トランプ陣営は未だ大統領選の敗北宣言を拒否したままではあるものの、政権移行準備を進めるバイデン氏。しかし、「バイデン新大統領」を不安視する声も各国で上がっているようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんが、イギリスや台湾で広がる懸念の具体的内容や、バイデン一家と中国との間に囁かれる「好ましからざる関係」を紹介。さらに米国が頼りにならないならば自らの身は自分で守るしかないとして、日本に対して自立を求めています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年11月11日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【世界】バイデン次期大統領に世界から上がる不安の声、日本自立のときがきた
先週、トランプ有利とお知らせしましたアメリカ大統領選挙ですが、一夜で形勢が逆転し、バイデン候補が勝利宣言を行いました。
それでもまだトランプ大統領は訴訟を起こして逆転する気であり、完全に確定したわけではありません。
先週のメルマガでは、トランプ、バイデンのどちらが大統領になっても、対中政策は大きく変わらないだろうと論じました。アメリカでは民主党、共和党ともに中国に対しては非常に厳しい姿勢であり、アメリカと台湾の高官の相互往来を解禁する台湾旅行法や、台湾の外交的孤立を防ぐ台北法も、議会を通過し、その後、大統領の署名で成立したものだからです。
茂木外務大臣も11月10日の記者会見で、国際協調を重視するバイデン政権でも、中国に対する厳しい姿勢に大きな変化はないという見方を示しています。
しかし、一方ではやはり対中政策での不安が出始めています。下院は民主党が握っていますが、これまで上院については共和党が過半数を持っていました。しかし、上院選挙後の現在では民主党・共和党ともに48議席で、来年1月にまでどちらが過半数を取るかは決まりません。
ここで上院も下院も民主党が取ると、外交もより民主党カラーが強くなってくると思われます。とくに副大統領のカマラ・ハリス氏は超リベラルで知られています。すべて民主党の思うように議会運営ができるようになると、対EUのみならず、アジア政策も大きく変わる可能性もあります。国内ではオバマケアも復活するでしょう。
冒頭の新聞記事は、台湾の自由時報が、世界各地で上がる懸念の声を報じたものです。これによると、イギリスのフィナンシャル・タイムズは、9日、バイデン次期大統領がアメリカの国際関係の修復を公約したものの、アジアの同盟国の関係者や専門家から、オバマ時代の「戦略的忍耐」を繰り返さないよう警告する声が上がっていると報じました。
バイデン候補は10月のトランプ氏との討論会で、北朝鮮の金正恩氏を「チンピラ」と批判し、「核戦力の削減」に合意した場合にのみ会談すると述べましたが、韓国ソウル延世大学のジョン・デルリー教授は、アメリカがオバマ大統領の「戦略的忍耐」政策に逆戻りし、平壌との接触をほとんど持たないようになれば、北朝鮮は核兵器開発技術を急速に進展させる可能性があると警告しています。
とくに台湾でも懸念が広がっており、民進党の王定宇議員は、アメリカの中国に対する見方が「脅威」から「競争相手」に変わる可能性があることを認め、アメリカにとっては些細な外交的転換かもしれないが、台湾にとっては死活問題となるだろうと述べています。中国の東海、南洋進出が加速される可能性もあります。
とはいえ、中国は、バイデン氏に対して、警戒感を解いていません。オバマ政権時、最初は蜜月関係を演出して「新型の大国の関係」をアメリカに認めさせようとしていましたが、アメリカへの相次ぐハッキング攻撃などにより、最終的にはオバマ政権を怒らせてしまい、南シナ海での「航行の自由作戦」を招いてしまいました。
トランプ大統領誕生時、習近平政権はビジネスマンのトランプ氏を与しやすしと考え、最大級のもてなしで中国に招きましたが、それも読みが甘く、結局、米中貿易戦争から現在の対立関係まで進んでしまいました。
