は予定通り行う」と宣言しています

専門家会議は、「どうすれば感染するのか?」について触れています。

このウイルスの特徴として、現在、感染を拡大させるリスクが高いのは、対面で人と人との距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされる環境だと考えられます。我々が最も懸念していることは、こうした環境での感染を通じ、一人の人から多数の人に感染するような事態が、様々な場所で、続けて起きることです。

それで、これから、集会、セミナー、講演会などは、中止になることが増えるでしょう。コンサートもそうでしょう。上映中止はないでしょうが、映画館も厳しそうですね。ひょっとしたら学校も、「いつもより長い春休み」に突入するかもしれません(ちなみに、親戚の女の子が通う高校が、休校になりました)。

次は、「これまでに判明してきた事実」です。

(1)感染者の状況

 

新型コロナウイルスに感染した人は、ほとんどが無症状ないし軽症であり、既に回復している人もいます。

 

国内の症例を分析すると、発熱や呼吸器症状が1週間前後持続することが多く、強いだるさ(倦怠感)を訴える人が多いです。

このことは、2つのことを示しています。

しかしながら、一部の症例は、人工呼吸器など集中治療を要する、重篤な肺炎症状を呈しており、季節性インフルエンザよりも入院期間が長くなる事例が報告されています。現時点までの調査では、高齢者・基礎疾患を有する者では重症化するリスクが高いと考えられます。

高齢者とか持病のある方は、特に要注意ですね。

(2)感染経路などについて

 

これまでに判明している感染経路は、咳やくしゃみなどの飛沫感染と接触感染が主体です。空気感染は起きていないと考えています。ただし、例外的に、至近距離で、相対することにより、咳やくしゃみなどがなくても、感染する可能性が否定できません。

 

無症状や軽症の人であっても、他の人に感染を広げる例があるなど、感染力と重症度は必ずしも相関していません。このことが、この感染症への対応を極めて難しくしています。

知らずに感染している人が、知らずに人を感染させるケースがあるということですね。

最後は、「みなさまにお願いしたいこと」です。まず、「感染したかどうかの目安」。

この1~2週間の動向が、国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際であると考えています。そのため、我々市民がそれぞれできることを実践していかねばなりません。

 

特に、風邪や発熱などの軽い症状が出た場合には、外出をせず、自宅で療養してください。ただし、以下のような場合には、決して我慢することなく、直ちに都道府県に設置されている「帰国者・接触者相談センター」にご相談下さい。

 

  • 風邪の症状や37.5°C以上の発熱が4日以上続いている(解熱剤を飲み続けなければならないときを含みます)
  • 強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある

 

※ 高齢者や基礎疾患等のある方は、上の状態が2日程度続く場合

次に、「どうすれば、感染を防げるか」について。

また、症状のない人も、それぞれが一日の行動パターンを見直し、対面で人と人との距離が近い接触(互いに手を伸ばしたら届く距離)が、会話などで一定時間以上続き、多くの人々との間で交わされるような環境に行くことをできる限り、回避して下さい。

そして、症状が軽い場合は、医者に行くな、だそうです。

症状がなくても感染している可能性がありますが、心配だからといって、すぐに医療機関を受診しないで下さい。医療従事者や患者に感染を拡大させないよう、また医療機関に過重な負担とならないよう、ご留意ください。

2020年2月24日 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議

の見解は、以上です。ざっくりいえば、「自分の身は自分で守りましょう」ということでしょうか。あまり意味のなさそうな見解ですが、それでも専門家会議が

この1~2週間の動向が、国内で急速に感染が拡大するかどうかの瀬戸際であると考えています。

と宣言したことは重要です。これで、イベントの中止、休校、自宅勤務の会社などが激増することでしょう。

この戦いは、いつまで続くのでしょうか?2003年SARSの流行は9か月、2015年MARSの流行は7か月でした。日本では、「今はじまったばかり」ですから、終息するのが11月頃でもおかしくありません。東京オリパラが開催できるのか、微妙です。

暗い話ばかりですが、一つの希望もあります。

インフル薬「アビガン」投与開始=新型ウイルス治療に─加藤厚労相

 

加藤勝信厚生労働相は22日の記者会見で、新型コロナウイルスに感染した患者の治療のため、国内の医療機関1カ所で同日から新型インフルエンザの治療薬「アビガン」の投与を始めたと発表した。新型ウイルスにはまだ治療薬がなく、効果が確認されれば広く治療の現場で活用していく。

 

厚労相によると、アビガンはウイルスの増殖を抑制する効果があり、2カ所の医療機関で投与の準備を進めていた。投与は患者の同意や医療機関内での手続きなどを経て、本来とは違う治療薬を使って結果を分析する「観察研究」の一環として実施した。

 

アビガンは一般には流通しておらず、新型インフルエンザ発生に備えて国が約200万人分を備蓄している。治療時は国が医療機関側に提供する。

アビガンは、富山化学工業が開発した薬。エボラ出血熱の治療で大きな成果をあげ、世界的に注目されています。今回の新型コロナウイルスにも有効だといわれています。

中国からの渡航を全面禁止しなかったことで、今回の国難を招いてしまった安倍政権。それでもアビガン投与を迅速に決めたことは、救いですね。これで、新型コロナウイルスによる日本の死者数は、おさえられる可能性がでてきました。

というわけで、皆さん「冬来るだ、ジョンスノウ」です。残念ながら、政府はアテになりませんから、自分で自分と家族を守りましょう。

image by: 首相官邸

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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