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もはや泥沼。なぜ日本のコロナ対策はここまでグズグズになったか

「緊急事態宣言」が明けてから、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない日本ですが、そもそもこのような事態を招いてしまった原因は何なのでしょうか? メルマガ『8人ばなし』の著者である山崎勝義さんは、自身のメルマガの中で、「感染拡大抑制と小康状態のときの準備」を「ハンマーとダンス」と喩えた海外の例をひきながら、なぜ日本のコロナ対策がここまでグズグズになってしまったのか、その理由について検証しています。

ハンマーとダンスのこと

「The hammer and the dance」(ハンマーとダンス)

フランスとスペインで、作家・エンジニア・ビジネスマンとして活躍するTomas Pueyo氏がオンライン・パブリッシング・プラットフォームの『Medium』上で提唱した、新型コロナウィルス対策のあり方を比喩的に表現したものである。

ハンマーは感染拡大抑制のための強烈な一撃、海外における都市封鎖、日本における緊急事態宣言を指す。ダンスはハンマーの効果によってもたらされた小康状態の間に様々な施策・準備をして次の大波に備えることを指す。これを「ダンス」としたところにPueyo氏の抜群の言語センスが感じられる名言である。

この言に従えば、

第一波

第一次小康状態

第二波

第二次小康状態

第三波

第三次小康状態

と、繰り返すことになる訳だが、重要なのは第一波より第二波が、第二波より第三波が確実に小さくなっていくというところであり、その当然の結果として第一次より第二次が、第二次より第三次の小康状態の方がより余裕が出て来るというところである。

こういった、ある意味単純な反復こそが長期戦を闘う上においては実は大切なのである。何より分かり易いからだ。基本的には戦闘態勢を解くことなく、緊張と弛緩、あるいは張りと減りを繰り返す。これこそあるべき姿なのではないかと思うのである。

連日報道されている、あの感染者数のグラフも本来なら山、谷、山、谷を繰り返し、そうこうしているうちに全体としては山の高さがどんどん低くなって行っている、というのがあるべき姿なのである。

然るに日本の現状は、と言うと、所謂第一波という山があり、その後緊急事態宣言明けの谷があり、今またどこまで行くのか分からない大山の、それもまだ登りの途中である。国民が不安になるのも当然だ。この不安がある限り、どんな景気刺激策も空しいものとなってしまうことであろう。

それにしても、これほどまでにぐずぐずになってしまったのはどういう訳か。

原因の一つは、最初のハンマーによる打撃が(諸外国と比べて)それほど力を入れていない割に効果が出てしまったことである。このせいで日本はフルスウィング恐怖症になった。やり過ぎが恐くて恐くて仕方がないのである。最近の政府の物言いを聞いていると、何がどうなろうとも緊急事態宣言はあり得ない、といった感じである。ハンマー放棄である。これにより「緊張」も「張り」も消えてしまった。同時に「弛緩」も「減り」も消えてしまうこととなった。

こうなると我々は短期戦的戦略で長期戦を闘わされることになったも同然である。もはや泥沼である。

もう一つの原因は、日本人が絶望的にダンスが下手ということである。確かに、日本では如何なる上流と言えどダンスパーティーはやらないし、高校最後の年でもプロムはない。経験がないのだから下手なのは当たり前、と言えないこともないのだろうが、これでは安っぽい比較文化論である。

ダンス期間、即ちパンデミックの小康状態における様々な準備は大げさな物言いをすれば国防問題である。国民の生命と財産を守るための計画立案能力を問われているのである。こんなふうに書けば如何にも日本政府は頼りないに違いない。何しろ小康状態の終わり(即ち、大波の始まり)に無理矢理の「Go Toキャンペーン」である。これではダンスどころか、組んず解れつ掴み合いの大祭りである。この期に及んで国民を困惑させてどうする

長期戦と腹をくくったならそれらしく、シンプルなハンマーとダンスの繰り返しに終始すべきである。

このウィルスとの闘いは2週間単位である。故に一回のハンマーは行動規制2週間、様子見1週間の計3週間の緊急事態が一つの目安となる。これが奏功したらすぐにダンスである。そしてまた感染が頭を擡げて来るようなら次のハンマー、と続いて行くという訳である。これをひたすら繰り返すのである。何度も言うが、長期戦は繰り返しである。負けなければそれでいい。十分なのである。

今、政府は迷走している。それはハンマーにもダンスにも臆病だからである。その憶病っぷりを毎日見せられてはこっちとしても堪らない。不安ばかりが募る。

立て直すなら今しかない。本当に今しかないのである。

image by: StreetVJ / Shutterstock.com

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ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

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【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

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