世界中のありとあらゆる常識を一変させてしまった、新型コロナウイルス感染症。もちろん私たちの普段の生活にも大きな変化が訪れました。今回の無料メルマガ『システマティックな「ま、いっか」家事術』で著者の真井花さんが考察しているのは、新型コロナを想定した「新しい生活様式」について。真井さんはこの言葉が指すものが、「コロナ感染防止のための生活習慣」のみに留まらないとして、新しい生活様式下において男女を問わずすべての人間に求められている「常識的スキル」を解説しています。
新型コロナが要求したもの
さて、本日は新型コロナで脚光を浴びたもののお話。
今年の年始には、中国でミョーな肺炎が流行り始めていましたね。その後、あっという間に日本にも世界にも感染が拡大し、記憶にないほどの重苦しく暗い春を過ごしました。
そんな中、注目されたのが「新しい生活様式」です。主として、新型コロナ感染防止のための生活習慣を指す言葉ですが私はそれに留まらないと思っています。
新型コロナ以前、家事系メルマガを書いている者として注目していたのは
- 洗濯はコインランドリー
- 冷蔵庫は近所のコンビニ
- 服は保管サービスかメルカリ
というライフスタイルでした。これはつまり
- 自分のスキルではなくサービスを利用
- 家のナカのストックではなくオンデマンド購入
ということです。
家庭内で行われてきたこと、個人的な振る舞いのひとつと考えられてきたことが、インフラに乗っかった有償サービスとして提供されているのです。
日本の家事が加重になっている原因はいろいろありますが、ひとつには
- 家事を社会的サービス・インフラに頼るのが下手
という社会文化的な理由があったと思っていました。なので、こうしたサービスを上手く頼っていければいいし、その先に家事労働が家庭内で
- 極限まで低減することもあるかもしれない
と思っていました。家庭内で家事をするのは、趣味になるのです。
そして、当然ですが、社会的なインフラが整っていることがこのライフスタイルのキーです。そして、このインフラには地域格差があって、実はイナカではそれほど整備されていないので、つまり
- サービス対象地域外( ̄∇ ̄)
なので、この生活をイナカでスムーズに回そうとしても、上手くは行かないんですよね。
大都市には、この高度なインフラがちゃんと整備されているので、大都市限定のライフスタイルだなと思っていたんですよ。
ところがだ。そう、ところが。
大都市の高度に整備されたインフラに依存しているので、停電や洪水などで都市のインフラが破壊されると、あっという間に破綻してしちゃうんですよね。
しかも、今年明らかになったのは、そうした自然災害以外の別の脅威の存在です。新型コロナは、人々の外出を厳しく抑制しましたね。モノがあっても買いに行けず、サービスも停止しました。このため
- 自分にスキルがない
- 家にストックがない
という、ライフスタイルは文字通り直撃を食らいました。
外出のままならない新型コロナ以降の「新しい生活習慣」の元では結構キツかったはずです。
- 食べ物を調理できない
- 服を洗おうとしても洗濯機がない
- 掃除や片付けもままならないのに、消毒や除菌を要求される
…こんな感じだったんじゃないでしょうか。とりわけ、大都会型のライフスタイルを実践していた都会の単身世帯は。
新型コロナで露わになった都市型ライフスタイルの脆弱性のお話でした。
サービスとインフラの充実した大都市では、家事がソトに持ち出され家のナカにはあんまり残らない状況になりつつあるときに、新型コロナが感染拡大しました。そのため、家で家事を回すのがタイヘンだった世帯もあったはずです。新型コロナのおかげで、家事をナカでやることがちょっと見直されたと思うんです。
さて、それじゃあさ。
新型コロナ以前は、どうだったんでしょうか。洗濯は、料理は、掃除は、どうやっていたんでしょうか。そう
- 女性が
やっていたんですよ。男性が家事に参加するようになっているとはいえ、データが示すように大半の家事を担っているのは女性です。なので、ここでは「女性」と書いておきます。
家庭内の成人女性という存在は、日本ではあたかも
- 家事のためのインフラ
みたいなものなんです。これが整っていることが家庭を回す重要なキーでした。しかも、長い間女性が一手に引き受けていたため、男性は家事をせず家庭外の仕事に集中してきたので、家庭だけでなく産業社会構造自体の基本的な前提条件でもあったんです。女性が家事を担わないと、家庭だけでなく社会自体が立ちゆかない構造だったんです。
いや、ホントですよ。男性が「オレは仕事をしてきた!」とどれほど言っても、家事を丸投げできる相手がいればこそだったんですから。
まあ、多少キツめの別の言葉でいえば
- 女性に依存していた
ということでしょう。依存の例に違わず、家事を依存することは、女性の生き方だけでなく男性の生き方も、社会の有り様も、狭く小さくしてしまうものです。
そこで、現在、日本の家庭はここからの
- 脱却の途中
です。調理家電や掃除ロボットが出現し、男性たちの家事参加が推進され、女性への一極集中が低減しつつあるのです。実に喜ばしいことです。
そこに、新型コロナによってさらなる一押しが加わりました。家事をソトに持ち出せばよいという解決方法の脆弱さが明らかになり
- 個人が自分の身仕舞いの延長として、ある程度家事ができる
ことを要求したのです。これが都市インフラにも女性にも、依存しすぎていない状態で、
- もっとも自律的で生存を易しくする
在り方なのです。もはや、男性か女性かという区別は無意味です。オトナになるための当然の常識的スキルとして、ある程度の家事が
- できなければならない
のですよ。
12月以降、占星術的にも「自律的な個人であること」が求められるようになります。新型コロナを糧にして、新たな時代に備えたいですね。
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