関係者の懸命な努力により、全国各地で着々と進められている新型コロナワクチンの接種。今のところ菅首相が目指す「1日100万回」には及ばない状況ですが、その先にある東京五輪について識者はどう見ているのでしょうか。「早期に1日100万回が実現すれば五輪開催は可能」とするのは、日本国際戦略問題研究所長の津田慶治さん。その上で津田さんはメルマガ『国際戦略コラム有料版』で今回、各会場の観客数は50%としそのほとんどを旅行会社経由とすべき根拠と理由、さらに小池都知事が五輪中止を訴えることはないと判断する訳を記しています。
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コロナ・ワクチン接種状況と五輪開催
6月20日までの緊急事態宣言延長は、北海道、東京、愛知、京都、大阪、兵庫、岡山、広島、福岡の9都道府県と、6月20日まで現に宣言中の沖縄も含めると10都道府県。6月20日までのまん延防止等重点措置延長は、埼玉、千葉、神奈川、岐阜、三重。
そして、ワクチン接種は、現状では1日50万回以上の接種で、6月中旬には1日100万回になるという。もし、100万回が早期に実現すると、五輪開催もできることになる。6月中旬には一般企業の家族を含めた社員にも接種するから、五輪選手や大会関係者全員もワクチン接種が完了していることになる。
あとは、観客をどこまで入れるかの議論になる。映画館、野球の球場には客を半分入れることを許可するなら、五輪も同じにすることでしょうね。
今後の感染状況によるところが大きいが、旅行業界の赤字が大きいので、救済するためには、50%の観客を入れて、そのほとんどを旅行業者経由にしたほうが良い。
ということで、あと数か月で、日本も集団免疫ができて、正常な生活に戻れる事が見えている。株価もそれを見て上昇している。
菅政権は、7月末65歳以上への接種を完了し、かつ五輪開催を行い、その後、選挙でしょうね。五輪の結果、五輪後に感染者数増加で重症者が増えたら、選挙に負けて菅首相の退陣になるし、選挙に勝ったら菅首相の続投でしょうね。その分岐点になっている。
ここで、小池都知事が中止と言っても、中止はしないはず。しかし、6月にある都議会選挙は、中止といった方が勝利になるので、言う可能性はあるが、小池都知事の首相への転身は絶望的になるでしょうね。私は言わないとみる。
コロナウィルスの起源
「P0593.新型コロナウィルスで株価急落へ」(2020年1月27日号)で、最初にコロナウィルス感染症を述べ、日本の防疫体制が弱いことを問題視した。「P0595.免疫機能無効化実験中のウィルスか」(2020年2月10日号)では、武漢ウィルス研究所から流出した可能性を述べた。
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以後、このコロナ対応策を述べて、コロナウィルスの起源の議論を封印してきた。しかし、米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は新型コロナの感染拡大について、もはや自然発生によるものだとの確信が持てないとコメント。「中国で何が起きていたのかを引き続き調査するべきだと思う。実際に起きたことが解明されるまで可能な限り調査を継続した方がいい」と述べた。
この見解は、「P0596.新型肺炎ウィルスが自然物か人工物か」2020年2月12日号で、このウイルスは、ウイルスの「機能獲得性研究」の途中物であろうとしたが、ファウチ所長も、同意見ということである。
それも、ファウチ所長が武漢ウィルス研究所に研究資金を出していたという。バイデン大統領も米CIAに報告書を求めている。
というように、再度、この議論が起きている。それに対して、中国は、猛烈な反発をしている。
米国は再調査を中国に要求しているが、中国は受けないでしょうね。しかし、今後のパンデミックを考えると、コロナウィルスの起源を調査するべきであると思う。
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地球温暖化防止について
この分野は、勤めていた頃から長いこと研究してきたが、結論から述べると、太陽光発電の効率が日本の気候では低く、砂漠地帯の無価値な土地がないとうまくいかない。
