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新型肺炎の「予測不能」が引き起こす、負の反応と第三次世界大戦

ついに南極を除く世界の6大陸に拡大した、新型コロナウイルスによる感染症。好調だったNY株式市場では過去最大の下げ幅を記録、世界同時株安も進むなど、その影響は経済にも及んでいます。このウイルスによる感染拡大を抑え込むために、各国はどのような対応を取るべきなのでしょうか。元国連紛争調停官で国際交渉人の島田久仁彦さんは今回、自身のメルマガ『最後の調停官 島田久仁彦の『無敵の交渉・コミュニケーション術』で、「国際協調の波が起きる必要がある」と指摘するとともに、仮にコロナウイルスの蔓延が国際協調を打ち破るようなことになれば、人類はビル・ゲイツが予告した悲惨な事態を目の当たりにすることになると記しています。

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COVID-19の蔓延と囁かれる“終末論”

いきなりですが、次に描く状況をできるだけ詳細に想像してみてください。

会社や学校に行こうと電車に乗っていた際、止まった駅で、すべてのドアから軍の(自衛隊の)完全武装した人員が乗り込んできて、「これから乗車している人たちを強制的に施設に収容・隔離する」と言われ、有無を言わさず連れていかれたとしたら…そして車を運転している際、道を閉鎖され、同じく収容されることになったら…。

誘拐や拉致の場合とは異なり、家族や会社、学校に連絡を取ることは許されますが、例外なく収容され、隔離されることには変わらないという状況です。

コロナウイルスの感染拡大が止まらない日本では、まだお目にかからない事態ですが、お隣韓国や、発生源とされる中国、感染が確認された中東諸国や北アフリカ諸国、そしてアメリカを含む欧米諸国においても、このような事態が、形を変えて進行中です。

感染拡大が止まらない韓国・大邱市では、隔離に従わないものに対しては、懲役刑を科す可能性にまで言及していますし、ニュースではあまり詳細は伝わりませんが、中国や日本などの感染拡大地域から帰国した自国民を、強制的に14日間程度隔離する措置を各国が取っているのも事実です。それが社会的な疎外やいじめにつながるケースも発生していますが、「まずは、見えない敵との戦いに勝つために、感染の拡大を止めるのが先決」との政治的判断でしょうか。各国の徹底ぶりは恐ろしささえ感じます。

風邪やインフルエンザと違い、一度罹患し、その後、陰性反応を得て“無罪放免”となっても、COVID-19の感染は2度目、3度目が存在し、ほぼ例外なく、劇症化するケースが表出してきていることから、多くの国が国家安全保障上の問題として取り扱い始めました。

中国については、国家資本主義体制でかつ中国共産党による一党支配という政治体制ゆえ、街の封鎖も、強制的な隔離も、そして軍の展開も比較的に中央集権的に迅速に対応できますが、社会的な規範を大事にしつつ民衆の声を聴く体制を取る日本のような国では、このような対策を取りづらいことも事実です(そして、過去のハンセン病対策の失敗というトラウマもあります)。そのような状況下で、「対応が遅すぎる」「後手後手に回っている」という批判が日本政府の対応に押し寄せてきますが、私個人としては、そのような批判はあるものの、頑張ろうとしているという評価をしています。

ダイアモンド・プリンセスにまつわるエピソードについては、ちょっといいひと過ぎないか!?との批判も分かるのですが(本来、旗国主義からすると、英国政府の責任なので)、あの状況では、こうする他なかったのではないかと考えます。謎のウイルス感染の拡大と、市中への感染拡大を防ぐという目的からは、船内での隔離というのは苦肉の策だったのではないかと思います。ただ、陰性反応が出た乗客を、再度、隔離し経過観察を行うのではなく、横浜からそれぞれ公共交通機関で帰らせたという対応には、危機管理上、あり得ない対応であったと考えます。海外の専門家や政府関係者の評価も、ダイアモンド・プリンセス絡みでは同じような内容です。

結果、どうなっているでしょうか。

陰性反応が出て下船した人が、後日陽性反応を示し、発症しており、その影響もあって感染源が特定できない感染の広がりが全国に広がっています。

これは日本だけでなく、イタリアやイラン、そして韓国でも同様です。そして、ブラジルでついに感染者が出始め、アフリカに至っては、ニュースで伝わっては来ておりませんが、ついに恐れていたパンデミックの兆候が出始めているとのことです。

ケニアでは、中国人排斥が始まっているようですし、同時に、ケニア政府からの強い抗議を受けて、駐ケニア中国大使館が、ケニアにいる中国人を自主的に隔離措置を取るほどになっています。また、以前、エボラのパンデミックで苦しんだ西アフリカ諸国は、早くも軍を出動させてのcontainment(封じ込め)作戦をスタートするようです。いわゆる隔離政策です。アフリカ連合やECOWASの友人たちからの情報では、この軍による隔離の徹底は、アフリカ全土に広がり、すでに内戦で不安定な状況にある中央アフリカ(コンゴなど)では、紛争をより激化させるような副作用が出てきており、地域安全保障上、非常に危険な状況に陥っています。内戦で戦うと同時に、今はこの見えない敵との戦いにも臨む必要があり、事態は非常に混乱しているとのこと。そう遠くない時期に、もしかしたら、耳を疑うような悲劇的なニュースがアフリカなどからもたらされるかもしれません。

