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都医師会の過去発言で判明、東京五輪の通常開催は10月に詰んでいた

先日、米メディアが「東京オリンピックは中止の方向で調整している」とする日本の与党関係者の発言を報じ、日本国内に衝撃が走りました。はたして、このコロナ禍で海外から選手や観客を呼んでオリンピックを開催することなど出来るのでしょうか? メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さんは、朝日新聞が1月22日に掲載した東京都医師会の尾崎治夫会長の単独インタビューの一部内容を紹介。また、尾崎会長の過去発言などを新聞記事から検索・分析し、東京五輪がすでに昨秋から「通常開催は不可能」だった事実を炙り出しています。

東京都医師会「東京五輪に望むこと」から見えた、通常開催は不可能という現実

きょうは《朝日》から。

東京都医師会の尾崎治夫会長が、東京五輪について《朝日》の単独インタビューに答えています。医師会が東京五輪に望むことは何なのか、またこの間、医師会はどんなことを言ってきているのか、検索によって探ってみたいところです。

まずは《朝日》3面の記事。見出しから。

「東京五輪、無観客検討を」都医師会長
人招く祭典 医療現場に負担

東京都医師会の尾崎治夫会長は、《朝日》の単独取材に応じ、「無観客で開催できるかどうかを検討すべきだ」と述べていた。感染者数増加で都内の医療体制が逼迫しているため、政府や大会組織委員会に現実的な対策を示すよう求めたもの、としている。

計画では、「医師や看護師ら計1万人以上が競技場や周辺の救護所で選手や観客の医療に当たることになっており、都医師会の医師らがその中核を担う」ことになっているという。

尾崎会長は「色んな国から人を呼び、世紀の祭典をやろうという発想は捨てないと無理」としつつ、一方で「選手のことを思えば、開催できたらいい。五輪の本来の目的は、選手が集まり、競技できることだろう。そこに目標を置くなら、無観客から議論を始めるべきだ」と。

会長は、政府が2月7日の宣言解除予定の日に1日あたりの感染者数が500人を下回ることを目標としていることについても、「現状の対策では、その水準になるのは3月末頃ではないか」と語り、「それで4月から五輪の体制を組むための協力ができるだろうか」と疑問を呈している。

●uttiiの眼

恥ずかしながら、記事を読むまで、この論点の重要性に気付いていなかった。オリンピックは、膨大な医療スタッフと医療資源を集中するイベントだということからすれば、それだけで、通常の開催はもはやあり得ないと思えてくる。観客を入れるのはもう無理ということだ。

尾崎会長がいう「五輪の本来の目的は、選手が集まり、競技できること」というのは、近代オリンピックの元々の考え方には合致するかもしれないが、様々なグローバル企業が宣伝の場として位置付ける現代の商業化されたオリンピックにはそぐわないのかもしれない。

無観客となった途端に、資金面で様々な障害が浮上して、組織委員会を混乱に陥れることになるのではないか。まさしく、二進も三進もいかないところに五輪関係各組織は追い込まれていることが明らかになりつつある。


検索を「医師会 五輪 無観客」で行ったところ、《朝日》のサイト内には、22日の記事と同じ内容のもの2件を含め、4件の記事がヒットした。

2020年5月22日付
2020年から2021年への五輪延期の舞台裏に関する大きな記事の中で、都の医師会会長については次の記述。

「東京都医師会の尾崎治夫会長のフェイスブックにもこの頃、欧米の知人から「日本は何をやってるんだ」といったメッセージが連日届いたという。「何でこんなにぬるいんだ。ロックダウン(都市の封鎖)に近いことをやらないと大変なことになると警告された」と振り返る」と。

*そして10月。尾崎会長が会見を開く。

2020年10月14日付
尾崎会長は「「(新型コロナウイルスの)感染者が増えている国がある。全世界から観客を呼んで(開催)できるかといったら、限りなく難しいのではないか」との見解を示した。その上で「無観客という形でやっていくのが、現実的には妥当な線では」と述べた」。さらに、コロナ対応に加えて観客らへの医療提供体制を支えることになり、「夏の暑い時期の熱中症対策も含めて、五輪に協力するという形になれるのかどうか、正直なところ難しいと思う」と具体的に述べている。

●uttiiの眼

10月の記事と22日の記事との違いは大きくない。少なくとも10月頃から会長は「もう通常開催は無理だ」と悲鳴を上げていたと言える。「無観客」を「検討してほしい」という控えめの言い様は、協力する立場からはあまり強いことは言えないが、というような逡巡があり、本当はもう少し厳しい要求があると見た方が良いのかもしれない。

因みに2020年10月14日に新規に確認された感染者は549人。東京都は144人だった。今年1月21日)は全国で5647人、都内で1471人。わずか3カ月少しで、全国的にも、都内でも、感染者は10倍以上に増加したことになる。

あとがき

以上、いかがでしたでしょうか。

大勢の選手、大勢の観客、開会式の大イベント…どれをとってもオリンピックには欠かすことができない要素になってきたわけですが、そのどれもが実現不可能な情勢だと思います。なんとか知恵を発揮して撤退を決め、コロナ対策に「全身全霊」、いや、全霊を捧げるようにしてもらえないでしょうか。

image by:BT Image / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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