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病気やケガをしてからでは遅い!「障害年金」が貰えないケースとは

年金と聞いても、若い人にとっては馴染みがない言葉のように感じてしまうかもしれません。しかし病気や怪我は誰にでも襲いかかるもの、そんな時に頼りになるのが「障害年金」です。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、障害年金について詳しく解説するとともに、年金が未納の場合はどうなるのかなどのケースについてもお話ししています。

見た感じ、そんなに未納にしてないはずが「障害年金」請求で門前払いになってしまった理由

20歳になるとどんな人も国民年金に強制加入します。一応、加入の手続きはしますが手続きをしなければ国民年金には加入しないというものではないです。

年金保険料支払うのがイヤとか、加入しなくても自分で積み立てるから年金は要らないという人もいます。もちろん困ってない調子がいい時は、何で年金なんか加入しなきゃいけないんか!って思いますよね。

年金はお年寄りの方が貰うものだし、今の自分には関係ないと思ってる人も多い。特に若い人は。

ところで人生は長いので、いつ何が起きるかわかりません。コロナだって、去年の今頃まで一体だれがこんな世界になるなんて想像したでしょうか。「今」は大丈夫でも、突然自分の力ではどうする事もできない事が起きたりしますよね。特に、大きな病気や怪我で働けなくなるとかは本当に他人事ではない。

病気や怪我で長い治療期間が必要になったりすると、多くの人は働きたくても働けない事態になります。

ちょっと通院しなければならない傷病ならまだしも、長期間闘病が必要となると心身の事もそうですが、どうしても経済的な問題を心配します。ある程度、そういう事態に備えて貯蓄してきた人はしばらくは大丈夫でしょうけど、その貯蓄も限りがある。

病気の事だけでなく、闘病というのは経済的な事も大変な問題になります。よって、傷病といういつ起こるかわからない事態に備えて、国は国民年金に強制加入させている。

なお、傷病だけでなく家族の誰かが亡くなるというのも、それがいつ訪れるかわからないから遺族年金の保障がある。長期間の闘病や家族の死亡というのは、ある日突然訪れ、もし訪れると経済的な問題に直結するので年金に加入している。

ちなみに年金というと老齢の年金が主と考えられますが、この「老齢」という事態も不確かなものだから年金に加入している。そりゃあ歳を取って高齢者になるのは当たり前じゃないか!って思うかもしれませんが、いつまで生きるのか?というのは誰にも分らない不確かな事ですよね。

自分が予想していたよりも長生きする事はよくある事です。俺は60代まで生きれば十分だと豪語してても、60代で本当に寿命が来るのかはわからないわけで、もしかしたら90歳とか100歳まで生きるかもしれない。

長生きって素晴らしい事なんですが、高齢になってくると当然働いて稼ぎを得る事が困難になってきますよね。80歳になって、最近生活費が苦しいけんちょっとバイト探してくるっていっても、さすがに働き口があるわけない^^;

長生きって素晴らしい事ですが、収入を得られにくくなるリスクでもあるんです。よって、いつまで長生きするかわからない事に対して、年金に加入し保険料を支払って「保険」をかけてるんです。

支払った保険料より貰った年金が少なかったら損じゃないかo(`ω´ )o!っていう批判はそもそもお門違い。積み立ててるのではなく、いつまで長生きするかわからないリスクに保険をかけてるという事をお含みおきください。

さて、ちょっと老齢のほうに話がズレたんですが、今日は万が一大きなけがや病気をして働くのが困難になった時に大きな力となる障害年金についておさらいしましょう。障害年金は若い人でも、普通に受給者となりえる年金であり、民間保険よりもはるかに強力なものです。

万が一に大損をしないように、今回の事は特に注意しておく必要があります。本当に悔やんでも悔やみきれない事にならないように…。

1.昭和47年10月1日生まれの女性(今は48歳)

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20歳に到達するのは平成4年9月30日なので、平成4年9月分から国民年金保険料を支払う義務が発生した。高校を卒業後は進学はせずアルバイトをしながら両親と兄妹で暮らしていた。

20歳になり国民年金保険料を支払う事になり、翌月末までに支払ってくださいという事だったが、そんな余裕はなく無視をし続けていた。その月の国民年金保険料は翌月末までが支払い期限。

滞納を続けていたので催告状が何度も来たが放っておいたため、平成7年3月までの31ヶ月間は未納(この女性の国民年金保険料は世帯主も支払い義務が連帯で生じるが、支払わなかったとします)。

督促状なんかも来てたりしたので、平成7年5月に市役所に相談だけでもしようとしてその時に国民年金保険料免除の存在を知る。

平成7年4月から平成10年6月までの39ヶ月間は国民年金全額免除(まだこの当時は過去の未納期間を遡って免除とはならなかった。免除申請月の前月以降が免除)。

平成10年7月から平成20年12月までの126ヶ月間は厚生年金に加入。この間の平均給与は約23万円とします。平成20年9月に起きたリーマンブラザーズ破綻による不況で年末に職を失い、平成21年1月以降は失業したが国民年金保険料を支払う必要があった。

なお、失業の場合は退職の特例による国民年金全額免除が使えたので、失業手当の受給資格者証を市役所にもって平成21年1月から22年6月までの18ヶ月間全額免除とした。一応、免除を利用する場合は基本的には毎年手続きする必要がある。

途中で自営業者の男性と婚姻し、この女性自らもパートをするようになったが、免除の手続きも面倒だったのでそのまま滞納にし続けた。平成22年7月から平成28年9月までの75ヶ月間は未納。

