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「再雇用で給与が大幅ダウン」貰える年金額も下がってしまうのか?

60歳以降も再雇用や継続雇用で働く人が多くなっていますが、気になってくるのが年金の問題。再雇用で今までよりも給与が大幅に下がった場合、厚生年金はどうなるのでしょうか?今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、そんな気になるケースを詳しく解説しています。

高い給与平均で厚生年金貰ってる人が、再雇用等にて低い給与で働いたら年金が下がってしまうのか

厚生年金って年金貰うまでに加入してきた時までの給与と、賞与の総額を平均して年金額を計算します。だから、入社した時から引退するまでの給与や賞与がすべて足されて、それが平均されるわけですね。

例えば若い頃は20万円くらいの給与で1年間働いて、その後50万円の給与で1年間働いた場合の平均は(240万円+600万円)÷24ヵ月=35万円になりました。この35万円を用いて年金額を計算します。単純に年金額を計算すると、35万円×5.481÷1,000×24ヵ月=46,040円の年金になります。

ところで定年後も働いてる方は多いのですが、再雇用とか継続雇用をする時に大幅に給与が下がるケースが大半です。そこで一つの疑問を持たれるのですが、低い給与で働く事になると、その結果として全体の給与平均が下がって年金額を下げてしまう事になるのではないか?と。

確かに、過去から今までの給与の全体の平均を取るので、せっかく高い給与だった人が低い給与で働く事になると給与の平均を下げて年金額を下げる事になりそうですよね。果たして年金額は下がってしまうのかを検証していきましょう。

1.昭和32年8月生まれの女性(今は63歳)

(令和2年版)何年生まれ→何歳かを瞬時に判断する方法!

絶対マスターしておきたい年金加入月数の数え方。

20歳になる昭和52年8月時点では外国に在住していたため(国籍は日本)、国民年金には加入できなかった。昭和61年3月までの海外在住期間は国民年金には加入不可だった。昭和61年4月以降の海外在住期間は任意で国民年金加入は可能にはなった。昭和52年8月から昭和57年5月までの58ヶ月間はブラジルで過ごす。

なお、この58ヶ月間は国民年金には加入できなかったので年金額には反映しないが、年金受給資格期間最低10年には組み込むカラ期間にはなる。

昭和57年6月からはサラリーマンの男性との婚姻を機に日本に帰って住むようになる。婚姻したのがサラリーマンの男性だったので、この女性は引き続き国民年金には加入する必要は無かった(昭和61年3月31日までの時代は)。

昭和57年6月から昭和59年3月までの22ヶ月間は国民年金には加入する必要は無かったが、将来の事も考えて任意での加入をした。一緒に付加保険料毎月400円も22ヶ月間納めた。

昭和59年4月からは民間企業に就職し、60歳前月の平成29年7月までの400ヶ月間は厚生年金に加入した。なお、昭和59年4月から平成15年3月までの228ヶ月間の給与平均(平均標準報酬月額)は25万円とし、平成15年4月から60歳到達月前月の平成29年7月までの172ヶ月間の給与と賞与の合計を平均したもの(平均標準報酬額)は48万円とする。

さて、この女性の生年月日を見ると、60歳(平成29年8月に受給権が発生する人)から厚生年金が貰える。

厚生年金支給開始年齢(日本年金機構}

・60歳からの老齢厚生年金→25万円×7.125÷1,000×228ヵ月+48万円×5.481÷1,000×172ヵ月=406,125円+452,511円=858,636円(月額71,553円)

ところが、60歳以降(平成29年8月)に継続雇用として働き続ける事を希望したため、60歳以降は月10万円(標準報酬月額98,000円)で働く事になった。賞与なし。毎月の厚生年金保険料は98,000円×18.3%÷2(労使折半だから本人負担分)=8,967円の負担だった。保険料徴収する際は単純に給与に保険料率を掛けてるわけではないです。

あと、年金を貰いながら厚生年金に加入すると年金停止の問題が出てくるんですが、年金月額71,553円と月の標準報酬月額98,000円の合計が28万円に届かないため、年金は停止されない。

ここで今回の問題として、60歳の定年後に継続雇用で非常に低い給与で働いてますよね。なんとかそれまでに平均が48万円になるほどまでに高くなってたのに、10万円を加えるようになったら平均が下がるのではないか?!とちょっと不安になった。

一旦、平成29年8月から令和2年10月までの39ヶ月間10万円(標準報酬月額98,000円)で働いたとしましょう。まあ、39ヶ月間働いたので、退職月の翌月である令和2年11月分の年金額から変更になる。ここで平成15年4月以降の給与の平均をしてみましょう。

・48万円×172ヵ月+98,000円×39ヵ月=8,256万円+3,822,000円=86,382,000円

この86,382,000円を(172ヵ月+39ヶ月=211ヶ月)で割って平均しますと…409,393円に下がってしまいました^^; 平均が48万円あったのに、40万円まで下がってしまいました。

めっちゃ平均標準報酬額下がっとるやん!年金が下がるやんか!o(`ω´ )oプンスコと思われたかもしれないですね。とりあえず令和2年11月からの年金額を再計算してみましょう(退職改定)。

・令和2年11月分からの老齢厚生年金→25万円×7.125÷1,000×228ヵ月+409,393円×5.481÷1,000×211ヵ月=406,125円+473,459円=879,584円(月額73,298円)

となり、60歳時点よりも年金額は高くなりました。これは給与額がどうこうというよりも、加入した月数さえ増えれば必ず年金額は増える。考え方としては、60歳時の25万円×7.125÷1,000×228ヵ月+48万円×5.481÷1,000×172ヵ月=406,125円+452,511円=858,636円(月額71,553円)があったじゃないですか。

そこに98,000円×5.481÷1,000×39ヵ月=20,948円が足されたと考えればいいです。そうすると858,636円+20,948円=879,584円になるから結局金額は同じ。

よって、今まで給与が高かった人が低い給与で働く事になったとしても、年金は増える事になるので低い給与でも安心して働いてもらえればいいです。

ついでに、65歳からの年金総額を算出します。

・65歳からの老齢基礎年金→781,700円÷480ヶ月×(任意加入22ヵ月+20歳から60歳までの国民年金同時加入期間である厚年期間400ヵ月)=687,245円

・付加年金→200円×22ヵ月=4,400円

・老齢厚生年金(報酬比例部分)→89,584円

・老齢厚生年金(差額加算)→1,630円(令和2年度価額)×439ヵ月(全体の厚年期間)-781,700円÷480ヶ月×400ヵ月(20歳から60歳までの国民年金と同時加入状態の厚年期間)=715,570円-651,417円=64,153円

よって、65歳からの年金総額は老齢基礎年金687,245円+付加年金4,400円+老齢厚生年金(報酬比例部分879,584円+差額加算64,153円)=1,635,382円(月額136,281円)

※ 追記
過去の年金記録が間違っていて(消えた年金記録の対象者だったとか)、加入期間は増えずに過去の給与額が下がるだけのような場合は年金額が下がる事はある。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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