先日掲載の「孫正義氏『新型コロナ検査100万人分提供』発案も2時間で撤回」でもお伝えしたとおり、ツイッターで簡易PCR検査の無償提供を申し出るも批判が殺到するや、支援を「マスク配布」に切り替えたソフトバンクの孫正義社長。機を見るに敏だった孫社長はなぜ今回、新型コロナへの対応を見誤ってしまったのでしょうか。ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、自身のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』でその原因を探るとともに、「今こそソフトバンクにしかできない貢献をすべし」として、具体的内容を記しています。
ソフトバンク孫社長が3年ぶりにTwitterに降臨して大炎上――マスク配布よりソフトバンクにしかできない貢献があるのではないか
ソフトバンクグループの孫正義社長が3年ぶりにTwitterに降臨。「行動を開始します」「新型コロナウイルスに不安のある方々に、簡易PCR検査の機会を無償で提供したい。まずは100万人分。申込方法等、これから準備」とつぶやいて即、大炎上した。
行動を開始します。
— 孫正義 (@masason) March 11, 2020
新型コロナウイルスに不安のある方々に、簡易PCR検査の機会を無償で提供したい。まずは100万人分。申込方法等、これから準備。#コロナ検査有志
— 孫正義 (@masason) March 11, 2020
その後、わずか2時間で「検査したくても検査してもらえない人が多数いると聞いて発案したけど、評判悪いから、やめようかなぁ。。。」と弱気になったと思ったら、翌日には100万人にマスクを配ると提案。これにネット民も納得したようであった。
検査したくても検査してもらえない人が多数いると聞いて発案したけど、評判悪いから、やめようかなぁ。。。
— 孫正義 (@masason) March 11, 2020
やりましょう。
マスク100万枚寄付します。
介護施設と開業医へ。
調達の為の発注完了。 https://t.co/vqq0jBeAvm— 孫正義 (@masason) March 12, 2020
この3年間の孫社長を振り返ると、Twitterから離れたことで、世間とズレが生じたように思う。ソフトバンク・ビジョン・ファンドの投資案件を見ても、「WeWorkをAIカンパニーだ」と言い始めるなど、理解に苦しむ言動が増えてきた。
孫社長の周りにはイエスマンしかいないのだろうし、孫社長を戒めていたはずのユニクロの柳井さんとか日本電産の永守さんも役員からいなくなってしまっただけに、すっかり周りが見えなくなってしまったように感じる。孫社長がこれ以上、世間の感覚からズレないように、ぜひともTwitterに本格復帰したほうがいいのではないか。
このままでは、未来永劫「空気の読めない孫社長」のレッテルを貼られることになるだろう。
今回、マスクを100万枚配ると宣言したが、海外の工場に直接発注したということだ。これでは単に孫社長を経由するという、流通ルートが変わっただけのようにも思う。
根本的にマスクが不足しているのだから、孫社長が出資して、マスク工場を新設するとか、工場に新しいラインを作らせるとか、新しくマスクを製造するところまで踏み込まなくては意味がないのではないか。
そもそも、孫社長が簡易PCR検査やマスクを配るなんて門外漢のことをするよりも、通信会社のソフトバンクとしてもっとこの状況を改善する提案ができるのではないか。
テレワークが増える中、多くの人がZoomなどのオンライン会議サービスを使う機会が増えてきた。ソフトバンクの「メリハリプラン」は動画・SNSが使い放題であるが、ぜひともZoomやマイクロソフト「Teams」、グーグル「Hangouts Meet」などの利用でもデータ容量を消費しないというキャンペーンを提供してくれれば、多くの人に歓迎されるのではないか。
子供が家にいるのが当たり前になるなか、子供向け動画コンテンツの視聴も、カウントフリーにしてくれれば、子供がいる家庭にとっては大助かりだ。
マスク配布も結構だが、コロナ騒動で、多くの国民が疲弊するなか「日本で携帯電話事業を展開する数少ない通信会社が国民に貢献できること」を考えてもらいたいものだ。
総務省が900MHz帯の利用に対する調査を実施――楽天モバイルにプラチナバンドかと思いきや、まさかの障壁
3月13日、総務省から「900MHz帯を使用する新たな無線利用に係る調査の結果と今後の予定」という報道資料が配布された。
デジタルMCAシステムの高度MCAシステムへの段階的な移行を想定するなかで、対象周波数帯(845~860MHz及び928~940MHz)における新たな無線利用に関する調査を実施したのだという。
新たな無線利用に関する提案は8件あり、なかには楽天モバイルによる「FDD方式による携帯無線通信での利用に係る提案」というものがあった。
「これによって、楽天モバイルにもプラチナバンドが手に入るのか。これは喜ばしい」と思っていたのもつかの間、別の資料には「携帯無線通信システムでの利用については、検討対象周波数が3GPP(携帯電話の民間の国際標準規格の策定等を行うプロジェクト)で標準化されておらず、既存の基地局設備や携帯電話端末が対応していないなど、導入に向けた見通しが定かでないことから、調査検討を行う前に、提案者において当該標準化の見通しを明らかにすることが必要と考えられる」と注意書きがあったのだ。
まさか、3GPPで標準化されていない周波数だったとは何とも残念な限り。これでは楽天モバイルのプラチナバンド取得の夢が絶たれてしまう。
ただ、総務省も本気で楽天モバイルを第4のキャリアとして、既存3社に対抗できるだけの勢力にしたいのであれば、やはりプラチナバンドの割当は避けて通れないのではないか。
3GPPで標準化されていない周波数なのであれば、楽天モバイルとともに3GPPに対して標準化を働きかければいいのではないか。周波数の幅も狭く、使い勝手はかなり悪そうだが、それくらいの努力をして、楽天モバイルにプラチナバンドを割り当てないことには、早晩、エリア展開でギブアップしかねない。
このタイミングを逃してしまったら、今後、この周波数帯での割当再編をするのはかなり困難なのではないか。
楽天モバイルも新規参入として経験はほとんどないだろうが、3GPPに働きかけ標準化させ、基地局や端末も対応してもらう準備を進めるべきだ。
楽天モバイルは2026年3月31日までKDDIからローミング提供を受ける契約となっている。楽天モバイルとしてはこの計画を前倒して、早期にローミング契約を終了させるつもりのようだが、現実はそんなに甘くない。ただ、プラチナバンドがあれば、エリア展開は一気に楽になるはずだ。今すぐには難しいかもしれないが、この先、6年というスパンで、プラチナバンドの取得を視野に動き出すべきだ。
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