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マンション大規模修繕の新たな選択肢「プロポーザル方式」とは?

マンション住人が避けて通れない大規模修繕工事。これまでその仕様書の作成や業者の選定は設計コンサルタントに依頼することが一般的でしたが、別の方法を採用する管理組合も増加しているようです。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、新たな選択肢として注目される「プロポーザル方式」について詳しく解説するとともに、試みる場合に注意すべき点などを記しています。

大規模修繕工事を「プロポーザル方式」で?

こんにちは!廣田信子です。

大規模修繕工事の設計コンサルタントの候補選びに苦慮している管理組合の理事長Aさんから、「プロポーザル方式」をどう思いますか?と質問がきました。

3か月ほど前に、提案力にすぐれ、コミュニケーション能力が高く絶対に談合とは無関係な設計コンサルタントを紹介してほしい…と、Aさんから、いきなりメールがきましたが、私は…「特定の設計コンサルタントを紹介することはしていません。ただ、すべてに優れている方は数が少ないしたぶんリピーターの管理組合だけで手いっぱいですんなりと引き受けてもらいにくいかもしれません。希望する条件の優先順位とその判断基準を明確にして、あとは複数の方と面談するなどして縁があった方の中から、自分たちで決められるのがいいのではないでしょうか」と、お返ししていました。

あまり、親切じゃないけど、それしか言えません。実際に、推薦したいと思うような方は超多忙のようですし…。

Aさんは、3カ月考えても理想の設計コンサルタントをどう探せばいいのか分からず、じゃあ、いっそ「プロポーザル方式」でやろうと思い至ったようです。

大規模修繕工事における「プロポーザル方式」とは、複数の施工業者にマンションの修繕に対する企画を提案してもらい、その中から優れた提案を行った業者を選定する方式です。

「設計コンサルタント」は仕様書の作成や業者選定はしませんが、設計監理には入るのが一般的です。

これまで、大規模修繕工事は、設計コンサルタントが共通の仕様書をつくって積算の数量も示し、それに基づいて、複数の施工会社が見積を提出するというように同じ条件で、金額を比較できるようにしないとダメだと言われてきました。

そこに、設計コンサルタントが必要とされた理由のひとつがあったのです。

ところが、実施は、設計コンサルタントが特定の施工業者に仕様書づくりや積算させていて、その施工業者に工事を取らせるように談合を仕切り、バックマージンを受け取っている…というような事例が表に出て、何のための設計コンサルタントか…と管理組合が疑心暗鬼になった状態が、まだ続いているのです。

バックマージン等のお金の問題も大きいですが、「設計コンサルタント」が、管理組合の意向に沿う形で、そのマンションの将来を考え最善な提案をする…ということを真剣にしないことが、私は、一番残念です。そんな「設計コンサルタント」に当たってしまったら、管理組合は、専門家に任せたがために、さまざまな可能性の中から最善の方式を選ぶということが、できないのですから。

経験豊富な施工会社が持っているノウハウは多いので、いくつかの施工会社に、そのマンションにとって最善だと思う提案をしてもらうことは、私はいいことだと以前から思っていました。

たとえば、次の大規模修繕工事までのサイクルを、12年でなく18年で考え、仕様を決めれば、工事費用は高くなりますが、長い目で見れば、マンションにとってプラスになります。特に設備系の改修に関しては、施工会社によって施行方法も価格もかなり違うことが実際にあります。

Aさんは、施工監理にも「コンサルタント」を入れずに、自分たちでみていくことを考えているようです。ちょっと無謀にも思いますが、施工業者とのいい信頼関係が築ければ、これで成功する事例もあります。

ただし、「プロポーザル方式」(定義が明確になっているかどうかは分かりませんが…)を試みるには、注意も必要です。

プロポーザル方式は、一定の条件の下で、複数の施工業者に工事の提案をしてもらい、その中から優れた提案を行った施工業者を選定する方式です。ですから、最初に、自分たちの希望と提案の自由度をきちんと提示しなければなりません。工事の内容はもちろんですが、トータル金額の上限の提示も必要になるでしょう。しかし、あまりそこを厳しくすると、新たな提案が出にくくなるので、バランスをとる必要があると思います。そのマンションに合った工事の提案をするには、調査や検討に手間がかかるので、参加する側も覚悟が必要です。

談合等も難しくなりますが、その分、依頼する側も誠意を持って臨む必要があると思います。提案者の数を多くするというより、どの提案者に決まってもいいと思う施工会社を厳選し、依頼する方がいいと思います。そして、参加者の提案を真摯に検討し、必ずどこかを選ぶようにします。

提案方式なので、各社の見積金額を同じ土壌で比較できないので、提案力をきちんと評価することが必要になります。提案させておいて、いいとこ取りで、A社のよい提案を金額が安かったB社にさせる…というようなことはやめたいです。

参加する施工会社は、管理組合側の真剣さと公正さを見ています。いい提案(金額も含め)をすれば、ちゃんと評価されて採用される…と思えば、施工会社も真剣に提案を出してくるはずです。その過程で信頼関係が築ければ、Aさんのように、施工監理を自分たちで行うということも可能になると思います。

私が尊敬する西京極大門ハイツ管理組合法人は、設計コンサルタントを入れずに施工会社に相談しつつ仕様を決め、直接、施工会社に工事を発注しています。信頼できる施工会社と縁ができているので、他と比較するようなこともしていないのです。理事会に対する組合員の信頼があるので、組合員を納得させるために、コンサルを入れて、何社か相見積もりを取らなくちゃダメというようなことがないのです。その分、かなりのコストが節減できているといいます。

そして、実際に工事をする施工業者には、最大限の敬意を払い、協力をしています。まず、施工業者の見積もりは、一切値切り交渉はしないといいます。営業的に利益の出ないことは続かないからです。それでも、西京極大門ハイツに対する見積もりは、他のマンションに比べ非常に安いと言います。

なぜ、西京極大門ハイツには安く出せるのかというと、ひとつには、意味もなく値切られることはないと分かっているから。そして、もちろん、コンサルにバックマージンを払わなければならないなんてことも絶対にない。そして、途中変更せざるを得ないことがあったときに、施工業者につけ回しはしない。工事が始まったら、工程通り工事ができるよう、居住者に協力してもらうため管理組合として最大限の協力をする。

だから、西京極大門ハイツの工事にはリスクを見る必要がないので、施工業者もぎりぎりで安い金額を出せるのです。そして、そこまで信頼して尊重されていれば、施工業者が工事に手を抜くようなことはないのです。

プロポーザル方式を入り口に、施工業者と信頼関係が築けたら、それは管理組合の財産になると思います。でも、第三者のコンサルが入って、数社の価格を比べて選ぶという形をとる方が公正で安くできるというのが一般的な価値観なので、変な誤解をされるようなことがないように、情報を常に公開し、理事会や専門委員会が信頼されるようにしてくださいね。

image by: yoshi0511 / Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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