去る11月30日、中国外交部の趙立堅報道官がとある画像付きのツイートを投稿し、物議を醸しています。それは、オーストラリア兵がアフガニスタンの子どもにナイフを突きつけている様子を合成したフェイク画像で、オーストラリアのモリソン首相が猛抗議したことが報じられています。国の報道官ともあろう人物がなぜフェイク画像を平気で投稿したのでしょうか? 台湾出身の評論家・黄文雄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、中国が他国を貶める写真を国家レベルで行う背景と過去の前科について具体的な例を挙げながら解説しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2020年12月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【中国】お得意の「写真捏造」で他国を貶し始めた中国
● オーストラリア、「不快な」フェイク写真めぐり中国に謝罪要求
オーストラリア国防軍は、11月19日、アフガニスタンでオーストラリアの特殊部隊所属の25人が、39人を不法に殺害したことを示す「信用できる証拠がある」とする報告書を発表しました。
これにより、オーストラリアでは軍に対する批判の声が巻き上がっていますが、これに便乗するかたちで、中国外交部の趙立堅報道官が自身のツイッターに、オーストラリア兵が血のついた刃物を子どもに突きつけている合成写真を掲載しました。
公共放送オーストラリア放送協会は、この画像は、オーストラリア兵がアフガニスタンで10代の子ども2人をナイフで殺害したという、立証されていない噂に関連して作成されたものだと報じているそうです。
趙立堅報道官が自身のツイッターに掲載した画像は、以下のツイートで見ることができます。ただし、多くのメディアでは、この合成写真で血のついたナイフを子どもに突きつけている部分はモザイクが掛けられています。それだけ衝撃性のある画像ということなので、ご覧になる方は、ご注意ください。
Shocked by murder of Afghan civilians & prisoners by Australian soldiers. We strongly condemn such acts, &call for holding them accountable. pic.twitter.com/GYOaucoL5D
— Lijian Zhao 赵立坚 (@zlj517) November 30, 2020
このフェイク写真に対して、オーストラリアのモリソン首相はテレビ演説で、「中国政府は恥を知るべきだ」と述べ、謝罪を要求しました。
趙立堅報道官といえば、SNSなどで他国に対して過激で挑発的な発言を繰り返し、「戦狼外交官」と呼ばれている人物です。
とはいえ、個人の発言の自由のない中国で、公的立場にある報道官がフェイク写真を掲載したということは、これは個人的な行為ではなく、国家として行っているということです。国として他国を貶めるフェイク写真を堂々とツイッターに上げているということなのです。
もちろん、中国は以前から、同様のことを日本に対しても行っています。
たとえば、処刑された馬賊の死体写真を「南京大虐殺」の証拠だといって喧伝したり、あるいは中国国民党軍により日本人居留民12人が殺害された「済南事件」において、医師が日本人被害者を検死している写真を、「731部隊の人体実験で殺された中国人」とウソのキャプションをつけて内外にばら撒くなど、フェイクニュースによって日本人の残虐性をアピールしてきました。
国家としての中国は、いつの時代もフェイクニュースを流し続けてきました。毛沢東は政敵を粛清するたびに、かつての写真からその政敵の姿を消去するということを繰り返してきました。劉少奇などは、毛沢東と一緒に写っていた写真から消されています。
また1966年、新華社は72歳の毛沢東が揚子江で泳いでいる写真を公表し、「15キロを1時間5分で泳ぎきった」と報じました。時速15キロという、オリンピック選手ですら不可能な、人間を超越した力で泳いでいたとフェイクニュースを流したわけです。
そして、大躍進政策では毛沢東の号令のもと農作物の増産が目指され、成果が上がったように見せるため、各地方政府は他の田んぼからイネをかき集めて1つの田んぼに植え付け、「例年の10倍、100倍も増産できた」とフェイクニュースを流しました。
集められて植えられた稲の上に、子どもたちが乗っかった写真が有名です。子どもが穂の上を歩けるほど、稲が密集して育ったということを、フェイク写真でアピールしたわけです。
中国で新型コロナウイルスの感染者数が次第に拡大していった頃、日本のメディアでは、「中国はかつてSARS流行のときに事実を隠蔽して被害を拡大させてしまった過去があるため、今回はすべて情報をオープンにしている」と評した評論家がいました。しかし、私は中国が情報を包み隠さずオープンにすることなど、絶対にありえないと述べてきました。
案の定、アメリカCNNテレビは11月30日、新型コロナウイルスの発生が確認された初期段階において、中国当局が実際に把握していた感染者数を過小発表していた可能性があると報道しました。
● 中国、初期段階にコロナ感染者を過少発表か 内部文書を米報道
中国人にとって、フェイクニュースは日常茶飯事です。「人民日報で正しいのは日付だけ」ともよく言われます。ウソをつくこともつかれることも、中国社会ではごく当たり前のことなのです。誰も信用しない相互不信社会なのです。
こういうことを言うと、すぐ「ヘイトだ」という人がいますが、しかしかつての朱鎔基首相すら「すべてがウソ。ウソでないのはペテン師だけ」と嘆いたほどです。中国人自ら、社会のありとあらゆるところでウソが横行していることを認めているのです。
日本にはスパイ防止法がないために「スパイ天国」といわれ、オーストラリア以上にスパイが多いと言われています。そのため、中国にとってはフェイクニュースを仕掛けやすい状況になっており、世論操作も簡単に行えてしまいます。
事実を捏造してまでも自分を有利に、相手を不利に導こうとするのが中国なのです。
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image by: Alessia Pierdomenico / Shutterstock.com
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