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東日本大震災から10年。世界が日本に感嘆した9歳男児の「心配事」とは?

10年前の3月11日、日本は大きな自然災害に見舞われました。決して忘れることのできない東日本大震災の光景が目に焼き付いている方も多いでしょう。今回の無料メルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、被災地で得た体験を生徒と共有すべく、多くの情報を集めている高校教師の方が見つけ、心を震わせた、ある男の子の話を紹介しています。

ある高校教師の心を震わせた9歳の男の子の話

神奈川県の県立高校教師(当時)中村正和さんは2011年の東日本大震災後の夏休み、陸前高田市などで瓦礫を拾うボランティア活動に参加。その時の体験を授業の中で生徒たちと共有しようと考えられます。

授業をするに当たり中村さんは震災にまつわる様々な情報を収集する中で、あるユーチューブの投稿に出合います。それは被災したある9歳の男の子の実話でした。

私は、被災地で得た体験を、ぜひとも生徒たちと共有したいと考え、震災にまつわる様々な情報を集めて授業を行いました。その際「9歳の男の子」の話を知って、私は衝撃を受けたのです。

それは、ユーチューブで紹介されていたベトナムから日本へ帰化した警察官が語った話でした。

震災直後のある夜、その警察官は食料を配る手伝いのために避難所へ向かいました。そこにはようやく届けられた食料を受け取るために、たくさんの被災者が列をつくっていました。

その最後尾に目をやると、9歳ほどの男の子が厳寒の中をTシャツに短パンという軽装で佇んでいます。

気になって声を掛けた警察官は、その子が語り出した悲惨な体験に言葉を失いました。

地震の後、お父さんが小学校に車で迎えに来てくれた。けれどもその時、大きな津波が来て、お父さんを車ごと呑み込んでいくのを3階のベランダから見た。海の近くの自宅にいた母親や弟妹もたぶん助からないと思う……。

その9歳の男の子は、不安を打ち消そうと涙を拭いながら、悔しさと寒さに震えながら、必死に話してくれたのです。

不憫に思った警察官は、男の子に自分のコートを掛けてやり、用意していた食料のパックを渡しました。きっと喜んで食べてくれるだろうと思ったのです。

ところが、その男の子はどうしたか?何と、彼はその食料パックを配給用の箱に置きに行ったのです。そして、戻ってきた男の子は、警察官にポツリと言いました。

「僕よりお腹をすかせてる人がたくさんいるだろうから……」と。

何ということだ!警察官は、もう涙で少年を見ることができませんでした。

両親も弟妹も行方不明で、不安と悲しみに打ちひしがれ、空腹と寒さの中で絶望している9歳の少年が、それでもその困難に耐え、自分のことよりも他人を思いやることができる。

このような悲惨な境遇に置かれた幼い少年でも、己を捨て、人のために生きようとする。日本人は何と偉大な民族なのだろう。

その話は警察官の口からベトナムに広まり、現地の新聞でも紹介されました。新聞は「人情と強固な意志を象徴する男の子の話に、我々ベトナム人は涙を流さずにはいられなかった」と綴り、こう問い掛けています。

「我が国にはこんな子がいるだろうか」

この話を知ったベトナムの人々は、男の子と日本に称賛を惜しまず、裕福とは言えない人々からも多くの義援金が寄せられました。

この「9歳の男の子」の話を、私が授業で生徒たちに語り聞かせた時、彼らは口々に「私も同じようにします」と答えてくれました。

生徒たちのその答えを聞いて、日本はまだ大丈夫だと、国の行く末を憂う私の心に希望の光が射したのを鮮明に覚えています。

『致知』2月号(最新号)特集「後世に継いでいきたい日本の心」より

image by: Shutterstock.com

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【著者】 致知出版社 【発行周期】 日刊

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