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松本人志にYouTuberが勝てぬワケ。「笑ってはいけない」企画の本質とは?

「しくじり先生」などを担当するフリーのテレビディレクター宮本大輔さんが、具体的なテレビ制作のノウハウや手法を毎週解説するメルマガ『テレビ解体新書』。今回は、年末恒例番組「笑ってはいけない」シリーズの企画分析と、老若男女みんなが楽しめる番組の企画手法の2号分を丸ごとご紹介します。テレビ業界を志す人はもちろん、企画やマーケティングで悩むすべての方に役立つ『テレビ解体新書』、お試し定期購読は初月無料です。

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その企画は表か?裏か?(メルマガ第195号)

「テレビのような企画をやりたい」YouTuberが知るべきこと

最近は芸能人だけでなくYouTuber案件のお仕事の相談も時々受けます。そこでよくあるリクエストが「『テレビバラエティ』のような企画をやりたい」。

20年もテレビのバラエティの仕事しかやってきてないので当然と言えば当然ですが、先日、こんな相談がありました。

若い子たちには人気のあるYouTubeのユニット。このメンバーで年末の恒例番組「笑ってはいけない」シリーズをやってくれないか?結果を先に言うと、やりませんでした。というか、高い確率で成立が難しいというお話をしました。

その理由としては、年末の笑ってはいけないシリーズは1枚裏を行っている企画だからです。

「笑ってはいけない」を真似してはいけない

世間一般的には「裏をいっている企画」と聞いてもピンとこない人が大多数だと思います。それは世間一般的に認知されているから。本質的なところに戻って考える必要があります。

まず、スタンダードは「笑ってください」です。これからあなたたちには内緒で色んな人が登場するので笑ってください。これがスタンダードな姿です。いわゆる今でいう「有吉の壁」みたいな企画。

でも、そこを、あえて「笑ってはいけない」にしている。1枚裏をいっているのです。

悪い言い方をすると、登場して芸を披露する人で笑うのではなくて、笑いを我慢しているダウンタウンで笑う企画です。

そして、この1枚裏をいく企画を実行できる人はとても限られます。まず、世間的に認知されていること、そしてなおかつ「おもしろい人」という前提で見られている人であることです。

なので、YouTuberがやるにはハードルが高すぎますよ。やっても良いけど満足するのは本人達のファンだけで一般的には高い確率でスベリますよ、とお伝えしたのです。

【関連】テレビ制作者が解説「ワイドショーで芸人がコメントをする」深い理由

「スタンダード」と「トリッキー」にまつわる誤解

よく、芸事ではスタンダードが大事。スタンダードがわかってからトリッキーな事をせよ、なんて格言じみたことが言われますが、正確には違います。

本人がスタンダードを基本にしているとか、本人が重じているとかはどうでも良くて、世間の認知はどうなのかってことです。

そこの本質はエンタメの本質で、芸事は「夢を与える仕事である」ここからスタートしていることを認識していなければなりません。

なので、スタンダードを知らなくても売れている人、人気のある人はいます。技術がなくても人気のある人は事実いる。実力は関係ない。世間がどう思っているか?それだけです。

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世帯視聴率と個人視聴率(メルマガ第191号)

「年齢性別関係なく、みんなが楽しめる番組」の難しさ

最近、各局によって視聴率の見方が全然違っていて、局をまたいで仕事をしている我々フリーランスは若干困惑しています。

というのも、昨年から若者のテレビ離れを脱するため、これまで視聴率の指標であった世帯視聴率から個人視聴率に重点をおくようになったからです。

簡単に言うと、世帯視聴率は視聴率を世帯別にカウントした指標。4人家族の家でテレビがついていた場合、4人が見ている計算になります。これは「テレビは一家に一台」、昭和の名残です。

それに比べて個人視聴率は名前の通り、視聴率を個人別にカウントした指標。より正確な人数が算出されるようになります。

では、個人視聴率に重点をおくようになり、具体的にどのような違いや特徴がでてくるのでしょうか。

まず、「家庭内のチャンネル権」は関係なくなります。なので、「アニメは子どもが見れる夕方」とか、対象が明確な番組を配置するタイムスケジュールは崩壊していきます。

個人視聴率で求められるお題は「年齢性別関係なく、みんなが楽しめる番組」です。どの局も上記課題を掲げるのですが、現場からすると「そんな番組が明確に作れるなら苦労してねーよ」です。

若者は、おじさんの「面白い」に付き合ってくれない

ここからは方法論になるのですが、どうやって年齢性別関係なく楽しめる理想の番組に近づけるか?

まず、視聴者を簡易的に2つに分けてみます。「若い世代」と「年配世代」。

おじさんは若いものが面白いと言っているものを見ようとはします。しかし、若者はおじさんが面白いと言っているものを見ようとはしない。

この考察から言えることは、若い世代向けの番組に年配を引っ張り込むことはできるけど、年配向けの番組に若い世代を引っ張り込むのは容易ではない、ということです。各番組がお笑い第七世代を使いたがっている現状はこれが大きな要因。

その考察に「男性」「女性」の軸を加えてみます。年配女性が若者男性の番組に興味は示すけど、年配男性が若者女性の番組に興味をしめすことはないと予想できる。

そうなった時、引っ張りこめるベクトルを流れにした時に、最も流れが集まりやすいのは若者男性向けの番組。

だからといって若者男性向けの番組を作れば良い!と断言できるレベルではありませんが1つの傾向になるとボクは考えています。

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「若者男性向け」にプラスアルファ

そして若者、年配、男性、女性と流れを図式化した際に「吹き溜り化」するポイントがあるのも重要です

この2つ。

若者男性向けだけど上記2つのエリアどちらかに刺さる番組は、割といい勝負できるのではないかと考えています。

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image by : 1000 Words / shutterstock

宮本大輔この著者の記事一覧

テレビはどうやって作られているのか? 現在フリーのテレビディレクターが 16年間のバラエティ番組制作の経験の中から 具体的なテレビ制作のノウハウや手法をここに記していきます。 これからテレビ制作の現場につきたい人。 これから番組に出て爪痕を残したいタレント志望の人。 微力ながら、そんな方のためになることができたら本望です。

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