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「中国とは価値観を共有できない」元自衛隊トップの勇気ある発言

自衛隊制服組のトップである統合幕僚長の職にあった河野克俊氏の中国に対する批判が、一部で話題となっています。この批判を「勇気ある発言」と称賛するのは、国際関係ジャーナリストの北野幸伯さん。北野さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で今回、河野前統幕長の発言が称賛に値する理由を述べるとともに、「日本は戦略的に中国との関係を悪化させるべき」という持論を展開しています。

「中国は…」防衛省前統幕長・河野克俊氏の勇気ある発言

2014年から2019年まで、自衛官のトップである統合幕僚長を務めた河野克俊さん。中国に対し「勇気ある発言」をされました。テレ朝ニュース2月23日。

防衛省の元制服組トップが中国など各国の海軍の軍人が集まる国際セミナーで、海洋進出を強める中国を名指しして「価値観を共有できない」などと痛烈に批判しました。

 

防衛省前統幕長・河野克俊氏:「中国が我々と同じ価値観、すなわち海洋の自由を共有してもらえれば、ともに経済的繁栄を共有することができる。しかし、残念ながら中国の行動は我々と価値観を共有しているとはいえない」

おっしゃる通りですね。中国は1970年代初めまで、「尖閣は我が国領土だ」と主張したことはありませんでした。ところが、国連の調査で、「莫大な石油が眠っている可能性ある」という結果が出た。それで、「それなら、我が国の領土ということにしよう」となった。

「南シナ海は、ほとんど全部中国のもの」とする「九段線」も似たようなものです。何の根拠もなく、「そういうことにしよう」と勝手に決めてしまった。「九段線」について、ハーグの常設仲裁裁判所は2016年7月12日、「法的根拠がなく、国際法に違反する」との判決を出しています。しかし、中国はこれを完全に無視し、あちことで埋めたてを進め、軍事拠点化している。

河野前統幕長は中国が今月1日に海警局に武器使用を認めた海警法を施行したことについて、「世界は海洋の自由の観点から大変、憂慮すべき事態に直面している」と指摘し、「我が国として看過できない」と批判しました。

「海警法」ができたことは何を意味するのでしょうか?

尖閣の周辺に、日本の船がいるとしましょう。すると、中国海警が来て、「あなたたちは【中国】の領海を侵犯しています!いますぐでていきなさい!」と警告される。日本の船が日本の領海にいるのだから、何も問題ないとシカトしていると、海警の船から砲撃される。そんなことが「合法」になったのです。

河野さんは、「対抗策」にも言及しました。

そのうえで、こうした中国の動きに対抗する枠組みとして、日・米・豪・印の連携を拡大していく重要性を訴えました。
(同上)

「自由で開かれたインド太平洋戦略」の核となっているのは日本、アメリカ、インド、オーストラリアです。そして、イギリス、フランス、ドイツがこれに参加する意志を示している。さらに、ASEAN10か国を引き入れたい。

「自由で開かれたインド太平洋戦略」は、中国一強で崩れてしまったアジアの「バランスオブパワー」を回復するために不可欠です。

日本は戦略的に中国との関係を悪化させるべき

基本的に、どんな国とも仲良くした方がいいでしょう。しかし、稀に「関係を悪化させた方がいい」局面もあります。中国に関しては、まさにそんな局面です。なぜ?

2018年に米中覇権戦争がはじまり、バイデン政権も継続する方向がはっきりしてきました。ポンペオさんは、退任前日に、「中国はウイグル族をジェノサイド(民族大量虐殺)している」と認定しました。バイデン新政権も、この認識を引き継いでいます。

バイデン政権は、ひきつづき台湾を守る意志を示している。日本については、バイデン大統領、ブリンケン国務長官、オースティン国防長官、サリバン大統領補佐官が相次いで、「尖閣は日米安保の適用範囲」と宣言しました。

そう、米中覇権戦争は、つづいていくのです。

問題は、日本です。日本の政治家は、ウイグル問題、香港問題、台湾問題などで、中国を批判しません。世界的に、「ナチスドイツ」と比較される中共のトップ習近平を、いまだに「国賓訪日させる」などといっている。

私たちの懸念は、かつて日本がナチスドイツの側について必然的に負けたよ
うに、今度は、現代のナチスドイツ中国側について負けること。だから今は、中国を批判することで、むしろ関係を悪化させた方がいい。そうすることで、日本は、「自由民主主義陣営にいるのだ!」ということを示すべきなのです。

私たちは、このことを繰り返し発言していますが、日本の政治家さんは、驚く程中国を批判しません。ですから、河野さんのように影響力がある人が、「中国はおかしい!」と発言してくれるのは、とてもありがたい。中国は、怒るでしょうか?怒ってくれれば、もっとありがたい。日中関係は悪化しますが、日本と、アメリカ、インド、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツとの絆は強くなります。

RPE読者さんで政府関係者の方がいれば、どんどん中国のおかしいところを指摘していただきたいと思います。特に、ウイグルで起こっていることは、本当にひどいので、どんどん批判して欲しいです。

● 全日本国民必読記事→「ウイグル女性に避妊器具や不妊手術を強制──中国政府の『断種』ジェノサイド」(Newsweek2020年7月8日)

image by: 防衛省 海上自衛隊 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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