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小池百合子劇場に騙されるな。感情論を煽る「コロナ猿芝居」の情報操作

近隣県の知事を従え内閣府に乗り込み、西村経済再生担当大臣に緊急事態宣言発出を直談判し、政権から「満額回答」を引き出した小池都知事。コロナ対策を巡っては安倍前首相とも激闘を繰り広げた小池氏ですが、菅首相とのせめぎ合いはこの先どのような展開を見せるのでしょうか。今回のメルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』では著者で米国在住作家の冷泉彰彦さんが、「小池劇場」における都知事の方法論と、小池氏に攻め立てられる一方に見える菅首相の思惑を考察しています。

小池政局にダマされるな

新年早々に再び「自民党政府が小池知事に振り回される」というドラマの第2幕が上演されています。普通、芝居の第2幕というと、1幕からはかなり設定の異なる場面に移動して、それぞれのキャラも深化するものですが、政治のドラマにはありがちなように、今回の第2幕は第1幕と似たような構図になっているわけです。そこが何とも困った問題です。

小池知事の方法論は次の6点からできています。

1)本当は、知事権限で強制力発動をするのが筋だが、現在の法制ではできないし、制度改正しても地方には権限は来ないということは計算済み。従って、どう転んでも自分に100%責任が来ないというのが前提。

2)自分は今後、東京が高齢単身世帯中心のゾーンとなって、慢性的な財政危機に陥るというような「近未来」については関知しない。だから、必要があれば東京独自のバラマキは躊躇しない。

3)ゲームの基本は、イニシアティブとTVの放映時間で菅総理を圧倒すること、その上で、自分が総理より危機感があり、真剣だというイメージを演出するのが彼女のプレースタイル。

4)地方経済の疲弊は全く関心外。都知事だから東京ファースト。

5)国政野党が無能なのも計算済み。だから、菅政権が死に体になって任期満了解散でもあれば、新党名で「一発勝負」に出れば政権が取れるかもという計算がある。では、そうした度胸とカネがあるかというと、実はないし、前回の「希望の党」失敗で懲りているので、今回は「いつでも自民党に帰って清和会を乗っ取らせていただきます」というプレッシャーをかけているだけ。

6)ファッショナブル作業服とか、「外出は短時間」とか、いちいちフリップ持って「アラート」なんとか、とか、要するにテレ東さんのノリで都市型の感情論煽っているだけ。

とにかく最大の問題は、仮に国政復帰したところで、カーボンゼロと原発再稼働、日米中の三極外交、生産性向上などといった国家戦略については、「何の信念も方法論もない」ことだと思います。

もっと言えば、小池さんにしても「国政レベル」で「経済と対策のバランス」を捨てて、自分の口がペラペラしゃべっているように、そしてそのように世論を煽っているように「対策の方にシフト」して、その分、「幅広く支援金を出す」という度胸はないのだと思います。

財務省の財政規律教という僧兵、一部をダイレクトに助ければ他から文句が来るという官邸の世論恐怖症を抑えて、国際債券市場からカネを引っ張ってきて、徹底的にバラまく代わりに、感染対策で経済を一時的に止めるなどという、共産党もできないような徹底的な霞が関の革命をやり切る、そこまでの「腹のくくり方」ができる人ではありません。

一つ違いがあるとしたら、今回の相手が安倍氏ではなく菅総理だということです。今回の低姿勢会見などを見ていると、安倍氏とは少し違いがあります。まず「少なくとも問題の隅々まで実感を含めて理解している」という点では、菅総理は安倍氏よりも相当に「まし」です。

また、菅総理の「低姿勢」の裏には、小池に対して「攻めたければ攻めさせる」、それを完全に受け切る、受けて受けてその上で、小池が「スベれ」ば、後ろから刺すスキが生まれるという計算があるのかもしれません。

本当は、菅総理が「地方経済の心肺停止」と「医療負荷」の厳しいバランスの「真ん中にある真空」を孤独に歩む覚悟をして、一方の小池知事は「財政規律をかなぐり捨て」て「経済を止めて人命優先でワクチンを待つ」という選択肢を正々堂々と掲げ、そのチョイスは世論に委ねるというようなことができれば良いのだと思います。ですが、世論は世論で、そんな責任をかぶるのは「ごめん」だと思っているのかもしれません。

だからこその「小池劇場」ということであるのなら、やはりこの「政局」には騙されないようにした方が良いと思います。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より一部抜粋・文中一部敬称略)

image by: 首相官邸

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東京都生まれ。東京大学文学部卒業、コロンビア大学大学院卒。1993年より米国在住。メールマガジンJMM(村上龍編集長)に「FROM911、USAレポート」を寄稿。米国と日本を行き来する冷泉さんだからこその鋭い記事が人気のメルマガは第1~第4火曜日配信。

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