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武田教授が危惧。中国の急速な科学技術による監視社会の恐ろしさ

あらゆるところでネットに繋がる環境が整備され、「5G」の実用化が進み、私たちの生活にITが欠かせなくなって久しい昨今ですが、果たして私たちの生活は、科学技術の進歩によって本当に「幸せ」になるのでしょうか? そんな世界のめまぐるしい技術発展の変化に疑問を投げかけるのは、中部大学の武田邦彦教授。武田教授は自身のメルマガ『武田邦彦メールマガジン『テレビが伝えない真実』』の中で、戦後から現代までの技術革新の歴史を振り返りながら、人類の本当の「幸せ」について考察しています。

科学技術が発展してきた世界。私たちの生活はいいことだらけなのか?

技術が革新されれば、その影響で社会が変わるのは常である。家電製品が誕生すると、最初はテレビ、冷蔵庫、洗濯機が普及して主婦の生活は一変し、女性の社会進出が進んだ。第二波はクーラー、パソコン、スマホで、私生活も事務所も大きく変貌した。

それは当然であり、同時に私たちの人生も生活も大きく改善されてきた。かつて、冬は冷たい水でアカギレが絶えなかった女性の手は、綺麗なままで過ごせるようになり、不潔だったトイレは水洗、さらにはシャワートイレになって快適になった。冬の寒い日にカゼを引いていても銭湯に行かなければならなかったが、今では寒い思いをせずに風呂に入ることができる。自動車も普及して、買い物ばかりではなく、病気になった赤ちゃんを病院に連れていくことができる。

でも、科学技術も不必要に発展すると、思わぬ災害をもたらす場合もある。その典型的なものが原爆だが、世界各国が核武装することによって「全人類を数回、殺戮するだけの核兵器を持つ」という無意味な状態になっている。度重なるウイルス騒動も遺伝子組換え作物も、溢れるスナック菓子もみんな同じなのかもしれない。

ITの通信速度とデータ処理力が飛躍的に上がる、5Gと言われる次世代の通信技術は、世界中を大きく変えるだろう。技術というのはある段階を超えると突然、役に立つようになる。

一つの例を示すと、コンピュータで天気予報をしようという研究はずいぶん前から行われていたが、コンピュータがある速度になるまでは役に立たない。現在までの気圧配置、風や雲の状態などをコンピュータに入れると1日後の予想が計算で出てくる。それは簡単なのだが、その計算に2日かかり、計算が出た時には昨日の天気を予想するようなことになったというのでは役に立たないからだ。

現実的には「明日」が来るまでに「明日の天気」を計算できなければ、予想は役に立たないのである。

それと同じで、パソコンやスマホも、ある技術レベルになってから爆発的に普及する。これまでも3Gとかいろいろな段階があり、その度にネットが誕生したり、スマホが普及したり、駅の改札が自動化されたりしている。

利便性の高さだけではない。科学技術がもたらす「監視された社会」

ところが今、話題になっている5Gとその周辺のIT技術の進歩は、全世界の人々の行動をすべて瞬時に処理できるレベルになることを示している。

例えば、すでに中国で実用化されている「天網」というシステムは、全世界の人々を、スマホの位置情報、お金の支払い、搭載された内蔵カメラ、街角に配置された監視カメラ、家庭や職場で使うパソコンなどの情報機器などから自動的(個人識別によって知らないうちにデータを取るなど)に個人データを取得して、それを整理し、監視するのに「すでに」たった2秒で出来ると言われている。

こんなことが本当にできるのか? と疑問に思ったイギリスBBCの記者が、中国に入国して軽い罪(パンを盗むというような行為)をしてみたら、たった7分で逮捕されたと報告されている。すべての人のすべての行動を観察して、違法行為や政府に反する行動などをとると、それを瞬時に逮捕できるレベルなのである。

話題になっている「タクシーの自動運転」が実用化したら、タクシーの人件費はタクシー代の4分の3だから、タクシー料金が電車賃に近くなる。そうなると、多くの人がタクシーを利用するようになるので、電車がなくなる日も来るのかもしれない。

肉体労働、知能労働を含めて、ほとんどの労働がITでできるようになるので、現在の職業の多くが姿を消すだろう。でも、失業するという心配はいらない。それだけ高度な職業ができて、より豊かな生活が実現するからだ。もちろん、銀行預金通帳、現金の代わりに使うカード、履歴書、病歴のカルテなども無くなり、人物の特定とその人物に関する情報はすべて集中的に管理されるから、便利と言えば便利だが、あまりに個人的な秘密が無くなるから困るということもあるだろう。

でも最大の問題は、技術によってそれまで考えられなかったことが起こることだ。たとえばダイナマイトが発明されたら戦場で残忍な殺戮が行われ、それを防ぐために「ノーベル賞」が設立された。第二次世界大戦では、原子力の研究を利用して原爆ができて大量殺戮が現実に行われた。

科学技術は人類を幸福にもするが、不幸にもする。(メルマガより一部抜粋)

image by: helloabc / Shutterstock.com

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中部大学教授の武田邦彦です。主に環境問題や資源に関して研究を行っております。 私のメルマガでは、テレビや雑誌新聞、ブログでは語ることが出来なかった原発やエネルギー問題に鋭く切り込みます。

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