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10年後の「あおり運転犯」は、いま親から「早く食べなさい」と叱られている

社会問題となった「あおり運転」において、「あおり」行為に及んでしまうきっかけの一つに、前を走る車のノロノロ運転があります。「のろい」ことに怒りの感情が湧いてしまうのはなぜなのでしょうか。無料メルマガ『子育て相談室便り(非行 不登校 引きこもり)』の著者で、引きこもり不登校の子供を持つ母親を支援している「ラカン精神科学研究所」を主宰する登張豊実(とばりとよみ)さんは、子ども時代に親から「早く、早く」と急き立てられたことによる「切迫感」が大きく影響していると分析。切迫感は強迫観念を生み、強迫神経症の原因にもなると、伝えています。

子ども時代の母の「早く、早く」が大人になってあおり運転に繋がる

昨今、ニュースでよく耳にする『あおり運転』。

『あおり運転』の元にある性格は、子ども時代によく聞いた親の「早く、早く」の言葉からつくられます。

「早く、早く」は急き立てによる切迫感。「早くしないと学校に遅れる」、「早く食べなさい」、「早くお風呂に入りなさい」「早く寝なさい」…。

このように母はいつも「早く、早く」とあおっていました。

すると、「のろい」という文字が発生します。のろく走る車を見ると、かつて自分を急き立てた母になってしまう。

急き立てられていた主体が、一瞬にして急き立てていた母に入れ替わって、あおってしまう。

この切迫感は切迫流産にも繋がります。

すべては文字、言語です。どの言葉が自分を引っ張り、導いていくか。

親の急き立てが、後に子どもの強迫神経症に至る

「早く!早く!」と急き立てられて、いつも追い立てられていると感じる、この『切迫感』が強迫観念をつくります。

後ろから追い立てられると『早くしなければ』と焦り、自分のペースを維持できず、乱されてしまいます。

ここで強迫観念が生まれ、これが固定化すると強迫行為になっていきます。

強迫行為の代表的なものがきれい・汚いにこだわる、清潔恐怖症です。

手を洗ってもきれいになったと思えず、何度でも洗い続ける人がいます。

そして、鍵を閉めた・閉めないの確認強迫があります。

一応の目安として、鍵を閉めたかどうかの確認のために4回以上ドアノブを引っ張ると病理と診断します。ドアノブを壊す人もいます。

ガスの元栓の確認に時間がかかるのも同じです。

「早く!早く!」と急き立てられる切迫感は、“早く”と“のろい”の対立です。

自分はのろいと思っている人には、いつも「早く」の声が聞こえています。

清潔恐怖症は、手を洗ってきれいになったと思っても、「汚い」の声が聞こえます。

この声が自分の中で聞こえてやかましいが、振り払えない事が病理です。

また、きれい・汚い、閉めた・閉めないにこだわり、囚われて、無意味な思考・行為を繰り返し、やめたいけれどやめられない。

ここには何の蓄積もなく、充実感もありません。

心の空洞化と、虚しさだけがあり、虚しいとわかっていながらやめられず繰り返すので、余計に虚しく、疲れ果ててしまいます。

これを強迫神経症といいます。

今ここに生き、心と身体を一致させる

強迫神経症の人達には“今ここに生きる”がありません。

いつも切迫感で追い立てられているために、“今”がなく、“今を味わう”ことができません。

現実感覚がありません。

“今ここに”を味わうことができるようになることです。

そのために、「ねばならぬ」を捨て、現実を認識できるように、自分が今していることを言葉にして言いながら行動します。

味わうことの訓練として、舌でよく食物を味わうのもいいでしょう。

今、美味しいものを食べて、またはリラックスして、好きなことに興じて、体が喜んでいると感じられる。

この体の喜びは心の喜びになります。

(大澤秀行氏の著書『交通事故と無意識』より一部引用)

大澤秀行氏HP「LAFAERO1」

ラカン精神科学研究所HP

image by: Shutterstock.com

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精神分析家。ラカン精神科学研究所(埼玉県鴻巣市)主宰。
1958(S.33)年生まれ。出身:滋賀県大津市。
会社勤務の後、結婚。子育てに悩み精神分析治療を受ける。精神分析講座を受講の後、独立開業。分析家として、引きこもり不登校の子供を持つ母親を支援している。

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【著者】 登張豊実 【発行周期】 ほぼ 月刊

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