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このような事態に際し、いろいろな陰謀論が渦巻いています。私も中国・武漢の生物兵器工場からの漏洩の可能性や、アメリカ・トランプ政権によるバイオテロ作戦について触れてきましたが、今や深刻な事態に陥っている国のリストを見た際、アメリカの関与の有無を疑いたくなります。中国とは貿易戦争を行うとともに、世界の覇権争いに臨んでいます。韓国と北朝鮮については、反米色が強まり、北東アジア地域におけるアメリカのプレゼンスを脅かす事態になっています。感染が急拡大し、死者数も日ごとに増え続けるイランは、核合意の問題を巡るトランプ政権との刮目を鋭意実施中です。

もし、これがアメリカによる作戦なのだとしたら、武力によって戦争に及ぶことなく、パンデミックという形でこれらの相手をつぶすことができます。そして、興味深いのが、武漢でのコロナウイルスの感染が拡大してすぐに、トランプ大統領が習近平国家主席に対して、いかなる支援も行う旨、述べたということです。ここには、新型コロナウイルスに対する医療的な支援、もしくは、ワクチン支援も含まれるようです。仮にそうだとしたら、自ら生物兵器を開発する際には並行してワクチンを開発するのは常ですから、何らかの形でのアメリカの関与が疑われます(実際には、中国はアメリカに謝意は伝えつつ、ワクチン開発については、ロシアと協力する旨、決定しました)。

しかし、死者数が2万人をはるかに超えたアメリカでの新型“インフルエンザ”の猛威を前に、別のシナリオも考えられます。もし、これが本当に新型インフルエンザなら、中国によるアメリカへの報復工作もしくはパラレルな工作という見解も、陰謀論を信奉するのであれば、可能な内容になってきます。ただ、実際には、これはインフルエンザではなく、コロナウイルスだったのではないか?との見方もあるため、今後、アメリカ政府とCDCがどのような見解を表明するか、非常に見ものです。

ただ、元凶と実行犯については、今の段階で問い詰めるよりは、まず広がる感染をいかに止め、封じ込めて、収束させるかが肝要です。

「エイズ治療薬の投与が有効だった」「富士フィルムの新型インフルエンザ治療薬のアビガンが有効らしい」という医療的な話から、「体を温めるとよい」「XXは免疫力を高めるからコロナウイルスにも効くはず」という内容のものまでさまざまな“噂”が流れていますが、実際に効き目がでるような薬剤や対策が確立されるには、早くとも6か月はかかるというのが専門家の見解だそうです。

これから6か月…そう、ちょうど日本ではパラリンピックの真っ最中です。そしてその前にはオリンピックが開催される予定です。IOCの委員の発言などを引用して「東京オリンピック・パラリンピックの中止、延期」といった話題まで出る始末ですが、これらはすべて【今回のCOVID-19による事態は、予測不可能】という事実に基づいており、“分からない”がゆえに引き起こされている心理的なネガティブな反応でしょう。

イベントの中止や延期の広がり、外出を控える動きと消費の減少、ネガティブ心理が影響する金融・株式市場のスランプ、そして隔離措置や入国制限・入国拒否の広がり…それらが経済活動を縮小させ、人の動きを抑制し、隣人への疑念の拡大に繋がり、そして、起きてほしくないですが、戦争の勃発へとエスカレートする可能性があります。

どの国とて、今は見えない敵に対してパーフェクトな対応はできていないですし、恐らくできないでしょう。そして、きっと過剰な反応や対応も行われていると思われます。しかし、これが偶発的な疫病の広がりであったとしても、何者かによるバイオテロが、実行者にさえ予測不可能な事態に発展している事態だとしても、間違いなく国際社会の硬直化を招いています。

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国際協調主義は、トランプ大統領と自国第一主義の存在の有無にかかわらず、根本から崩れ、各国がまさに自国第一主義に走り、地域はブロック化し、そして、また国際社会に緊張が溢れる。そんな望ましくない事態になってきているような気がしています。

そのような中、日本は政府も国民も含めてどのような対策を打ち、世界各国はどのような対応をそれぞれにとるのか。事態からして、場当たり的になるのは仕方がないとしても、人類への危機を目の当たりにして、今一度、それぞれの情報と経験などを持ち寄り立ち向かう国際協調の波が起きる必要があると考えます。

もし、今回のコロナウイルスの蔓延が国際協調を打ち破り、相互疑心が戦争へと私たちをいざなうのだとしたら、2015年にビル・ゲイツ氏が予告したような【1,000万人単位で人類が殺されるような事態があるとすれば、それは核戦争ではなく、感染病の世界的なパンデミックによるものだ】という世界を、近く私たちが目の当たりにするようことになるかもしれません。

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image by:  cpt.kama / Shutterstock.com

島田久仁彦(国際交渉人)この著者の記事一覧

世界各地の紛争地で調停官として数々の紛争を収め、いつしか「最後の調停官」と呼ばれるようになった島田久仁彦が、相手の心をつかみ、納得へと導く交渉・コミュニケーション術を伝授。今日からすぐに使える技の解説をはじめ、現在起こっている国際情勢・時事問題の”本当の話”(裏側)についても、ぎりぎりのところまで語ります。もちろん、読者の方々が抱くコミュニケーション上の悩みや問題などについてのご質問にもお答えします。

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