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五輪開催って正気か?忖度なしの海外メディア・選手らが菅政権を猛批判

政権へのおもねりばかりを続け自国民からの信頼を失った国内御用マスコミですが、忖度も容赦もしないのが世界の趨勢のようです。今回の『きっこのメルマガ』では人気ブロガーのきっこさんが、海外主要メディアが相次いで発信した東京五輪に関する記事を紹介。その論調は五輪開催に批判的、かつお粗末な新型コロナ対策に終始する菅政権に対する厳しい姿勢を鮮明にしたものでした。

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海外メディアの東京五輪批判

4月7日配信の第113号のこのコーナーの「聖火リレーという政治プロパガンダ」の中で、あたしは、全米での五輪の放送権を持つアメリカの4大放送局の1つであるNBCが、3月25日付で自社のニュースサイトに東京五輪の聖火リレーを批判する記事を掲載したことを取り上げました。約76億5,000万ドル(約7,800億円)もの莫大な資金を投入して五輪の放送権を得ているNBCとしては、どんなことがあって大会の中止は困る立場なのに、そのNBCが東京五輪への批判記事を掲載するなんて、よほどのことだからです。

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しかし、第113号を読んだ人なら分かると思いますが、あの記事を書いた元プロサッカー選手でアメリカ五輪代表にも選ばれたことがあるジュール・ボイコフ教授は、あくまでも「日本の聖火リレー」を批判しているのであって、東京大会そのものには言及していませんでした。だからこそ、NBCも掲載を許可したのかもしれません。しかし、この記事を皮切りに、まるで堰を切ったかのように、欧米の主要メディアが、次々と東京五輪開催へ突き進む日本政府の姿勢を厳しく批判する記事を掲載し始めたのです。

4月12日には、米ニューヨークタイムズ紙がスポーツ面に「このままの五輪でいいのか」と題した記事を掲載し、その中で「新型コロナの感染拡大が収まらずワクチン接種も進まない現状での東京五輪開催は最悪のタイミング」と断じ、「このまま開催を強行したら日本と世界にとって一大感染イベントになる可能性がある」と警鐘を鳴らしました。

しかし、さらにインパクトが強く、日本でも各メディアが大きく取り上げたのが、IOCのトーマス・バッハ会長を「ぼったくり男爵」と揶揄した、5月5日の米ワシントンポスト紙のコラムでした。執筆者はサリー・ジェンキンス氏、数々の賞を受賞している著名なスポーツジャーナリストです。記事の内容は、自分たちのカネ儲けのために、新型コロナ禍でも五輪開催を日本に強要するバッハ会長を「地方行脚で庶民の小麦を食べ尽くす王族」に例え、「開催国を食い物にするIOCの悪しき姿勢」を痛烈に批判しています。そして、日本政府に対しては「少しでも早く中止を決断して損失を最小限に抑えるべき」と助言していました。

このコラムで注目を集めた「ぼったくり男爵」は、元の記事では「Baron Von Ripper-off」と書かれていました。これは「Baron Von Ripper(バロン・フォン・リッパー)」、ようするに「フォン・リッパー男爵」という実在した男爵の名前のパロディーです。1905年、オーストリアの男爵の息子として生まれたルドルフ・フォン・リッパーは、画家としてのキャリアを積みながら、フランス軍、スペイン軍、アメリカ軍という3カ国の国軍で数々の任務に従事し「銃を持つ画家」と呼ばれた人物です。

このフォン・リッパー男爵が、どこかで誰かからお金をぼったくったわけではありません。しかし、英語では「騙し取る」「剥ぎ取る」を「Ripp-off」、過去形の「騙し取った」「剥ぎ取った」を「Ripped-off」と言います。フォン・リッパー男爵は、たまたま名前が「Ripper」だったことと、英語圏では有名な人物だったため、名前に「off」を加えて「Baron Von Ripper-off」とすることで、バッハ会長を揶揄するためのネタに使われたというわけです。

