来年早々にも日本のディスカウントストア「ドン・キホーテ」が台湾に初進出することが決定しています。台湾出身の評論家・黄文雄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』の中で、ドンキの台湾1号店にバイト応募が殺到していることを紹介。なぜ、台湾人は日本のチェーン店で働きたがるのか、その明確な理由を記しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年11月4日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
台湾ドンキ1号店のスタッフ募集に台湾人から2倍の申込みがあった訳
総合ディスカウントストア「ドン・キホーテ」の海外向けブランド「ドンドンドンキ」が台湾に進出です。実はこの数年、ドン・キホーテを運営する「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)」は、次々とアジアでの出店を果たしています。その結果、現在はシンガポール7店舗、タイ2店舗、香港5店舗となっています。
アジア進出第一号店は、2017年12月にオープンしたシンガポールの「オーチャードセントラル店」でした。この店舗の特徴は以下の通りです。以下、一部報道を引用します。
「『DON DON DONKI』は店内ほぼすべての商品をメイドインジャパンもしくは日本市場向けの商品でラインナップする『ジャパンブランド・スペシャリティストア』をコンセプトとした東南アジア仕様の新業態。
店内演出や日本酒のバーカウンターの設置などによるアミューズメント性あふれる店舗空間で、生鮮食品(青果・鮮魚・精肉・惣菜)や加工食品のほか、家庭雑貨品・日用消耗品・化粧品・バラエティグッズなどのジャパンブランドにこだわった豊富な商品をシンガポール国内におけるプライスリーダーを目指した圧倒的な低価格で提供する。
(中略)
東南アジア初進出となるこの度のシンガポールにおける店舗開発は、これまでの海外進出時のような現地法人のM&Aでなく、これまで国内外で培った業態開発や店舗作りのノウハウを集結した新たな挑戦となるという」(出典:流通ニュース2017年11月06日「ドン・キホーテ/シンガポール1号店「DON DON DONKI」出店」)
上記のように、「ドンドンドンキ」のコンセプトは、日本製品を海外で安く提供することをコンセプトにしているだけでなく、店舗によってはバーカウンターや寿司バー、イートインスペース、さらにはカラオケやゲームセンターなどのアミューズメントエリアなどを設けた店舗設計になっています。
品揃えは生鮮品から化粧品やオモチャなど、日常生活で使うほぼすべてのものを網羅しています。さらに驚くべきは、その価格です。これまで、海外で売っている日本食は高いというイメージがありました。しかし、「ドンドンドンキ」ではその日の仕入れ具合やレートなどにもよりますが、時には日本と同じくらいの価格で手に入れることができるのです。例えば、納豆やお寿司など現地のスーパーでは手に入らないものも、手ごろな価格で気軽に買えるようになったのです。
一方で、高品質と高価格がウリだった百貨店は、海外からの撤退が相次いでいます。伊勢丹は、シンガポール西部ジュロン・イースト店とタイのバンコク店の閉店を発表しました。
● 伊勢丹、シンガポール西部ジュロン・イースト店を年内に閉店
● バンコク伊勢丹が撤退発表、色あせた老舗の日系百貨店
この流れがコロナと関係あるかどうかは分かりませんが、少なくとも「ドンドンドンキ」のタイの二号店オープンにはマイナスの影響をもたらしました。
タイの一号店は、2019年に日本人が多く住むバンコク・トンロー地区にオープンしました。その後、コロナにより非常事態宣言下となったバンコクでしたが、それでもバンコク中心部にタイ2号店となる「DON DON DONKI The Market 本店」をオープンしました。コロナ禍の中でのオープンのため、店員はフェイスガードをし、来客は検温とアルコール消毒、イートインスペースは休止という状態でのオープンだったそうです。
こんな状況では、当然ながら客足は伸びません。それでも予定通りオープンしたのには、出店を急ぐ理由があったのでしょう。一部報道では、2026年までに100店出店を計画しているという話もあります。それはともかく、タイでの経験で、コロナ下での新店舗のオープンは得策ではないと思ったのでしょうか。次の出店は台湾となりました。
台湾ではすでにオープンに向けた人材募集が始まっており、来年早々にもオープンする予定だということです。場所は萬華区西門町。報道によれば、募集中の職種は「商品販売人員、生鮮処理人員、夜勤人員、管理職など7種類。給与はフルタイム2万6,000台湾元(約9万4,000円)から、パートタイム時給180元から。9月23日に台北市大安区で合同面接会を行い、11月中旬までに結果を通知」とのこと。
そして、台湾では300人の人材募集に対して600人以上の応募者が面接に行ったということです。報道によれば、応募者の多くは、日本が好きな「哈日族」であることや、時給が少し高いことなどを応募の理由に挙げていたそうです。
報道でも指摘していましたが、西門町はドラッグストアが群雄割拠しており、マツモトキヨシなども進出しています。出店予定のビルはテナント料がひと月で462万台湾元という高さの商業地であり、1階から3階までを借りる予定となっているようです。フロア面積が広いことから、台湾での出店は、シンガポールやタイや香港などの店舗と同じようにアミューズメント性の高い設計になると想像できます。コロナ禍の中での出店のため、比較的コロナの影響を受けない台湾を選んでの出店だったのかもしれません。
どちらにしても、多くの日本企業がアジア出店第一号点として台湾を選ぶのに対し、ドン・キホーテはそうではありませんでした。
日台関係の歴史は長く、ことにビジネス関係の歴史は長いのです。日本領台の50年間だけではなく、その前の江戸鎖国の時代にも多くの日本人が台湾と日本を往来していました。司馬遼太郎が『台湾紀行』を書く前の調査として、かつて台湾にあった日本人村の人々はどこへ行ったのか、かなり調査したという話もあります。
もともと台湾は瘴癘の島と言われ、日本からも鬼ヶ島と呼ばれていました。そもそも台湾は先住民以外には外来者の住めない島だったのです。それを変えたのは、日本の50年間にわたる台湾領有です。日本が台湾のインフラや医療衛生、建設などを整備したことで、台湾は近代化したのです。
そんな長い歴史を持つ日台関係でしたが、戦後の日本は政治的事情から中華民国(台湾)とは断交しました。しかしビジネス面での交流は続きました。そして現在、台湾に進出している日本企業は、高級旅館の加賀屋から百円ショップまであります。その流れとしてのドン・キホーテの台湾進出でしょう。
「ドンドンドンキ」は、シンガポールなどで磨いた海外進出手腕で台湾のお客さんを魅了する店づくりをしてくれることを楽しみにしています。
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