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トランプは落選も同じか。身内も見捨て風前の灯火となった再選

反人種差別デモへの強硬な姿勢が批判の的となり、支持率を大きく落としたトランプ大統領。再選を目指す大統領選を10月に控えていますが、トランプ氏は1期で大統領の座を明け渡すことになるのでしょうか。ジャーナリストの高野孟さんは今回、自身のメルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』で、様々な要因を分析しつつ「トランプ再選の有無」を占っています。

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※本記事は有料メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年6月15日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール高野孟たかのはじめ
1944年東京生まれ。1968年早稲田大学文学部西洋哲学科卒。通信社、広告会社勤務の後、1975年からフリー・ジャーナリストに。同時に内外政経ニュースレター『インサイダー』の創刊に参加。80年に(株)インサイダーを設立し、代表取締役兼編集長に就任。2002年に早稲田大学客員教授に就任。08年に《THE JOURNAL》に改名し、論説主幹に就任。現在は千葉県鴨川市に在住しながら、半農半ジャーナリストとしてとして活動中。

ほとんど錯乱状態のトランプ米大統領――米国の命運を決める黒人票の動向

コロナ禍への対応の失敗に加えて、「ブラック・ライブズ・マター=BLM(黒人の命を大切に)」デモの広がりに対する徒らな強行姿勢に全米のみならず国際的にも批判が広がる中で、トランプ米大統領はほとんど錯乱状態に陥ってしまった。それを象徴するのがトランプ再選本部によるCNNの世論調査結果に対する「訂正と謝罪」の要求で、民主党候補のバイデン前副大統領に支持率で14ポイントも差をつけられたというのは「フェイク」であり、「大統領への支持を妨害する行為」だと申し入れたのである。

CNN側の返答は落ち着いたもので、「米国の政治家ないしその選対本部からCNNの世論調査結果が気に入らないからという理由で法的措置をとると脅されたのは、CNNの40年の歴史の中で初めてのことである」「過去にそうした脅しを受け取ったのは、ベネズエラのような報道の自由と独立がほとんど、もしくは全く、ないような国の政治指導者からだった」と皮肉たっぷりに述べた上、相手にせずに突っぱねる姿勢を示した。

危機ラインを切る支持率

問題となったCNNの世論調査の主な結果は次の通り。

▼トランプの支持率は38%、不支持率は57%だった。支持率は過去17カ月で最低の水準。またこの支持率は、再選を目指して果たせずに1期で終わったカーターやブッシュ父両大統領の選挙半年前とほぼ同様の水準で、つまり再選は難しいという数字である。

▼登録有権者の中の支持率、すなわち「11月にはどちらに投票するつもりか」というに等しい問いへの答えでは、バイデンの55%に対しトランプ41%で、14ポイントの差をつけられた。バイデンの支持率はこれまでの最高で、トランプのそれは過去14カ月で最低である。

▼こういう結果となったについては、やはりBLMデモへの敵意剥き出しの姿勢が祟っていて、63%がトランプの人種間問題への対応を「支持しない」と言い、65%がトランプのBLMデモへの対応を「有害」と答えた。

▼その背景として、人種別・男女別・世代別を問わず広い層に渡って84%がBLMデモについて理解を示していることがある。トランプがこれを「テロリストや過激派の仕業」と言いくるめて自分への結束を取り付けようとした作戦の幼稚さは、国民にすっかり見抜かれていたということである。

仮にCNNを黙らせることができたとしても、それでトランプ支持が回復する訳ではない。「ニューヨーク・タイムズ」6月11日付は「最新の数字はトランプへの支持の深刻な低下を示している」と題した分析記事を掲げ、CNNを含む6つの調査のうちの5つで、バイデンの支持率が1カ月前に比べて3~7.5ポイントも増えていて、女性、白人、高卒以下の白人、若者など様々な層でトランプ離れが顕著になっていると指摘している。もちろん、同記事も言う通り、11月の選挙までにはまだ5カ月あって何が起きるか分からず、トランプに巻き返しのチャンスが訪れないとは言えない。が、夏から秋に向けて経済が順調に回復し、しかも秋から冬に至ってコロナ禍の深刻な第2波が訪れないということでないと、トランプ支持者の希望は叶うことはないだろう。