ニューズウイークによれば、アメリカ国内には中国共産党と連携し、その指導に従う組織が600ほどもあると判明しているそうです。同記事によれば、FBIのクリス・レイ長官は7月にハドソン研究所で行った講演で、FBIは10時間に1件のペースで中国絡みの新たな事案の捜査に着手しており、現時点で抱えている5,000件近いスパイ事件の半数近くに中国が関与していると述べたとのことです。
SNSなどを駆使して誤情報を流し、アメリカ社会の分断を狙っているのが中国です。そして、この大統領選挙を前後して、アメリカ社会の分断はまさに深刻化していました。
上記のニューズウィークでは、フェイスブックやツイッターで政府のコロナ対応や人種差別問題を批判する投稿を繰り返す、アメリカ人を偽装する中国人の活動が語られています。
こうした投稿は、文章が不自然で、時々中国語の漢字がまざっており、比較的目につくそうですが、別の無数のアカウントから書き込みがされている大量の投稿にも同じような特徴があるとのことです。
こうした活動は大統領選投票日が迫るなか活発に続けられ、グーグルやマイクロソフトも、直近の6週間にトランプ、バイデン両陣営の関係者に対するサイバー攻撃の試みで中国系組織の関与が疑われるものが複数あったと発表しています。
当然、バイデンや民主党側もこうした中国の工作活動は知っており、警戒感を持っているはずです。前述したように、オバマ大統領の時代から、中国のサイバー攻撃をアメリカは問題視していました。また、民主党は人権問題にうるさいため、対中圧力が強くなるという読みもあります。
ただし、安心はできません。ただでさえバイデンには健康不安が噂されていますし、息子のハンター・バイデンと中国との関係も不透明です。
ニューヨーク・ポストが10月15日に暴露したところでは、修理に出されていたハンター・バイデンのコンピュータ・ドライブからは、中国華信能源公司のCEO葉簡明とハンター・バイデンが副大統領だった父親を紹介するという名目で、年間1,000万ドルの顧問料をもらう契約が出てきたと、いわれています。
そして、バイデン自身も、同社の10%の株式を受け取っていたという情報までが流布されています。民主党政治家はカネに弱いという伝統もあります。
福島香織氏によれば、バイデン一家は江沢民派とずぶずぶで、ハンターの違法性行為映像にかかわっているのは、元人民銀行の戴相竜の娘婿の起業家、車峰(すでに逮捕)と言われているそうです。ハンターは北京を訪れるたびに、車峰のアレンジで違法性行為にふけっていたといいます。車峰は、江沢民派の大番頭だった曽慶紅の手下でした。
福島氏は、これらのバイデン一家のスキャンダルは、反習近平で江沢民派の在米華人が、習近平を追い詰めるトランプを応援するために流したものだろうと論じています。
このスキャンダルを利用して、反習近平勢力がバイデンに対中圧力を強めるよう要求してくるかもしれません。もちろん習近平側がこのスキャンダルをつかめば、逆にバイデンを脅す格好の材料となります。
トランプ大統領は11日、エスパー国防長官を解任しましたが、これは、今年5月、暴動鎮圧に軍を投入する考えを示していたトランプ大統領に反対したからだとされています。現在、トランプ大統領は各州で不正な選挙があったと主張していますが、今後、軍を投入して各州を鎮圧するといった事態があるのかもしれません。
アメリカ大統領選挙からの国際情勢の変化に刮目せざるをえませんが、問題は、日本がどのように対応するかという、その覚悟でしょう。それは尖閣や沖縄などの問題に限りません。日本は世界戦略や国家の進路すらGHQの占領時代のままです。
アメリカが頼りにならないならば、自らの身は自分で守るしかありません。日本が普通の国になれるかどうかの問題です。日本が中心となり台湾、東南アジアやインド、イギリスなどとの連携を深めていくべきです。
憲法改正、技術大国復活のための学術会議改革や「デジタル庁」の設置など、これからの日本の積年の課題にいよいよ立ち向かうべきときが来たのだと思います。
~中国五千年の疫病史が物語るパンデミック』
好評発売中!
