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「在職老齢年金」緩和策で来年4月以降は年金が停止される人口が減る?

年金を貰いながら働き続ける場合、その年金が停止されることがあるのをご存知でしょうか。しかし、令和4年4月から施行される緩和策により、停止される人の数が激減するようです。今回の無料メルマガ『年金アドバイザーが教える!楽しく学ぶ公的年金講座』では著者のhirokiさんが、その「在職老齢年金」と緩和制度について詳しく紹介しています。 

年金を貰いながら働くと年金が停止になる「在職老齢年金」。でも令和4年4月以降は停止される人が激減する

最近はブログや無料メルマガは基本的な事の復習をメインにやっています。今日は年金を貰いながら働く場合は年金が停止される場合がある「在職老齢年金」についてです。

働いたら年金をカット(停止)するなんてけしからん!ってよく反発のある制度ですが、元々は老齢の年金というのは退職して引退した時に支給されるものなので、年金貰うようになっても現役で働くなら停止しますよというものです。

ちなみに年金で言う働くというのは単純に労働している事を指すのではなく、厚生年金加入中を意味します。だから個人事業などでいくら働こうが年金は停止されない。

またよく、財政が悪化したからこんな制度が出来たんだとも言われますが、昭和40年から既にあった制度ではあります。先ほども言ったように年金は引退した人が貰うものという考えだったから。仕組みは今とは異なるものではありましたが…その人の給与(標準報酬月額)に対して、何割(2割から8割の一割刻みずつ)の年金をカットとかそんな形だった。2割停止から始まったのは昭和61年の大改正までは税金が厚生年金に2割投入されてたから。在職中の人はせめて税金分は停止しとこうと。

ただ、働いたからって全額停止してしまうと酷なので、平成6年改正からは年金を一律2割停止しながら、その人の給与(標準報酬月額)や直近1年間に貰った賞与(標準賞与額)の合計を12で割った額と老齢厚生年金月額を足した額が一定額を超えると停止がかかるようになりました。平成16年改正からはもうちょっと改められて、現在の形になっています。

厚生年金に加入して働いてる人は貰ってる給与額に照らし合わせて、標準報酬月額というのが決められます。例えば月給与が25万円から269,999円までの人は、標準報酬月額は26万円になります。基本的には4月から6月までの給与を平均した額を標準報酬月額表に当てはめて、9月から新しい標準報酬月額になります。

標準報酬月額表(日本年金機構)

そして次に賞与ですね。賞与は7月あたりとか12月あたりに支給される事が多いですが、その賞与も年金額停止には影響します。例えば令和2年7月に200万円と、令和2年12月に30万円の賞与を貰ったとします。令和3年3月から直近1年を見ると総額230万円貰ってますよね。

ココで気を付けてほしいのが1回で支払われる賞与は150万円までしか使わないという事です。将来の年金額に反映するのも1回の支払いは150万円まで。まあ、いくらでも賞与額を年金額に反映させられるんだったらどんどん年金額上げれるようになりますよね^^; あんまりこう格差が激しくなるような事を年金では避けています。

という事は直近1年に貰った賞与は180万円という事になり、これを1ヵ月換算にすると180万円÷12ヶ月=15万円となる。ではこれで年金額の停止額を計算してみましょう。

まず老齢厚生年金の報酬比例部分の1ヵ月分の年金(基本月額という)を6万円とします(老齢基礎年金や遺族年金、障害年金等は含まない)。標準報酬月額26万円+直近1年間に貰った賞与を月換算したもの15万円→総報酬月額相当額という。65歳未満の人に使う年金停止基準額28万円(令和4年4月1日から47万円に緩和)で、65歳以上の人は47万円。

・年金停止額→{(総報酬月額相当額41万円+年金月額6万円)-停止基準額28万円}÷2=95,000円

となる。この場合だと年金月額が6万円だから、停止額95,000円なら全額停止という事になりますね。ちなみに令和4年4月1日からは28万円が47万円になるので、そうなると…。

・年金停止額→{(総報酬月額相当額41万円+年金月額6万円)-停止基準額47万円}÷2=停止される年金は無し

ちなみに経済の変動(物価や賃金)でこの停止基準額は変更される事がありますが、令和3年度は変更なし。

というわけで、この在職老齢年金を見ていきましょう。

1.昭和33年3月16日生まれの男性(令和3年中に63歳)

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この男性は63歳からの年金支給開始年齢で老齢厚生年金(報酬比例部分)が100万円(月額83,333円)とします。65歳から老齢基礎年金70万円と経過的加算3,000円支給されるものとします。60歳定年後も標準報酬月額20万円で継続雇用中(60歳到達日までの賃金は38万円だった)。7月と12月に賞与をそれぞれ30万円支給されるものとします。70歳までの労働を考えている最中。65歳前の在職老齢年金はどうなっているのか。ちなみに在職老齢年金に使う年金は老齢厚生年金の報酬比例部分の年金のみ(厚生年金基金の報酬比例の代行分も含む)。

