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中国狼狽。駐米台湾代表の大統領就任式「正式招待」に動揺する習近平

大きな混乱もなく、厳かな雰囲気の中で行われたバイデン大統領就任式ですが、中国にとっては「看過することができない問題」が起きていたようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では著者で台湾出身の評論家・黄文雄さんが、就任式への駐米台湾代表の正式招待が習近平政権に与えたショックと、中国政府がわざわざ就任式の時間に合わせ、トランプ政権の高官に対する制裁を発表した意図を考察。その上で、早くもバイデン政権と中国の戦いが始まったとの見方を示しています。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年1月22日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

【米台】台湾代表が大統領就任式に初招待、中国は深夜の恫喝外交

台獲邀出席總統就職 美參院外交委員會主席大讚拜登政府(台湾が大統領就任式に招待、アメリカ上院外交委員長がバイデン政権を称賛)

1月20日、バイデン大統領が就任しました。就任式は新型コロナ対策のために無観客で行われるという、いつもに比べて非常に寂しいものでありました。

台湾では、トランプ政権時代に、台湾とアメリカの政府高官の相互往来を促進する「台湾旅行法」や、台湾の国際的孤立を防ぐための「台北法」などの台湾優遇施行されたこともあり、バイデン政権になって、これまでの台湾優遇政策がどのように変化するかということに敏感になっています。

そのなかで、喜ばしい大きなニュースが報じられました。台湾の蕭美琴(シャオ・メイチン)駐米代表(大使)が、1979年の米台国交断絶後、初めて正式に大統領就任式に招待されたのです。しかも、民主党政権ですから、異例のことです。

彼女はバイデン大統領の就任式に出席した際の動画をツイートし、国会議事堂の前に立って「ジョー・バイデン大統領とカマラ・ハリス副大統領の就任式に台湾を代表して出席できて光栄でした」と語りました。

彼女のツイートが台湾の「自由時報」で報じられたこともあり、このツイートに対して、台湾からは多数の喜びと激励の声が寄せられました。

ちなみに、駐米台湾代表の蕭美琴氏は、台湾人の父とアメリカ人の母を持つ、まだ39歳の才媛です。また、生まれは日本の神戸だということで、日本ともゆかりがあります。

私も台湾で行った国際会議で彼女のことを耳にしたことがありますが、台湾語や中国語、英語、スペイン語の他に、アメリカ留学中に学んだ日本語も流暢だということです。国際政治への理解も、私以上に内容が濃いようです。

また、2009年に日本の福岡で行われた国際会議で、中国総領事の武樹民から罵倒や脅迫を受けたものの、一歩も引かずに、武の暴言を英語に翻訳して周囲の出席者に伝えながら反論し、周りの冷ややかな目にさらされた武は、無言で席を立って会場を去ることになったという、武勇伝の持ち主でもあります。

彼女は中国の威嚇的な「戦狼外交」に対抗して、「戦猫外交」を打ち出しています。

中國官員武嚇 蕭美琴直譯掲醜態
中國官員言語恐嚇,蕭美琴當場翻譯給國際人士聽-三立SETN

彼女は民進党の闘士として、数多くの活動に参加していました。私も彼女は駐米代表に最適と思っていますが、活動家出身の彼女は、これまでの学者などとは異なった才女だと思います。

きわめて大衆的はありますが、もっと在米の台湾人学者と交流があってもいいと思います。大使としていちばん大きな仕事は、在米台湾人の学者を引き付け、一丸として中国にあたることです。

それはともかく、上院外交委員会のジム・リッシュ委員長は、彼女のツイートをリツイートしながら、

「今日の就任式では、1979年以来初めて台湾が代表として参加しているのを見ることができ、とても嬉しく思います。新政権がこのような招待をしたことを称賛するとともに、米台の関係が、われわれが直面する課題と地政学的現実に対応するために、さらに進展していくことを期待します」