風力発電は、洋上も含めて、北海道の留萌とその沖しか適地がない。九州では台風で、日本海側は冬の落雷で設備の損傷が大きいことで、採算に合わない。福島沖の風力発電設備を終了したのは、採算が合わないからだ。洋上風力でも風の強い所でしか採算が合わないのだ。
ということで、日本の電力を低コストで太陽光と風力で賄うことは無理である。このため、日本での再生可能エネルギー普及が頓挫した。
米国や中国の砂漠での太陽光発電では、原子力発電より安いコストで発電できるし、高緯度の英国などでは、洋上風力発電で原子力発電より安いコストで発電できる。日本ではできない。
太陽光発電の現方式では、効率向上も限界がきている。これ以上の効率化は難しいようである。
米国の砂漠や英国の洋上と同じようなコストで発電できる資源は、地熱しかないが、日本では温泉との取り合いになっていて、全然使わないし、規制緩和もしない。このため、日本での再生可能エネルギー開発は無理と見ていた。小水力発電での河川利用でも規制が多すぎである。
エネルギーはすべての産業の基礎であり、値段が安くないと、すべての産業の競争力を損なうので、コストミニマム化がどうしても必要なことである。
しかし、2050年までにカーボン・ニュートラル化するという。そしたら、砂漠地域で太陽光発電して、電気を水素などに変換して、日本に持ってくることを考えた方がよい。原油の代わりに水素を輸入することになる。
しかし、太陽光発電をする国とは強い同盟関係を確立しないといけない。エネルギー確保は、安全保障上の問題である。とすると、中国ではなく、オーストラリアとなる。
水素は燃やすと水になるので、カーボンニュートラルになる。原油の代わりに水素を輸入することである。または、水素と二酸化炭素を化学反応させて、有機化合物を作り、それを持ってくるでもよい。
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水素の単価が安ければ、水素エンジンでよいはず。エンジンは従来技術であり、水素を燃やして内燃機関で車を走らせればよい。現時点でコストが高い燃料電池で電気に変える必要はない。有機化合物で持ってくるなら、マツダの希ガスエンジンで燃焼できる。
水素エンジンや希ガスエンジンの最適なエンジンは、ロータリー・エンジンとなり、マツダが息を吹き返すことにもなる。電気をためる蓄電池とモーターがいらない分、コストも安い。
従来技術と水素を組み合わせて、再生可能エネルギーを完成させていく方が、ここ30年程度では正解ではないかとみる。そして、人工光合成技術が完成すると、二酸化炭素と水から有機化合物ができるので、希ガスエンジンが復活することになる。コスト的にも一番安いはず。
今後、燃料電池と蓄電池のパーフォーマンスが向上したら、徐々に水素エンジン・希ガスエンジンから燃料電池に移行すればよいことになる。
トヨタの豊田社長は、早期にエンジンがなくなると、日本の自動車関連の雇用が守れないというが、その通りであるし、日本の一層の貧困化につながる危険性もある。
問題は、水素の供給ステーションがないことである。このため、有機化合物で最初は持ってくる必要になるが、この化合物製造コストが問題になる。コスト的はEV車の方が優れている現状にあるが、充電時間が長いし、電気を作る方法としては水素輸入しかない。
CO2削減目標を上げざるを得ないと、一時的には原子力発電を利用することも必要になる。その場合でも、安全性の問題を優先した小型原発を開発するしかない。
日本は、半導体、AVや電気・電子産業など徐々に強い産業を無くしてきたことで、国内での貧困化が進んでいる。このため、日本の強い技術を使って、温暖化防止技術を体系的に整備していくしかない。
今でも強い産業は、エンジン技術、微細加工技術と化学分野であり、ここに大きな資金を投入して、新しい技術を開発して、カーボン・ニュートラル化ができないかと思う。
ここで、もし、自動車産業も弱体化したら、日本の未来はない。豊田社長と同じ危機感を持つ。
さあ、どうなりますか?
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image by: Sergio Yoneda / Shutterstock.com