利用者の個人情報が中国で閲覧可能になっていたとして、23日夜の記者会見で謝罪したLINE経営陣。しかし事態は思った以上に深刻なようです。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、中国社会における情報の扱いを詳細に解説し、個人データが彼らに抜かれることで起こりうる事例を紹介。その上で危機意識の足りない日本人に対して警告を発しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年3月24日号外の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【日本】新型コロナ同様、脱中国化の遅れが致命的となった日本のSNS
● 台湾、公務員のLINEなどの使用を禁止 セキュリティ要件満たさず
日本のLINEのユーザー情報が、中国の会社からアクセスできる状態だったことが明らかになり、総務省がLINEでの行政サービスを停止、自治体にも調査を依頼するなど、大炎上しています。
● LINE社長 中国からの個人情報へのアクセス遮断を明らかに
中国には、2017年に成立した「国家情報法」という法律があり、これは中国当局の要請によって、民間企業などに当局への情報提供を義務付けるものです。中国にデータセンターを置いてある場合、その情報が中国政府にすべて握られてしまう危険性があるのです。
このことは、本メルマガでも説明してきましたし、アップルやグーグルなどのIT企業が常に直面してきたことであり、メディアでもたびたび取り上げられてきた問題です。
この問題についてLINEの出澤社長が3月23日に記者会見を行いましたが、この中国の「国家情報法」について、「潮目の変化を我々が見落としていたというのが偽らざるところだ」と語りましたが、あれだけ日本国内でも話題になったことを見落とすということがあるのでしょうか。
● LINEの出澤剛社長、中国の国家情報法は「潮目の変化、見落としていた」情報収集体制の不足認める
2017年に国家情報法が成立した際には、日本の各紙も大きく取り上げました。加えて、トランプ政権下でアメリカなどの機密情報が中国に盗まれる危険性が大きくクローズアップされ、ファーウェイが西側諸国から排除される動きにつながったことは、いまや子供すら知っていることです。
LINEは今回の炎上を受けるかたちで、中国の会社からのアクセスを遮断、さらに韓国に置いてある画像や動画、ファイルデータ、タイムラインなどを日本国内に順次移転すると発表していますが、炎上しなければそのまま放置されていたわけです。
冒頭の記事は、台湾の行政院がLINEなどの無料通信アプリについて、セキュリティ上の懸念があるとして、各政府機関での使用を禁じたという記事です。今回の日本の事態を受けて台湾が取った措置だと思われるかもしれませんが、じつはこの記事は2014年9月のものです。
すでに7年以上前に、台湾ではLINEの危険性を政府レベルで認識し、政府機関での使用を禁じていたわけです。
2015年、台湾では、政治家の秘書を騙る者からLINE上の特定グループへの登録を促すメールが送られるという事件がありました。そのメールに添付されているファイルを開くと、情報を抜き取るバックドア型不正プログラムが動き出す仕組みになっていたのです。
台湾は中国からのスパイ活動やフェイクニュース、工作活動などに神経を尖らせています。だからこそ、中国発の新型コロナウイルスに対していち早く対処し、中国からの入国をシャットダウンしたことで、被害を最小限に食い止めることができました。
一方の日本は、あまりにも能天気です。いまだ習近平国家主席を国賓待遇で日本に招くことにこだわる政治家たちもいます。新型コロナウイルスにしても、中国からの入国をなかなか止めなかったことが、日本での被害を大きくしてしまった一因でした。そして今度はLINEをめぐるゴタゴタです。
日本でも以前から、一部ではLINEについては危険性が指摘されてきましたが、それが正しかったことが証明されてしまったかたちです。
現在、中国はすべての人民を監視するシステムを構築しています。「天網」(スカイネット)と呼ばれるそのシステムは、全国に1億7,600万台の監視カメラを設置し、AIで顔認証できるようにしています。さらには一人ひとりに「信用スコア」をつけて、学歴から犯罪歴、友人関係、購入歴、SNSでの発信履歴までをポイント化し、その人物をプロファイリングするというものです。そして、そのスコアが低いと、飛行機にも乗ることができなくなるわけです。
● 14億の国民を1秒で特定「中国のコロナ監視」のすごい仕組み
中国に日本人のデータが渡れば、同じようなプロファイリングが行われることになります。友人関係や趣味嗜好ばかりか、LINEなら不倫相手との会話などが取られれば、脅迫の材料にもなってしまいます。
そうやって多くの日本人のデータが採取され、中国で「信用スコア」をつけられるようなことになれば、人権上の問題のみならず、中国の言いなりにならざるをえないようなケースも出てくるでしょう。
イギリスの諜報機関「MI6」は、中国の女性スパイによるハニートラップはイスラム国(IS)より国家安全保障にとって脅威だという報告書を2016年に出しています。
● 中国の「ハニー・トラップ」はISより脅威 美しすぎるスパイの危険度
相手の弱みを握って脅すという手法は、中国のもっとも得意なやり方です。2004年には、上海の日本総領事館の男性が、ハニートラップにはめられ中国から情報提供を強要され、自殺するという事件もありました。
LINEの情報を中国当局が入手することで、ハニートラップ以上に簡単に、脅迫ネタを取得できてしまう可能性があります。加えて、人を疑うことをしないお人好しの日本人ですから、趣味や嗜好をリサーチされたうえで近づかれたら、それこそハニートラップに簡単に落ちてしまうでしょう。よく行く場所、好きな音楽などを調べ上げた上で、親密になることなど簡単なことです。
加えて、中国には2010年に施行した「国防動員法」という法律もあります。これは中国政府が有事だと認定した場合、中国国内はもちろん、国外の中国人も動員対象となり、国防のために働くことを義務付けるものです。
すなわち、海外にいる中国人がみな民兵として活動し始めるということなのです。中国が敵国認定すれば、その国にいる中国人は破壊活動やスパイ活動に従事することが義務付けられるらけです。もしこれを拒めば、罰則すらあります。
また、中国国内で活動する外国企業も、動員・徴用の対象となる可能性があり、中国政府のために自国を裏切るような働きを強要される可能性すらあるのです。中国はそうした法律をつくる一方で、中国の内外で工作活動を行っているわけです。
2013年のことですが、当時の自衛隊員22万5,000人のうち、外国人配偶者を持つ隊員が800人、そのうちの7割にあたる600人が中国人配偶者だったということが、問題になったことがありました。中国籍の妻がいる自衛官が、国家安全保障の機密情報を自宅に持ち帰ったことで大問題になったこともありました。
そういった事例があるにもかかわらず、いまだ日本人や日本政府は鈍感すぎます。そもそも日本にはスパイ防止法すらありません。それがどれだけ危険なことなのか、世界的な常識を日本人はもっと知るべきです。
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