ご来店いただいたお客様のニーズに寄り添うことは接客の基本ではありますが、商品について「何も知らない」という状態の方に対しては少々注意が必要なようです。今回の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』では接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんが、人気番組『アメトーーク』を視聴して改めて考えたという、「商品知識ゼロのお客様への提案法」を紹介しています。
わからないなりの提案
もうずいぶん前の話で記憶が定かではないのですが、テレビ朝日の『アメトーーク』という番組で、まだ当時MCだった雨上がり決死隊の宮迫博之さんが家電を買いに行った時の話がありました(多分、パソコンだったと記憶しています)。
電化製品に全く詳しくない宮迫さんは、家電量販店に足を運んでパソコンを探すのですが、何が良いのか、どこがどう違うのかも全くわからず、最終的に「いっちゃんええやつ(一番いいやつ)」が欲しいと言い出します。
家電芸人という企画回でしたが、スタジオの他の芸人たちは爆笑しながらも、宮迫さんは総スカンを食らっていました。
この話は、私の中では強烈に印象に残っています。販売をやっているとよくある話だなーと感じると同時に、こういうお客様に対してどんな接客をするのがベストなのかを考えてしまったからです。
店で販売をしていると、扱っている商品群に対して知識が少ないお客様というのはたくさん来ます。店にもよりますが、むしろ、詳しい人の方が本来は少ないでしょう。普通に考えれば、その業界に浸かっている販売員側の方が詳しくて当然ですし、その店員の知識に頼りたくて来店されるお客様も多いからです。
ただこうしたお客様がいらっしゃった場合に、ついつい細かく接客し過ぎようとしてしまう販売員がほとんどなように思います。
例えば先ほどの宮迫さんのように、「一番いいパソコンをください」と言われたら、「そうは言っても機能がそれぞれ違いますから、合うものをえらぶべきですよ。お客様はパソコンを使ってどんなことをされる予定ですか?」といったように、お客様のニーズを深掘りしてヒアリングしようとするわけです。
まともな販売員ほど「ニーズに対して寄り添う」ことを意識していますから、こうした接客になりがちだと言えます(まともでないと、「そう言われても困ります」とあしらう人もいるのでそれよりは遥かにマシですが)。
でもこうしたヒアリングをしようとしても、お客様はどうかというと、「いや、それもよくわからないから聞いてるのに」という感覚になってしまいます。ある程度購入後のイメージが見えている人ならば、ヒアリングをして聞き出すことはできても、それすらもよくわからないというお客様の場合は、答えることができないのです。それをさらに深掘りして聞かれてしまうと、どんどんハードルが高くなってしまって、結局「自分は買えないな」と諦めてしまいます。
こうした、「何もわからない」というお客様がいらっしゃった場合には、それ相応の提案をしてあげることも大事なのかなと思います。
例えば、「一番いいパソコンをください」と言われる上記のようなお客様の場合、「わかりました。なんでもできる一番価格も高い最強のパソコンと、初めての人が一番使いやすいパソコンだったらどちらが良いですか?」みたいな選択肢を出してあげるのはどうでしょうか?
ここでは、一番価格が高いものと、一番使いやすいものとを提案することになりますが、非常にシンプルな提案です。
何が違うのかというと、こういうタイミングでごちゃごちゃ語りすぎないということ。
「なんでもできる」ということも、細かく言えば、動画編集が快適にできて、ネットゲームもサクサク動いて、容量も大きいからいくら使ってもそう簡単には遅くなったりしませんみたいな説明が入ってきます。
でもそうしたこともよくわからないからこそお客様は聞いているのですから、細かい情報が入れば入るほど、よくわからなくなってくるわけです。だからあえて語りすぎることはなく、シンプルな言葉だけを使っているのですね。
「その2択ならこっちが良い」とお客様が答えてくれれば、細かい説明は後回しにしてもそのお客様にとっては選びやすくなります。本当にお客様に寄り添う接客というのは、こういうことも含まれる気がしています。
実際に私も機能性の高い商品を扱っていた際、こうしたお客様はよくいらっしゃいました。その接客で、細かい説明をすればするほど、お客様の顔色が曇っていくのを感じていて、反対にシンプルな提案だけに留めていた方がお客様の納得感が得られたという経験はすごく多かったです。
良い接客と考えれば考えるほど、「あれもしなければいけない、これもしなければいけない」とどんどんやるべきことが増えていきがちです。でも、わからないというお客様にはわからないなりの寄り添った提案というものもあります。そうした柔軟性を持ち合わせておきたいなと感じたお話でした。
今日の質問です。
- 「何もわからない」というお客様に対して、どんな提案の仕方ができると思いますか?
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