とツイートしています。

このジム・リッシュ委員長は、香港の民主化デモを支持する「香港人権・民主主義法案」の共同提出者の一人でもあります。その他、中国の脅威に対抗するためにヨーロッパとの連携強化を呼びかける報告書を提出したり、台湾とアメリカのFTAに前向きだったりと、反中・親台派を鮮明にしており、上院での対中政策にも大きな影響力を持っている一人です。

米共和党議員ら、香港人権法案の上院採決へ働きかけ

台湾としても、バイデン政権の台湾政策や対中政策がいまひとつ見えていないところもあったため、ひとまずは明るい話題です。

その他、台湾ではバイデン大統領の動きを速報で、次々と伝えています。たとえば、バイデン大統領が就任早々、17の行政命令や覚書に署名したことも、いちはやく報じました。その中には、トランプ政権で出された命令を覆すものも多く含まれています。

上任立即推翻川普政策! 拜登簽署17項行政措施

一方、バイデン新大統領の就任式のさなか、中国外務省は、ポンペオ前国務長官やオブライエン前大統領補佐官など、トランプ政権の高官28人に対して制裁を科す声明を出しました。28人は中国、香港、マカオに入ることが禁じられ、関わる企業や機関が中国側と接触したり商取引をしたりすることが制限されるということです。

この声明を出したのは、大統領就任式の最中で、中国では夜中ですが、わざわざその時間を狙ったということなのでしょう。

中国のトランプ前政権幹部への制裁は非生産的-ホワイトハウス

しかも、中国外務省は発表文で、制裁対象者は「一連の常軌を逸した行動を計画、促進、実施し、中国の内政に深く干渉して中国の国益を損ない、中国の人民を攻撃し、米中関係を著しく悪化させた」などと批判しています。

1月19日には、ポンペオ前国務長官が中国のウイグル弾圧を「民族浄化」(ジェノサイド)と認定しました。これにより、バイデン政権は何らかの制裁を中国に課す義務が出てくるとも言われています。新政権に対して、圧力をかける意味もあるのでしょう。

それにしても、いくら前政権の高官だとはいえ、祝賀ムードに水を差すようなやり方です。

しかも、中国政府の国務院台湾事務弁公室(国台弁)の朱鳳蓮報道官は、「ここ数年、台湾の民進党はポンペオ氏らと結託して、台湾との公式交流や軍事連携、台湾への武器売却など多くの悪事を働いてきた」として、アメリカ当局関係者への制裁措置を断固支持する意向を表明しました。

ここでポンペオ氏らへの制裁に関連して、わざわざ台湾問題に限定した声明を出してきたということは、おそらく蕭美琴代表がバイデン大統領の就任式に正式に招待されたことを受けてアメリカに警告したものと思われます。いわば、「バイデン政権も台湾問題に首を突っ込むなら、いつでも制裁を課すぞ」という脅しでしょう。

アメリカと中国は、1972年のニクソン訪中で関係が改善されましたが、正式に国交正常化したのは1979年、民主党のカーター政権下です。そしてそれと同時にアメリカと台湾は断交となりました。

民主党はこれまで台湾には冷たく、クリントン時代は「三不(三つのNO)」(「台湾の独立不支持」「2つの中国を支持しない」「台湾が国家として国際組織へ参加することを支持しない」)を中国に約束し、オバマ政権は中国融和政策で台湾への武器売却は8年間でわずか3回でした(トランプ政権は4年で10回)。

それだけに、民主党政権が台湾との断交以来初めて、駐米台湾代表を大統領就任式に正式招待したということは、中国にとってはかなりショックなことだったと思います。だからこその、深夜の「制裁発表」だったのではないでしょうか。

つまり、すでにバイデン政権と中国の戦いが始まったということなのだと思います。バイデン大統領は、トランプ大統領が脱退を表明したWHOへ復帰する大統領令にサインしました。今後は、WHOへの台湾加盟支持をぜひ訴えてもらいたいと思います。


 

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image by: Bi-khim Hsiao 蕭美琴 (@bikhim) Twitter

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