さて、随分未納にし続けてたのですが、平成28年8月26日(初診日)に視野の異常を訴え、眼科に通う。診断は緑内障との事で点眼をしながら、進行を遅らせる治療をする事になった。最悪の場合は失明する可能性もあるという事だったので、万が一の事も考えて保障などを頭に入れておいた。

年金には障害年金というのがあるとの事だったので、あんまり未納にしておくと貰えない場合があるという事だったので、早速平成28年8月30日に免除の手続きをして、保険料の時効である2年1ヶ月遡りの平成26年7月から令和2年12月現在も国民年金の全額免除を利用中。平成26年7月から平成28年9月の27ヶ月間は未納期間ではなく免除期間になり、未納期間は75ヶ月間ではなく平成22年7月から平成26年6月までの40ヶ月間となった。

令和2年12月現在において、思いのほか緑内障に進行が早く、視野障害が酷くなり日常生活に困難が生じるようになった。日常生活に支障が出ていて、眼科での計測数値も障害年金に該当するのではないかという状況になってきていた。そのため、障害年金の請求をしてみる事になった。

さて、障害年金を請求する場合は初診日というのがとても重要な日になります。これがわかんないと障害年金請求ができない。初診日に何の年金制度に加入していたか、国年か厚年もしくは共済(平成27年10月からは共済は厚年)かで、支給される年金が変わってくるから。

この女性の初診日を見てみると、平成28年8月の国民年金加入の時だから、支給されるとすれば国民年金からの障害基礎年金となる。過去に厚生年金加入期間がありますが、初診日が厚年加入中に無いから厚生年金は一切支払いに関係ない。

なお、初診日を基準として初診日から1年6ヶ月経った日以降(この女性だと平成30年2月26日以降となる)、障害年金の請求が可能になる(例外有り)。

次に、この大切な初診日を基準として、過去の年金保険料の納付状況を見なければならない。初診日の「前日」において、初診日の前々月までに年金保険料を納付しなければならない月がある場合はその3分の1を超える未納があってはならない。

まあ、難しい言い回しですが、つまりは初診日という保険事故が起きるまでに、年金保険料を納めて保険事故に備えておいたかな?という事を確認したいわけです。

20歳になる平成4年9月からが国民年金保険料納付義務が生じる期間になるので、初診日(平成28年8月26日)の前々月までである平成28年6月までの286ヶ月間のうち3分の1を超える未納があったら障害年金はそもそも請求ができない。

初診日の前々月までの未納期間をパッと見てみると、31ヶ月間+48ヶ月間=79ヶ月間が未納期間。未納割合は79ヶ月÷286ヶ月=27.62%(3分の1である33.33%を超えてない)から、大丈夫と思った。

ところが、平成28年8月26日初診日の後に、免除の手続き(平成28年8月30日)をして過去2年1ヵ月以内が免除期間になってますよね。初診日(保険事故)の後に、保険料を納めるような感じになるので、あくまで初診日の前日までの保険料納付状況を見なければならない。

初診日の前日までで考えると、免除期間ではなく未納期間(平成22年7月から平成28年6月までの72ヶ月間は未納という事)だから全体の286ヵ月間に対して未納期間は31ヶ月+72ヶ月間という事になる。

そうすると未納割合は103ヶ月÷286ヶ月=36.01%という事になり、3分の1を超える未納期間になってしまう。つまり、この女性は障害年金を請求する条件を満たさないため、障害年金を貰う事が出来ない。初診日という保険事故の後に、いくら保険料を支払ってもこれは覆しようがない。

他の保険もそうですよね。事故が起きてから慌てて保険料払っても取り合ってもらえない。何も起きてない時にあらかじめ予期されるリスクに備えるのが保険だから。

もし、保険料納付要件を満たしておけたなら、障害基礎年金だと2級なら定額の781,700円が支給(1級は977,125円)されていた(18歳年度末未満の子が居たら一人当たり224,900円が付く。3人目以降75,000円)。あと、障害基礎年金受給者は障害年金生活者支援給付金年額60,360円(障害等級1級は75,456円)も令和元年10月から導入されている。

令和2年12月の障害基礎年金請求が通ったとしたら、傷病が続く限り支給される。緑内障だけでなく、ずっと治療が必要になる傷病は他にもいろいろあるので、そういう場合は特に障害年金は大きな力となってくる。

緑内障は完治しないので、そうなるとこの女性が現在は48歳として女子の平均寿命である87歳まで生きるとしたら(781,700円+60,360円)×約40年=33,682,400円を受給できなかった事になる。

なので、年金保険料を支払うのも大事ですが、支払うのが困難な人はしっかり免除制度を利用しときましょう。免除期間は未納扱いにはされないから。コロナで年金保険料支払う余裕なんてないという人も多いと思うので、そういう時は免除を利用しましょう。

※ 追記

20歳前のように年金には加入してない時に負った障害などは、20歳以降になると国民年金から障害基礎年金の対象となる。この場合は年金にはまだ加入できない時に負った障害なので、初日までの保険料納付状況は見ない。とりあえず20歳前に初診日があれば障害基礎年金が請求できる。

本来は保険料支払ってリスクに備えるのが保険ですが、国民年金にはこのような保険原理を超えた保障をするので国民年金保険とは呼ばない。厚生年金は保険料支払わないといけないから厚生年金保険法と呼ばれますが、国民年金は国民年金法と呼ばれる。

なお、国民年金の額の半分には税金が投入されているので(現在約11兆円くらい)、その辺も国民年金保険と呼ばれない理由の一つ。

image by: Shutterstock.com

年金アドバイザーhirokiこの著者の記事一覧

佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
このメルマガを読んでいれば年金制度の全体の流れが掴めると同時に、事例による年金計算や考え方、年金の歴史や背景なども盛り込みますので気軽に楽しみながら読んでいただけたらと思います。

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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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