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黒人票はますますバイデンへ

黒人の人口比率は12.4%で(14年)、「あれ?そんな程度だったのか」と思われるかもしれないが、選挙では1つの塊としてマージナルなところで作用する。

塊と言うのは、1960年代の公民権運動以来、黒人の9割は民主党に投票するのが当たり前となり、またそれに応えて歴代の民主党政権は黒人の就職支援策などを打ち出してきたので、ごく一部の例外を除いて共和党に投票することなどあり得ないということである。

それがマージナルな作用を持つというのは、彼らは民主党それ自体にアイデンティティを託している訳ではないので、民主党の大統領候補が黒人にとって余り興味が持てない人物であるという場合、必ずしも積極的に投票に行こうとは思わない。前回16年のヒラリー・クリントンの選挙で起きたのがまさにそれで、08年と12年のオバマ選挙では黒人の投票率は65%を上回って再選に貢献したが、16年には60%を切り、それがクリントン落選の一因となった。

激戦区となって辛うじてトランプが獲ったミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシン、フロリダ、オハイオ、アリゾナの各州のうち3州では、黒人投票率が5ポイントでも増えればクリントンが勝っていたと言われる。

となると、今秋の選挙では逆に黒人の投票率がかつてなく上がり、そのために両党がせめぎ合いを演じている州で次々に意外な逆転現象が起きて、バイデンが地滑り的勝利を得るということもあり得るのではないか。

NBAのスーパースターであるレブロン・ジェームズや女子プロバスケットボールWNBAのスカイラー・ディギンズスミスなどが、11月大統領選で黒人はじめマイノリティーが投票に行くよう呼びかけ、そのための有権者登録を支援する活動まで踏み込もうという非営利運動団体「More Than a Vote(まず一票から)」を設立するなど、デモの広がりに表れた力を大統領選での「チェンジ」に繋げていこうとする動きも起きている。ジェームズらは、平和的な抗議デモに参加した黒人フットボール選手に対して、トランプが「国外追放にしてやる」と毒づいたことに反発して行動を起こしたもので、トランプの錯乱的な言辞がどんどん味方を減らし敵を増やす悪循環を招いていることが見てとれる。

崩れ始めた政権・与党体制

こうした中で、政権とそれを支える共和党の体制にもひび割れが目立つ。ブッシュ父政権の統合参謀本部議長として91年の湾岸戦争を指揮し、ブッシュ子政権では国務長官を務めたコリン・パウエルは、トランプのBLMデモへの対応を「憲法違反」と決めつけ、大統領選では民主党のバイデンを支持すると宣言した。共和党の議員も支持層も、心中ではトランプの言動をおかしいと思いながらも、今さら後に引けないとか、この局面で代わりを立てる訳にはいかないといった理由でしがみついている者が少なくないと言われているが、そこへ共和党の「重鎮」であり同党の「良心」とまで呼ばれるパウエルがこう言い出したことのインパクトは大きい。

それに励まされてか、マティス前国防長官のみならずエスパー現国防長官やミリー統合参謀本部議長までが、トランプの連邦軍によるデモ鎮圧方針に公然と異を唱えるに至った。トランプは激怒し、直ちにエスパーをクビにすると喚き立てたが、周りが「そんなことをすれば軍全体を敵に回すことになる」と説得して思いとどまらせたという。この有様を見ると、この人に「世界史上最大最強」と言われる米軍の最高指揮権を預けておくのは危険だとさえ思えてくる。

大統領選挙まで5カ月、任期満了まで7カ月、彼は心身のバランスを壊さずに職務を全うすることができるのかどうか。それができないのであれば、再選などあるはずがない。

(メルマガ『高野孟のTHE JOURNAL』2020年6月15日号より一部抜粋)

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image by: noamgalai / Shutterstock.com

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