ちょっと脱線しましたが、5月に入ると、海外メディアからの東京五輪への批判はさらに大きくなりました。5月13日には、フランスのリベラシオン紙が、一面に大きく東京の新国立競技場の写真を掲載し、「東京五輪はノックアウトか?」という記事を報じました。これは、東京に派遣されている記者による記事なので、日本の現状を的確に伝えています。

たとえば、「日本政府は、PCR検査数を増やすこともせず、ワクチン接種も遅々として進めず、医療体制の強化も行なわず、生活困窮者への必要な資金援助もせず、1年以上もウイルスの蔓延を放置している」と菅政権の無能ぶりを断じた上で、日本政府や五輪組織委員会が「安心安全な東京五輪」という言葉を繰り返す無責任さを厳しく批判しています。そして「日本政府が『安心安全』と言えば言うほど、これまで政府が日本国民のために何も行なって来なかったことが浮き彫りになる」と指摘しています。

一方、イギリスのザ・サン紙は、5月15日、ジャーナリストのトニー・パーソンズ氏による「貪欲な者たちがウイルスだらけの東京にアスリートを送り込もうとしている」というコラムを掲載しました。歯に衣着せぬパーソンズ氏は「信じられないことだが、世界中がこの1世紀で最大のパンデミックに陥っている時に、東京は今から68日後に五輪大会を開催すると言っている」「歓喜と団結の大会であるはずの五輪が、日本では人々の怒りを生み出す元凶となっている。日本ではわずか数日で五輪中止を求める署名が数十万も集まった」などと紹介しました。

そして、「私は自国での五輪に憧れる人々の気持ちが理解できる。そして、このようなことになってしまい、子どもの頃から五輪の栄光のために努力して来たすべてのアスリートに同情している」と前置きした上で、「しかし、日本は新型コロナの悪夢から抜け出していない。日本は、まだ感染症パンデミックの真っ只中にある」と述べ、「全国民の3%しかワクチンを接種していない日本に、世界205カ国から1万1,000人ものアスリートを入国させ、国民に不足している医師や看護師を五輪優先に使うことは、頭の狂ったカネ儲け主義者による無謀な行為である」と厳しく批判しています。

ザ・サン紙は、5月17日にも、2004年アテネ五輪のバドミントン混合ダブルスのイギリスチームの銀メダリスト、ゲイル・エムズ氏のインタビュー記事を掲載しました。エムズ氏は明確に「東京五輪は中止すべき」と述べ、「本来なら日本は数カ月前に中止を決断すべきだった。日本には感染の新たな波が来ている上、国民の60%が開催を望んでいない」と指摘しました。そして「誰もいないスタジアムでプレーしたことのあるアスリートたちは、皆、口を揃えて『バカバカしくてやってられない』と言っている。アスリートたちに家族の前で祝われる機会が与えられないなら、それは五輪とは言えない。ちゃんとした形で開催できないなら中止すべきだ」と、無観客開催も批判しました。

あたしは外国語は英語しか読めないので、英語でネット配信している欧米メディアの記事しか確認していませんが、それでも、4月から5月中旬にかけて、現状での東京五輪の開催を批判している記事は、7カ国のメディアで計30近くもありました。3月までは、どちらかと言うと「このまま開催しても大丈夫?」というニュアンスで、開催を不安視する記事のほうが多かったのですが、4月に入ってからは一気に批判的な記事が増えたのです。

そして、その大半は、菅政権の後手後手の新型コロナ対策への批判が中心です。海外メディアは、日本の御用メディアのように自民党政権に忖度などしませんから、「ホスト国のくせに、そんなお粗末な新型コロナ対策で世界からトップアスリートを呼ぶつもりなのか?」という論調なのです。

ま、これは海外メディアだけでなく、大多数の日本国民も同意見だと思いますが、それでも菅首相は「開催に当たっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにする。それと同時に国民の命と健康を守って行く。これが私の基本的な考え方であります」という念仏を唱え続けるのでしょうか?

(『きっこのメルマガ』2021年5月19日号より一部抜粋・文中敬称略)

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