MAG2 NEWS MENU

あえて言おう、大阪コロナ重症センター看護師の給与は安すぎると

新型コロナウイルスの感染拡大の第3波により、旭川市は自衛隊に災害派遣を要請し、看護官が派遣されることになりました。大阪でも同様の要請が検討されるなど、最前線である医療現場の困窮ぶりが浮き彫りとなっています。メルマガ『8人ばなし』著者の山崎勝義さんは、コロナ感染が始まって以来、医療物資、検査体制、病棟病床と常に何かが足りない状態が続き、ついには人員不足にまで陥った事態を嘆きます。山崎さんは政府に対し「Go To」を進めたければ尚更、破格の報酬など医療体制を維持するための施策が必要であると訴えています。

マンパワーのこと

私が車を選ぶ時、最も重視するのはその制動性能である。そしてその次が加速性能である。故に試乗の時はひたすらここに負荷をかける。これは言葉の問題に過ぎないが、加速より制動を優先しているという点においては加速というより再加速性能と言った方が適切かもしれない。

実はこれら二つの相対する性能(即ちストップ・アンド・ゴー)は、俊敏性という一つの特性の二側面である。ガツンと止まれるということはビュンと再加速できることを保証するし、ビュンと加速させるためにはガツンと止まれるブレーキへの信頼が大切となる。私にとっての良い車とは即ちこうなのである。

とすれば、最悪はこの真反対ということになる。一たびスピードに乗ると慣性にブレーキ性能が勝てずだらだらと制動距離が伸びてしまう。また一たび止まると重量にトルクが勝てずなかなかスピードが上がらない。大きなトラックにしょぼいブレーキとエンジン、そんなイメージである。

コロナ禍の日本がまさにこれである。経済再加速策としての「Go Toキャンペーン」も一たび始まってしまうと止まらない、というか止められない。それどころか微調整や修正もろくにできずに現在に至っている。

一方ブレーキに当たる緊急事態宣言やそれに類するものは出そうと思えばいつでも出せるとでも思っているのであろう、完全に伝家の宝刀のようになってしまっている。一つ言っておくがブレーキは止まればいいというものではない。安全に安定した状態で止まらなければ意味がない。そのために現在の車には数々の制御装置が組み込まれている。

対コロナの制御装置は医療体制の拡充であった。誰もが分かっていた筈である。ところが現実に切羽詰まった状況になってみると病棟や病床の数は何とか揃えられても、それを管理するマンパワーは圧倒的に不足しているといった始末である。

コロナ対策に関しては常に優等であった大阪府ですらコロナ重症センターでは看護師急募でおおわらわである。因みにその待遇は2交替制で月50万円である。計算上は週40時間労働だが常に感染の危険と隣り合わせであるし、謂われのない不当な差別も無視できなかろう。そもそもコロナ終息後の雇用はどうなるのか、など問題も多い。

非常識との誹りを恐れず敢えて言うが、一年最前線でコロナと戦えば一生暮らせるくらいの、それこそ目から火が出るくらいの額を払ってもいいのではないかと個人的には思うほどである。

改めて考えてみると、最前線で戦う医療従事者は一年も経たない間に三つの大きな感染の波を経験したことになる。そして目下の第三波が最悪最大である。言うまでもなく医療従事者だって人間である。体も心も傷つく人間である。現場は疲弊しているに違いない。これが分かっているなら現状の医療従事者一人の頭数をそのまま一人分の戦力として数えていい訳がない。今の政府は、消耗戦における潜在戦力の目減りを全く計算に入れていない。だから常に、何かが、誰かが、足りないのである。

やはり「Go To」と同等の規模、スピードでの医療拡充を図るべきであった。というより、医療の拡充の度合いに合わせて「Go To」は進めるべきであった。飽くまで慎重に進めるべきであった。そして「すわ、感染」となれば速やかに停止すべきであったのだ。実際、最新の東京大学の研究によれば「Go Toトラベル」を利用した人の方が利用しなかった人に比べ2倍のコロナ罹患率になる、ということであった。

去る12月4日の総理会見では多くの時間が「カーボンニュートラル云々」の説明に割かれていた。その間ずっとテレビ画面の左下にはコロナ患者の数や重症者・死亡者の数などのデータが表示されていた。このズレにはさすがに違和感、というより気持ちの悪さを感じた。

本当に大事なことが分かっているのだろうか。分かっていてごまかしているのだろうか。少しばかり明るいことでも口にすれば世の中が俄かに活気づくとでも思っているのだろうか。その気持ちの悪さはいつまでもしつこく口の中に残り続けた。

image by: Shutterstock.com

山崎勝義この著者の記事一覧

ここにあるエッセイが『8人ばなし』である以上、時にその内容は、右にも寄れば、左にも寄る、またその表現は、上に昇ることもあれば、下に折れることもある。そんな覚束ない足下での危うい歩みの中に、何かしらの面白味を見つけて頂けたらと思う。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 8人ばなし 』

【著者】 山崎勝義 【月額】 ¥220/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け