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コロナの影響でリバースモーゲージを利用する前に知るべき注意点

近年、自宅を担保に銀行から融資を受ける「リバースモーゲージ」が大きな注目を集めています。この制度、戸建てではなくマンションでも適用されるのでしょうか。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』ではマンション管理士の廣田信子さんが、そんな疑問に答えつつ、利用するに当たり注意すべきことや、利用自体を避けるべきケースを記しています。

「リバースモーゲージ」とマンション

こんにちは!廣田信子です。

知人から、「リバースモーゲージ」ってマンションでは使えないの?と質問がありました。コロナ禍で、事業が厳しくなり、住宅ローン返済も難しくなった60歳代の友人から相談があったようです。

「自宅」という資産を、高齢者が生きている間に活用する方法として、注目されるのが「リバースモーゲージ」です。「リバースモーゲージ」を取り扱う金融機関は約70行で、10年前の20倍に増えたと言われます。でも、あまり広がっている印象はないと思います。「リバースモーゲージ」の取り扱いの額の約8割は、「東京スター銀行」によるものです。大手金融機関は扱いに慎重です。「東京スター銀行」の融資額は約1,200億円(昨年末)と言われます。

「リバースモーゲージ」は、自宅を担保に、銀行から融資を受けるのですが、普通の不動産担保ローンと大きく違うのは、返済額は原則金利分だけで、元金は死後に不動産を売却して返却するというところです。

マンションは、「リバースモーゲージ」の対象にならないということを、よく聞きます。建物より土地が担保としての評価が高いので、戸建ての方が有利なのです。確かに、大手金融機関の中には、マンションは市場価格が将来下落するリスクが高いとして、対象としないところもあります。しかし、「東京スター銀行」等では、一定の条件を満たせば、マンションも「リバースモーゲージ」の対象になります。詳しい内容は

●「リバースモーゲージ(東京スター銀行)
(特別、「東京スター銀行」を推奨するわけではありませんが、分かりやすいので…)

利払いのみの契約は、契約者本人が70歳以上(配偶者の年齢も70歳以上)という条件があります(元本の一部も返済する場合は、55歳以上から利用可)。また、自宅の評価額は、銀行による担保評価額で、戸建ての場合2,000万円以上、マンションの場合3,000万円以上、が条件です。

資金の用途は、原則、生活資金で、投資目的等には使えません。ただ、現在の住宅ローンの残金を一括返却するために融資を受け、ローン負担を軽減するという目的はOKで、実際に、そういった目的での融資申し込みは多いようです。

一般に、市場価格より銀行の担保評価は厳しいと思われます。高齢者が暮らすマンションの多くは高経年マンションで、3,000万円以上という担保評価がつくものはかなり立地のいいマンションに限られるので、一般のマンションでは、「リバースモーゲージ」は無理という印象になっているのだと思います。

今回、相談があった知人の友人のマンションは、都心にあり、7,000万円の市場価値があるというので、充分、対象になると思いますが、「リバースモーゲージ」には、様々な注意点もあります。

月々の金利は、一般の住宅ローンより高く、ローン金利が上がるようなことがあれば、負担が大きくなります。また、将来、不動産の担保評価が大きく下がることがあれば、生前でも一部返済を求められることも考えられます。夫が亡くなった後の状況の変化で、結局、妻が自宅を売却しなければならない状況になることも考えられます。ですから、家族に内緒で資金を調達するために、「リバースモーゲージ」を利用しようと考えるのは、絶対に避けるべきだと思います。

今の住宅ローンの返済が厳しくなったら、まず、今の金融機関に相談して、月々の返済額を圧縮することを考えてほしいと思います。今は、コロナによる窮状には相談に乗るようにという政府の指導もありますから、滞納が始まる前にぜひ相談を。そして、事業の資金繰りは、あくまで、政府のコロナ支援策の無担保融資を利用することを、第一に考えてほしいと思います。

コロナ禍による事業の窮状は先が見えません。高齢になって、「自宅」を失う危険を冒すのは心配です。改めて、「リバースモーゲージ」は、ローン返済も終わった一定の資産価値がある自宅を持っているが、預金はあまり持っておらず、年金だけでは、突然の出費に対応できない…という状況で、利用するべきものなのかもしれません。

今日の話とは別に、住宅のリフォームや建替えに特化した「リバースモーゲージ」型の融資制度は、住宅金融支援機構や民間金融機関でも用意があります。こちらは、今後のマンションの再生のために欠かせない制度だと思いますが、事業や生活が窮状に陥ったら、マンションの再生どころじゃないかもしれないな…と、今回の相談を聞いて思いました。マンションの再生は、なかなかたいへんです。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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