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新型コロナ「アビガン」症状改善例を多数報告。一方注意点も

新型コロナウイルスの感染が拡大する中、日本感染症学会の緊急シンポジウムが開かれ、患者の治療について、インフルエンザ薬やぜんそく薬の投与で改善したケースもあったことなどが報告された。中でも、インフルエンザ治療薬の「アビガン」を患者に投与した結果に注目が集まった。

アビガンの有効性

この緊急シンポジウムは、コロナウイルスの専門家が集い開かれたもので、観覧者を入れずに講演をインターネットで配信する形で行われた。新型コロナウイルス対策にあたる政府の専門家会議のメンバーや、治療にあたる医師などが状況を報告。実際の治療に使われている、いわゆる「既存薬」の効果などについて議論が行われた。

このなかで、藤田医科大学の土井洋平教授は、抗インフルエンザ薬「アビガン」を治療に使った200の医療機関からの報告について発表した。それによりますと、アビガンを投与された300人のうち、軽症と中等症の患者ではおよそ9割、人工呼吸器が必要な重症患者では6割で2週間後に症状の改善が見られたという。

土井教授は、今回の結果はあくまで主治医の主観によるものであるとしたうえで、「アビガンが効いたかどうかはまだわかっていない。効果があるかどうか検証を続け、科学的な根拠を示せるようにしたい」と話している。

また、吸い込むタイプのぜんそくの治療薬「オルベスコ」についても報告され、肺炎になったあとで投与された75人のうち、症状が悪化して人工呼吸器が必要になった患者が少なくとも3人、亡くなった患者は2人だったということで、この薬を使わない場合に比べて悪化する割合を下げられる可能性があるとしている。

承認のスピードアップを後押し

新型コロナウイルスの治療薬としての承認について、自民党の岸田政調会長は、「審査が従来の日本のあり方だと、かなり時間がかかってしまう。治験も含めて、スピードアップを図る。政府の立場でしっかりと後押しできるのではないかと思っている」とテレビ番組の中で語っている。

ランダム化比較試験の必要性

一方、土井教授が「アビガンが効いたかどうかはまだわかっていない」とシンポジウムで説明した通り、100%効くとは言えない。というのも、治療薬やワクチンの有効性を調べるためには、ランダム化比較試験をすることが必要だからだ。

新型コロナウイルス感染症にアビガンが有効かどうか調べるには、患者さんを治療群と対照群にランダムに分け、治療群にアビガンを投与し、対照群には投与せず、回復するまでの時間や回復した人の割合などを比較する。

なぜこのような試験が必要なのか。それは、アビガンを投与して回復した症例をいくら集めても、アビガンのおかげで治ったのか、それともアビガンを使わなくても治ったのか、区別がつかないからだ。ランダム化比較試験以外で、その治療薬が本当に有効かどうかを正確に知る手段はないという。

有効性を評価しないまま薬を使い続けるのは危険なことで、薬にプラスの効果がないだけならまだましで、逆に病気を悪化させる恐れもある。

臨床試験を計画して実行し、結果を発表するまでには時間がかかる。岸田政調会長はスピードアップを図るとしているが、今後はその時間が重要な局面となってくる。

患者の重症化を防ぐ、医療従事者を守るという意味でも大切な既存薬の存在。現在、アビガンは増産体制に入っているというが、それをきちんと使うことができなければ何も意味がない。一刻も早い新型コロナウイルスの治療薬としての承認が今求められている。

Twitterの声

抗インフルエンザ薬「アビガン」を治療に使い、多くの患者で改善が見られたということは良い報告だといえる。しかし、手放しで喜べることではない。本当にアビガンが効いて改善したのか、自然治癒した人も中にはいるのではないかなど、きちんと判断しなくてはならない。ネット上ではこの報告を喜ぶ一方、冷静な意見を述べる声も多く聞こえてくる。

※本記事内のツイートにつきましては、Twitterのツイート埋め込み機能を利用して掲載させていただいております。

source: NHKTBS朝日新聞

image by: Myriam B / shutterstock

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