まず、標準報酬月額20万円と直近1年間に貰った標準賞与額(30万円×2回=60万円)を12で割った額の合計額を出す。これを「総報酬月額相当額」という。

・総報酬月額相当額→標準報酬月額20万円+直近1年間に貰った標準賞与額を12で割った額5万円=25万円

年金月額(基本月額という)は83,333円。これらを用いて年金停止額を算出する。

・年金停止月額→{(総報酬月額相当額25万円+基本月額83,333円)-停止基準額28万円}÷2=26,667円

つまり、今の老齢厚生年金(報酬比例部分)83,333円-停止額26,667円=56,666円の支給になるという事。

また、60歳到達時賃金(60歳前6ヶ月間の賃金を180で割って30倍した額)38万円に対して給与が75%未満に下がってるから(38万円の52.6%になっちゃった)、雇用保険から高年齢雇用継続給付金が支給される場合がある。高年齢雇用継続給付金の最大支給率は下がった賃金の15%まで(低下率が61%未満になった場合)。だからこの人であれば、実際の給与20万円×15%=30,000円支給という事。この給付金も60歳からずっと支給されてるものとする。63歳までは雇用保険からの高年齢雇用継続給付金を支給されるだけで済んだが、年金を貰うようになると更に年金が停止されるようになる。いくら停止されるかというと、標準報酬月額20万円×6%=12,000円

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※ 参考

6%停止というのは、給付金支給15%に対して約4割を年金から停止するという意味。6÷15=0.4になる。

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よって、さっきの在職老齢年金56,666円-高年齢雇用継続給付金による停止12,000円=44,666円が実際の年金月支給額。

ここで、月の収入総額を出すと給与20万円+高年齢雇用継続給付金3万円+{老齢厚生年金(報酬比例部分)83,333円-在職により停止額26,667円-給付金貰ってる事による停止額12,000円}=274,666円となる。ただし、令和4年4月1日からは停止基準額がそれまでの28万円から47万円に緩和する。

・令和4年4月1日からの年金停止月額→(総報酬月額相当額25万円+基本月額83,333円)-停止基準額47万円→33万3,333円<停止基準額47万円なので停止額は無い。給付金貰ってる事による停止額12,000円だけの停止。

では65歳以降も同じ給与と賞与の条件で働き続けたらどうなるのか。総報酬月額相当額25万円+年金月額(基本月額)83,333円<47万円なので年金停止は無い。

なお、65歳以上は老齢基礎年金や経過的加算、または配偶者加給年金390,500円(令和3年度価額)といった年金が支給されたりしますが在職老齢年金の計算にはこれらは含めない。また、高年齢雇用継続給付金は65歳到達月分までしか支給しないから給付金による停止も無くなる。

※ 追記

70歳以上は厚生年金には加入出来ませんが、厚生年金が適用されてる会社で厚生年金に加入出来るくらいの働き方をすると年金が停止される場合がある。まあ…65歳以上で在職老齢年金による停止がかかっている人ってかなり少数派なんですけどね。僕の経験上、停止されてるのは大体社長とかそんな人達です。給料が高すぎて完全に年金が振り切って全額停止されてるような事が多いですね(笑)。

なお、令和4年4月からの停止基準緩和(65歳以上基準)で、在職による停止は多くの人が停止されなくなるでしょう。ただし、停止がかかる場合でも老齢基礎年金や経過的加算は停止しない(65歳未満の年金の繰上げなどで経過的加算が支給される人は経過的加算も停止額に含む)。加給年金は老齢厚生年金が全額停止になると加給年金も全額停止になる。老齢厚生年金が1円でも支給されていれば加給年金は全額支給。加給年金貰いたい人は老齢厚生年金(報酬比例部分)が全額停止しないようにする必要があります。

image by: Shutterstock.com

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佐賀県出身。1979年生まれ。佐賀大学経済学部卒業。民間企業に勤務しながら、2009年社会保険労務士試験合格。
その翌年に民間企業を退職してから年金相談の現場にて年金相談員を経て統括者を務め、相談員の指導教育に携わってきました。
年金は国民全員に直結するテーマにもかかわらず、とても難解でわかりにくい制度のためその内容や仕組みを一般の方々が学ぶ機会や知る機会がなかなかありません。
私のメルマガの場合、よく事例や数字を多用します。
なぜなら年金の用語は非常に難しく、用語や条文を並べ立ててもイメージが掴みづらいからです。
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【著者】 年金アドバイザーhiroki 【発行周期】 不定期配信

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