image by: Ron Adar / Shutterstock.com
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年11月11日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。
こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー
※ 初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。
2020年10月配信分
- 日米同盟の強化にもつながる「日台交流基本法」の早期制定を/学習院での講演会報告(10/28)
- 嫌われても世界に中華思想を押し付ける中国/中国の「戦狼外交」は必ず自滅する(10/21)
- 台湾人スパイの懺悔をでっち上げる滑稽な中国の焦り/日本学術会議こそ中国の「三戦」を研究せよ(10/14)
- なぜ日本の学者は中国の軍事的脅威をわざと無視するのか/台湾の若き政治家たちへの期待と長年の愚民教育への懸念(10/07)
2020年9月配信分
- 対米戦略に国連中心主義を持ち出した中国の欺瞞/「中国の台湾化」が世界を救う(9/30)
- 人民解放軍の「文攻武嚇」PRのお粗末ぶり/習近平が目指す全体主義の正体(9/23)
- 強まる弾圧と狭まる習近平包囲網/歴史を知らない韓国人が歴史を説教する厚顔(9/16)
- 9月15日から、ついに世界で敵と味方が明確になる/中国と絡むと映像作品も政治になる(9/09)
- 安倍首相辞任、次期総裁選びと親中派の焦り/世界の民主主義国が台湾を訪れて連帯を示し始めた(9/02)
2020年8月配信分
- チベット人の自由と権利のために戦った女戦士の死/世界が辟易し始めた韓国のご都合主義とOINK(8/26)
- ドル経済圏から追放される中国の焦り/台湾に受け継がれる日本人の自然観(8/19)
- なぜいま中国は香港民主活動家を次々逮捕するのか/香港潰しの次に中国は確実に台湾を狙う(8/12)
- 反日親中メディアの終焉/李登輝元総統との思い出と台湾が抱える課題(8/05)
2020年7月配信分
- 銅像で相手を貶めるのは中華の文化/ようやく中国の本質を理解したアメリカ(7/29)
- いよいよ日本企業も中国企業との取引が生死を分けるときがきた/三浦春馬氏の死に衝撃を受ける台湾(7/22)
- 中国にとって国際法とはなにか/「台湾鉄道の父」を日本人から中国人に変えようとする姑息な動き(7/15)
- 日本も本気で中国のスパイ対策に乗り出すべきとき/徴用工問題の報復を恐れる韓国が狙うWTO事務局長(7/08)
- 次は台湾を狙う中国と、滅びゆく香港の力を結集する台湾/三峡ダム決壊が招く中国分裂(7/01)
2020年6月配信分
- 朝日新聞が「中国の宣伝機関」としてアメリカに認定される可能性/ゲームの中で展開される反中闘争(6/24)
- もう歴史問題で韓国を相手にしても意味がない/ついにウイグル化がはじまった香港(6/18)
- 中国に近づいてやっぱりバカを見たインドネシア/台湾で国民党独裁からの民主化を描いたドラマ解禁(6/10)
- 中国のアメリカ暴動への関与疑惑が出はじめた/コロナで中国は旧ソ連と同じ道を辿るか(6/03)
2020年5月配信分
- 中国制定の「香港国家安全法」が日本の護憲派を殺す/親中カンボジアの「中国に近づきすぎたツケ」(5/27)
- 中国の恫喝はもう台湾に通用しない/世界が注目する蔡英文の総統就任スピーチ全文(5/20)
- 「元慰安婦」から反日利権を暴露された韓国慰安婦支援団体/中国から台湾に逃げてくる動きが加速(5/13)
- アメリカが暴露した中国の悪質な本性/韓国瑜へのリコール投票に見る「コロナ後の台湾」の変化(5/06)
2020年4月配信分
- 世界からの賠償要求5500兆円!中国は破産するか/他国へも情報統制を求める中国の卑劣(4/30)
- 「アベノマスク」も被害。今度は不良品マスクを世界に拡散する中国/フルーツ天国・台湾は日本人がつくった(4/22)
- コロナ発生源の中国が今度は黒人に責任転嫁/台湾発「WHO can help?」が世界に問いかけること(4/16)
- もう国民が国内旅行を楽しむ台湾と、緊急事態宣言の日本(4/08)
- 台湾の民主化とともに歩んだ志村けんさん/死者数の嘘が暴かれ始めた中国(4/01)
2020年3月配信分
- 欧州の新型コロナ感染爆発は中国共産党員が原因だった/国内では隠蔽、海外では恩の押し売りを続ける中国(3/26)
- 習近平の「救世主化」と天皇利用への警戒/小国発展のバロメーターとなる台湾(3/18)
- 【台湾】新型コロナ対策で注目される台湾の若きIT大臣が日本に降臨!?(3/11)
- 新型コロナへの対処法は「中国断ち」をした台湾に学べ/新型肺炎の責任を日本に押し付けはじめた中国(3/05)
2020年2月配信分
- 『韓非子』の時代から何も変わっていない中国(2/26)
- 「中国発パンデミック」はなぜ厄介なのか/蔡英文再選後、ますます進む日台連携(2/19)
- 新型肺炎のどさくさで反体制派狩りをする習近平の姑息/戦後日本の軍事研究忌避が新型肺炎の感染拡大の一因(2/12)
- 新型肺炎が世界にとって思わぬプラスとなる可能性/疫病のみならず他国に厄災をばら撒く中国(2/05)
2020年1月配信分
- WHOを操る疫病発生地・中国の魂胆(1/29)
- 「中国発パンデミック」はなぜ厄介なのか/蔡英文再選後、ますます進む日台連携(1/22)
- 中国の目論見がことごとく外れた台湾総統選/ご都合主義の中国が民主主義と人類を危機に陥れる(1/15)
- 黄文雄メルマガスタッフの台湾選挙レポート(1/13)
- 文化が残らない中国の宿命/中華にはびこる黒道治国と台湾総統選挙を左右する「賭盤」(1/08)
- 謹賀新年のご挨拶―激動の年の幕開け(1/01)