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【書評】日本人は変人だらけ。「イグノーベル賞」14年連続受賞中で世界も嘲笑

ノーベル賞のパロディとして、今やすっかり定着した感のあるイグノーベル賞。1991年に創設されて以来、「人を笑わせ、考えさせた業績」を讃え、毎年授賞式が行われています。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが紹介しているのは、そのイグノーベル賞を送られた研究の中でも最近のものに焦点をあてて40講をまとめた一冊です。

偏屈BOOK案内:五十嵐杏南『ヘンな科学“イグノーベル賞”研究40講』

ヘンな科学“イグノーベル賞”研究40講

五十嵐杏南 著/総合法令出版

イグノーベル賞は「まずは人を笑わせ、その後考えさせる」をモットーに、1991年に創設され、以来30年にわたって世界に笑いを提供してきた。

毎年1万点近くの候補の中から10点が選ばれる。なぜか、日本人は毎年受賞の常連だ。犬とのコミュニケーションツール「バウリンガル」も「カラオケ」も、発明者は日本人だ。

「イグノーベル」という言葉は造語で、ノーベル賞のパロディである。「崇高さに欠ける」という意味の「ignoble」に由来する。受賞者は、イグノーベル賞を創設したマーク・エイブラハムズ氏が率いる、イグノーベル賞委員会が選定する。

世界中の誰でも推薦することができ、自己推薦も可(ほぼ選ばれない)。2020年には、トランプを始めとする世界の首脳の一部に医学教育賞が贈られた。授賞理由は「新型コロナウイルスの大流行を使って、医師や科学者よりも政治家のほうが、人々の生死に影響を与えることを世界に知らしめたため」キツイな~。

授賞式はハーバード大学サンダーズシアターで行われ、受賞者が式に参加したい場合は、自分で旅費を調達しなければならない。授賞者は本家ノーベル賞受賞者。賞品は謎のオブジェひとつと、10兆ジンバブエドル(日本円換算で1円未満)。

受賞者にはスピーチの時間を与えられるが、制限時間の60秒を過ぎると、8歳の女の子がやってきて「もうやめて、飽きた!」と叫び、スピーチを遮る。名物少女の「ミス・スウィー・プー」である(毎年更新、必ず8歳)。

この本では、イグノーベル賞受賞研究の中でも、比較的最近のものに焦点をあてて紹介している。時には真面目に、時には個人的ぼやきを交え、“若干意識低め”なタッチで書いている。日本人受賞者の功績を多めにピックアップしており、あまり日本で話題にならなかった面白研究も含まれる。

話が長い人、声が大きい人を黙らせる機械が「スピーチジャマー」。英語の「jam(物や言葉を詰まらせる)」と、日本語の「邪魔」をかけた命名だ。発言者の発声と同時(0.2秒後)に、その声が聞こえることで発言者を混乱させ、黙らせるという。大きなピストルのような形状で、向けられただけでびびっちゃうよ。当面は実用化の予定はない。

哺乳類がおしっこに要する時間はだいたい同じだという。2015年物理学賞受賞の研究によると、ヒトもイヌもウシもゾウも、ほぼすべての哺乳類は21秒以内でおしっこが済むはずだ。哺乳類が膀胱に溜めた尿を出し切るのにかかる時間は、その動物の体積の1/6に比例するからだという。

「小」ときたら「大」だ。ほとんどの哺乳類は12秒でうんこが済むと発見した。なぜこんな短時間なのか。用を足すのに時間がかかればかかるほど、自らを危険に晒すからだ。排便の時間研究データは、宇宙飛行士向けのオムツの開発に役だった。

自らハチに刺され、一番痛い個所を特定するとか、トガリネズミを丸飲みして、消化のされ方を分析するとか、体を張った泥臭い努力が輝くときもある。でもよい子は絶対に真似しないでね、と著者。イグノーベル賞は、一応「再現されるべきではない研究」に与えられるからだ。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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