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「太る体質」って努力不足の言い訳?筋トレのプロに聞いてみた

筋トレなどの体作りにストイックに取り組む人たちは、他人に対しても厳しい目を向ける傾向があるのかもしれません。メルマガ『届け!ボディメイクのプロ「桑原塾」からの熱きメッセージ』の読者から、「太りやすい体質なんて努力不足の言い訳では?」との疑問が寄せられました。塾長の桑原弘樹さんは、日本人の3人に1人が有酸素運動をがんばっても脂肪分解に結びつきにくい体質との報告もあると、遺伝的なパターンを3つ紹介。そうしたことを知ることと努力の組み合わせで、体質や遺伝の克服は可能ということも示唆しています。

太りやすい体質の実際のところ

Question

よく太りやすい体質だとか、遺伝的に太りやすいなどという話を耳にしますが、実際のところはどうなんでしょうか。太る人は太る食生活をしているからなのだという気もするのですが、単なる努力不足だという事で解決してはいけないものでしょうか。どうも言い訳として使っているような気がするので。(38歳、男性)

桑原塾長からの回答

体質とか遺伝というのは、あるかないかで言えばやはりあると思います。バルクアップにしても、速筋と遅筋の比率は生まれもって違いますから、スプリンターは速筋が多い人が先天的に向いていますし、マラソンランナーは遅筋が多い人の方が有利になります。

もちろんだからといって、体質や遺伝の要素ですべてが決まるかと言われればそれは間違いであって、大半は努力の部分が大きいのではないでしょうか。

速筋が少ないからといって無いわけではありませんから、筋トレに励みしっかりとした食事やサプリメンテーション、休息という要素を充実していけば間違いなくバルクアップはするでしょう。ただし、100mを9秒台で走るとか、本当のトップアスリートクラスになれば、やはり紙一重の差の所は遺伝的要素は大きいかもしれません。

ミスターユニバースの杉田会長が現役時代にどういったトレーニングをしていたかについて、よく話を聞かせてもらいましたが、確かに世界一になるだけの素質があるなと思う一方で、そのトレーニングの量も恐らく世界一だなと思った記憶があります。

私などは、トレーニングの質とか効率とかといった話に耳を傾ける時、気持ちのどこかでトレーニングの量を減らせるという期待みたいなものを持っているような気がします。元々素質がある人が、ボリュームでも図抜けた努力をされたら、そりゃぁ凡人が少々頑張っても追いつかないというものです。

肥満に関してはob遺伝子という肥満遺伝子なるものが分かっています。この遺伝子に異常があるとどんどんと太ってしまうわけですが、正常なob遺伝子が作るタンパク質をレプチンと言い、これが食欲を抑制してくれます。

レプチンは脂肪細胞でつくられるホルモンで食べ過ぎなどによって分泌される仕組みになっています。つまり食べ過ぎるとレプチンが分泌されて、それが脳の視床下部に働きかけて満腹感を伝達して、食べる事を止めるわけです。

遺伝的に太りやすいという1つのパターンは、このレプチンがうまく作られなかったり、未完成のレプチンを分泌してしまうようなケースです。そうなると視床下部への働きかけがしっかりと行えませんから、いつまでも満腹という情報が伝わらないことになり、常にお腹が空いたという状態になってしまいます。

実はもう1つ遺伝的に太りやすいパターンがあって、それはレプチンの受容体に問題があるケースです。レプチンを与えても痩せていかないネズミを調べたところ、脳細胞の表面にあるはずのレプチンの受容体が無く、いつまでたってもレプチンの満腹という刺激が伝わらないというケースがあったのです。

そしてもう1つ、別の遺伝的要因によって太りやすいというパターンがあります。それはβ3受容体という遺伝子に異変がある場合です。β3受容体とはアドレナリンの刺激を受ける受容体で、それがきっかけで脂肪の分解が進んでいくのです。

脂肪は体内では、主に白色脂肪細胞に蓄えられていて、この脂肪を脂肪酸に変換するためには、トレーニングなどの刺激によって交感神経からアドレナリンやノルアドレナリンと呼ばれるカテコールアミンを分泌させる必要があります。カテコールアミンとはいわゆる興奮系の作用を促すホルモンや神経伝達物質の総称ですが、このカテコールアミンは白色脂肪細胞の表面にあるβ3受容体に刺激を与えます。

そしてそのβ3受容体に刺激が与えられると、アデニル酸シクラーゼという酵素が活性化されることになります。このアデニル酸シクラーゼがATPをベースにしてサイクリックAMPを合成し、更にはサイクリックAMPが脂肪を脂肪酸に分解するリパーゼが活性化していきます。

つまりトレーニングなどの刺激によって興奮系のホルモンが分泌され、それを起点に次々と酵素が活性化していき、最終的に脂肪を分解する酵素に辿り着くのです。その最初の受け皿がβ3受容体です。

しかながら驚くべきことに、日本人は脂肪を分解する出発点とも言うべきβ3受容体に何らかの問題があり、せっかく運動をしてカテコールアミンを分泌させてもβ3受容体が応答しにくいという人が実に39%にも上るとの報告があります。つまり同じだけ有酸素運動をしても、速やかに脂肪が分解される人とそうでない人が存在するということです。

それに対して、コレウスに含まれるフォルスコリンにはβ3受容体を介さずにアデニル酸シクラーゼと結合し、アデニル酸シクラーゼを活性化させることが知られています。これがコレウスの機能であり、このため運動による刺激が少なくても脂肪を脂肪酸に変換させる可能性があるのです。

時にはサプリメントも活用しながら、日常生活の積み重ねの結果が今の肉体なのだという事を肝に銘じてやっていけば、体質や遺伝的要素は解決できるレベルにあると思います。

image by: Shutterstock.com

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桑原塾塾長 桑原弘樹は、国内大手食品メーカーでサプリメント事業を立ち上げ、全商品の企画開発に携わる一方、全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部PDAなどの立場で、国内外問わず多くのトップアスリートに直にコンディショニング指導を行ってきた。サプリメントは作るだけにとどまらず、「日本で一番使っているのでは」と豪語するほどのユーザーでもあり、年間300回のワークアウトも欠かさない。サプリメントやダイエットなどの分野で、多くの情報が散乱する昨今。サプリメントを作り、自ら試し、活用法を指導してきた、桑原塾長が、本物で価値あるボディメイク情報を提供すべく、スクランブル発進する!!!

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