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クールジャパンは児童ポルノか?「漫画やアニメと性犯罪の関係」不都合な事実

漫画やアニメを初めとするメディアの性表現は、子どもにどのような悪影響を与えているのか?少年誌の過激シーン規制を求めるネット署名活動が行われるなど、今この問題があらためて注目されています。メディア研究者・ジャーナリストの渡辺真由子さんは、メルマガ『週刊メディリテ!』の中で、「性被害は社会に氾濫するメディアの性情報と相当程度関わっている」と指摘。青少年が性犯罪の被害者や加害者になりかねない深刻な現状を、具体例を挙げながら分析しています。

狙われる子どもの性

青少年の「性」が狙われる傾向は、スマートフォンやSNSの普及に伴って高まりを見せている。

警察庁の調べによれば、2019年にインターネット上の交流サイト(SNS)を通して児童ポルノや強制性交等などの事件に巻き込まれた青少年は2082人に上り、過去最多を記録した(警察庁)。

一方、青少年の性被害は、加害者が常に成人であるとは限らない。

青少年が青少年に対して性的な加害を行うケースが、「デートDV」で多発している。デートDVとは、主に恋愛における力関係の不均衡によって起きる、身体的・精神的・性的な暴力をいう。

大阪府の高校生グループが中高生約1000人を対象に行った調査では、交際相手から性的な強要をされたことのある女子は16%に達する。

大人からも、さらには同年代の相手からも狙われる青少年の性。

こうした青少年の性被害が、われわれの社会に氾濫するメディアの性情報と相当程度関わっていることが、筆者の取材及び研究で明らかになってきた。

「小学生女児と性交」する内容の創作物が氾濫

まず、大人が置かれている環境として、青少年を性の対象とすることを肯定するメディア文化が挙げられる。

テレビでは10代のアイドルが下着の見えそうなミニスカートを着用して歌い踊り、ネット上では小中学生が際どい水着姿をさらすDVDが売られている。

さらに、マンガやアニメ・ゲームといった創作物には、成人男性が小学生女児と性交する内容の作品が溢れている。

女児も性行為や性交を望んでいる、あるいは最初嫌がっても次第に喜び出す、といったストーリーが多い。

18歳未満は閲覧禁止のものも、大人であれは見放題である。

こうした創作物が、現実の青少年に対する性犯罪に影響したとみられるケースも散見されるのは、筆者がメルマガなどでも再三指摘している通りだ。

性的メディアにおける描写の問題点

性的なメディアに接するのは大人ばかりではない。青少年も思春期を迎えれば、性情報を求めるようになる。

筆者は東京都内の複数の大学に通う男女計141人を対象に、性とメディアに関する様々な事柄についてアンケート調査を行なった。

それよると、初めて性的メディアに接した時期は、男子も女子も「小学5年生未満」がトップである。

小学校高学年から始まる学校での性教育をめぐり、「性に関して何も知らない子どもたちを刺激し、『寝た子を起こす』のではないか」との議論が教育界には根強いが、子どもたちはとっくに目覚めている。

性的メディアの入手方法も、現代の青少年はネットを駆使するため、都道府県の青少年健全育成条例によるゾーニングなどは、もはや有効に機能しているとは言い難い。

ネット上の性的なサイト等の閲覧をブロックするフィルタリングも、小中高生の利用率は全体でわずか35%にとどまる(デジタルアーツ、2020年)。

筆者のアンケート調査によれば、性交のために最も参考にする情報源として、男子の6割が性的メディアを挙げている。

性交そのものを描くアダルトDVDなどに加え、性交に至る「誘い方」を指南するネットや雑誌のマニュアルも活用している。

メディアが青少年の「性の教科書」と化しているようだ。

対して「家庭」「学校の性教育」を情報源として挙げた者はゼロだった。

性教育が10代での性交渉を抑制する立場から行なわれてきたためか、「実用的」とは評価されないようである。

家庭でも性に関する情報提供が十分になされず、青少年が性知識をメディアで埋め合わせざるを得ない現状が浮かび上がる。

このことは、青少年の間に性的トラブルが頻発する事態と、何らかの関連性があるのだろうか。

テレビの情報を鵜呑みに

ヒロユキは高校3年の時、合コンで出会った女の子の家に招かれたことがある。「この子、Hしたいのかな」と思い込んだヒロユキは、早速とばかりに彼女に迫った。ところが、強く拒否をされた。

「何なんだこの女、ふざけんなと。お前も家に呼ぶなよ、と思いました。テレビではお笑いタレントたちが『家で2人きりになったら、やらなきゃいけないっしょ』と、よく発言していたんですよ。そんなもんかな、と思っていたのに」

「家へ呼ぶ」手法は、女性を性交へ持ち込む王道として、誘い方マニュアルに君臨する。

中高生も目にするメディアで、「『部屋で映画を見よう』と誘え」「ベッドに座らせて一気に押し倒せ」「家に誘って何もないと、女のコもしらけちゃう」といった「指導」が乱れ飛ぶ。

だが現実には、「何もしないから」と言う相手を信用し、家へ行く女子も多い。逃げにくい密室の中で彼女たちは、望まない性行為の被害者となる。

もちろん、女子に嫌がられた時点で男子が迫るのを止めれば、悲劇は防げる。だが実際はそう簡単にいかない。

女性の「ノー」を信用できない

サトシは高校2年生の時、付き合い始めたばかりの女の子を家へ連れてきた。家へついてきたからには性交して構わないだろうと思い迫ったところ、「えー、やだ」と断られた。彼女の「ノー」を額面通り受け取っていいものかどうか、サトシは一瞬迷ったという。

「雑誌のマニュアルに『女性が嫌がるのはポーズ』と書いてあったんですよ。アダルトDVDだって、大体女性が嫌がっているところからスタートする。嫌がって、でも脱いだらそのうち乗り気になってくる、ってパターンが多いですから。だから彼女にノーと言われたときも、『これはいいのかな、行けるのかな』という考えが頭をよぎりました」

女性は口では「ノー」と言っても性交を望んでいる、最初は嫌がってもだんだん気持ちよくなってくる……。

こうしたストーリーは、アダルトDVDやマンガに非常に多い。男性が女性に強引に迫る口実ともなる。

メディアは、自分たちが無責任に発信する情報が青少年間のデートDVを引き起こしかねない現状を、深刻に受け止めなければならない。

image by : shutterstock

渡辺 真由子この著者の記事一覧

「メディアの裏に隠された意図」とは何なのでしょうか? 元テレビ局記者でメディア研究者・ジャーナリストの渡辺真由子が、自らの現場体験と、本場仕込みのメディア・リテラシーで、広告・テレビ・新聞・映画・インターネットの裏に隠された作り手の意図を読み解きます。 自分の頭で情報を判断したいあなた、メディアと付き合うノウハウを、まずはしっかり身に付けましょう!

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【著者】 渡辺 真由子 【月額】 【発行周期】 毎週 月曜日(祝祭日・年末年始を除く) 発行予定

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